ビルの出入り口や従業員専用口で、ICカードや指紋認証で扉を開ける光景を見たことがあると思います。物理的な鍵を使わずに、解錠・施錠するシステムを「入退室管理システム」と言います。以下のような悩みを持つ人は、入退室管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
- 部屋ごとに異なる鍵の管理を楽にしたい
- 普通の鍵のままではセキュリティが心配
- 正確な勤怠管理方法を探している
この記事では、おすすめの入退室管理システムを7選ご紹介します。また、選び方やメリットも合わせて解説していきます。
入退室管理システムとは
入退室管理システムとは、物理的な鍵を用いず、暗証番号やICカードを鍵とするシステムのことです。暗証番号の入力やICカードを認証装置にかざすといった方法で、扉を解錠・施錠します。
単なる鍵の開閉だけでなく、入退室者の記録・制限・管理も可能です。誰がいつどこに入退室したのか全て記録されるため、万が一、室内でトラブルが発生したときの状況把握にも役立ちます。社員によるデータの盗窃や紛失、備品の破壊などの抑止力になるでしょう。
さらに、社員や部屋ごとに設定できる入室制限機能を使えば、機密情報の安全な保管が可能です。無関係な社員の不用意な入室や、不審者の侵入防止になります。
では、入退室管理システムは、そもそもどんな方法で入退室の許可を判断しているのでしょうか。
入退室管理システムの5つの認証方法
入退室管理システムには、その人物を通して良いか判断する認証機能が搭載されています。認証方法は、主に次の5つがあります。
- 暗証番号
- ICカード
- 生体認証
- スマートフォン認証、スマートロック
- ハンズフリータグ
それぞれの違いを見ていきましょう。
1 暗証番号
暗証番号は、テンキーに暗証番号を入力して出入りするシステムです。従来からある認証方法なので、広く普及しており低コストで導入できます。
ただし、運用する際はセキュリティ面に注意が必要です。暗証番号が漏れれば、誰でも容易に侵入できます。テンキーが物理ボタンの場合、暗証番号の該当数字だけ薄くなったり欠けたりして、推測も可能になります。暗証番号を採用する場合は、定期的な補修や暗証番号の変更といった対策をしましょう。
2 ICカード
ICカードをドア付近の認証装置にかざして出入りする方法です。ICチップに記憶されている社員情報を読みとり、入退室権限がある社員のみを通します。出入りした社員情報を記録するため、正確な入退室管理に向いている認証システムです。
社員証やパソコン認証カードとの併用もできます。普段使っている交通系ICカードを、そのまま認証カードに使うことも可能です。1枚のICカードに、複数の用途を持たせられる利便性の高さが特徴です。
3 生体認証
生体認証は、身体の一部を利用して認証します。顔・指紋・声紋・静脈・網膜など、さまざまな部位で認証可能です。認証精度が高く、鍵の紛失や盗難も起こり得ないので、高いセキュリティを保てます。
一方、他の認証方法に比べて、導入費用は高い傾向にあります。高度な機密保持が必要な施設に適した方法なので、導入する際は費用対効果をよく検討しましょう。
4 スマートフォン認証、スマートロック
スマートフォン認証は、スマートフォンを読み取り機器にかざし、入退室する方法です。一方、スマートロックは、スマートフォンを操作して鍵の開閉をおこないます。スマートロックを利用する際は、専用アプリのインストールと、鍵の開閉管理機器の取り付けが必要です。
どちらも大掛かりな認証装置を設置しない分、低コストで導入できます。ICカードや鍵のように新たに携帯品が増えないため、管理の手間も増えません。ただし、スマートフォンがないと入室できないため、持ち忘れや故障には注意しましょう。
5 ハンズフリータグ
ハンズフリータグの認証は、小さなタグを服や荷物に着けて通り抜ける方法です。カードを取り出したり、暗証番号を入力したりせずに通過できるため、素早く入退室できます。両手がふさがる荷物の搬出入場所や、人の出入りが激しい場所で活用できるでしょう。タグは小さく紛失しやすいので、管理に注意が必要です。
以上、入退室管理システムの認証方法を5つ紹介しました。入退室管理システムには、機密レベルや利用シーンに応じた最適な認証方法が揃っています。
入退室管理システムの3つのメリット
入退室管理システムの導入を考えていても、どのような導入効果があるのかわからないと、検討しづらいかと思います。そこで、入退室管理システムのメリットを次の3つに分けて解説します。
- 正確な勤怠管理
- セキュリティの向上
- 管理の手間やコストの削減
1つずつ解説します。
1 正確な勤怠管理
入退室管理システムは勤怠システムと連動できるため、正確な勤怠管理が可能です。従来のタイムカードの打刻や手書き記入が不要になり、入退室時の認証だけで勤怠登録が完了。入退室の瞬間に自動記録されるので、不正な勤怠操作を防げます。
労働基準法によれば、労働時間の計算は1分単位が原則です。入退室管理システムは1分単位で記録するので、法的観点からも適切に勤怠管理できます。また、残業や休日出勤といったイレギュラーな労働も把握できるので、過剰労働の抑制にもなるでしょう。
2 セキュリティの向上
入退室管理システムは、セキュリティ対策としても有効です。入室権限を設定すれば、社員であっても無関係なエリアに勝手に出入りできません。社員によるデータの持ち出しや破壊といった、不正行為の抑止になります。
また、入退室した人物、時間、場所の履歴が残るので、仮にトラブルが起きても正確に事実関係を整理できます。監視カメラと組み合わせると、より強固な証拠となるでしょう。
企業によっては、予算の都合で建物全体に設置できない場合もあるかもしれません。しかし、機密情報を扱う部屋にさえ設置すれば、不審者が建物に侵入しても部屋には入り込めません。入退室管理システムは、導入規模にかかわらず、セキュリティ対策として十分な効果を発揮します。
3 管理の手間やコストの削減
入退室管理システムは、従来の鍵を用いないので、鍵管理の手間を減らせます。部屋やエリアごとに異なる鍵を何本も持つ必要がなくなり、管理システムから入室権限を付与するだけで済みます。
監視カメラと連携させれば、警備員の配置を減らして人件費も削減できるでしょう。勤怠システムを組み込むと、勤怠管理の費用や手間の削減にも。入退室管理システムを活用すれば、各種業務の無駄を減らせるわけです。
以上3項目が、入退室管理システムのメリットです。次の章では、入退室管理システムの選び方を紹介します。
入退室管理システムを選ぶ2つのポイント
入退室管理システムを導入する際は、製品選びも大切です。いい加減に選んでしまうと自社の環境に合わず、買い替える事態になるかもしれません。自社に最適な製品を選ぶためにも、以下2点をチェックしましょう。
- 用途に合ったシステム
- 導入・運用コスト
順番に解説します。
1 用途に合ったシステム
入退室管理システムは、用途に合った製品を選ぶことが重要です。まずは、自社の導入理由や用途を明確にしてください。以下に例を示します。
- 扱う情報の機密レベルが高いのでセキュリティを強化したい
- 社員や関連業者が多く、スムーズに出入りしたい
- 勤怠管理と連携したい
上記の例でいえば、セキュリティを重視する場合は生体認証、もしくは暗証番号+ICカードといった2要素認証がおすすめです。スムーズな認証を求める場合は、ICカードやハンズフリータグが向いています。
入退室管理以外の機能も持たせたいなら、連携機能が欠かせません。勤怠管理や社内設備(空調・証明・監視カメラなど)と、連携対応しているか確認してみてください。利用シーンや必要機能に適した製品から検討していくと、最適な製品が見つけやすくなるでしょう。
2 導入・運用コスト
入退室管理システムの導入・運用コストも、製品選びで重要なポイントです。まず、入退室管理システムで削減できる費用や作業と、製品ごとの導入・運用費を比較しましょう。導入・運用費が、削減可能な費用を上回ってしまう製品はおすすめできません。
導入・運用費を試算する際は、あれもこれもと不要な機能を搭載しないことも大切です。「厳重なセキュリティ対策は不要なのに、高額な生体認証を選んでしまった」などと、無駄なコストが発生して後悔するかもしれません。
また、製品の設置方法も費用に関わります。設置方法は、既存の鍵に後付けするタイプと鍵を交換するタイプの2種類。後付けタイプは安価なので、オフィスの移転予定がある場合などに適しています。一方の鍵交換タイプは初期費用がかかる分、耐用年数が長いので、長期利用するほどにコストパフォーマンスが高くなります。
入退室管理システムを選ぶ際は、適切な機能を洗い出してから費用を試算し、もっとも費用対効果を望める製品を見極めましょう。
おすすめの入退室管理システム7選
入退室管理システムは数多くの製品があります。たくさんの製品の中から、自社に合うものを見つけるのは大変です。この章では、おすすめの入退室管理システムを7つ紹介します。製品の特徴を詳しく解説するので、ぜひご覧ください。
「Akerun入退室管理システム」
株式会社Photosynth
- 参考価格:別途お問い合わせ
- 設置タイプ:既存の鍵に後付け
- 対象従業員規模:すべての規模
「Akerun入退室管理システム」は、工事不要で簡単に設置 できるクラウド型システムです。設置方法は、接合テープを扉に貼り付けるだけ。撤去時もドアを傷つけないので、賃貸オフィスでも安心して使えます。
スマートフォンやICカードをかざして解錠し、解錠記録をクラウドに保存します。クラウドの画面上では、鍵の発行や剥奪を一括で管理可能です。鍵に取り付けたAkerunの電池残量も表示され、交換時期が来るとサポート側が 自動的に交換電池を配送してくれます。
「カギカン」
Qrio株式会社
- 参考価格:初期費用0円、月額5,900円〜
- 設置タイプ:既存の鍵に後付け
- 対象従業員規模:別途お問い合わせ
「カギカン」は、マルチデバイスに対応 するスマートロックシステムです。スマートフォン、パソコン、タブレットのアプリから解錠できます。ドアが閉まると自動で施錠される オートロック機能を搭載しているので、閉め忘れによるセキュリティ低下を防ぎます。
鍵の権限は個人やグループ単位だけでなく、有効な時間帯や曜日の設定 も可能です。オフィスの稼働時間に合わせて柔軟に鍵を管理できます。解錠・施錠したユーザーを記録するので、セキュリティ面でも問題ありません。
さらに、スマートロックを介さない手動の解除・施錠も、履歴は残ります。不審な履歴があれば、機密情報の確認や監視カメラのチェックなど迅速な対応が取れるでしょう。
「ALLIGATE」
株式会社アート
- 参考価格:初期費用0円、月額3,000円〜
- 設置タイプ:既存の鍵に後付け、鍵交換、メーカーによる取付工事
- 対象従業員規模:すべての規模
「ALLIGATE」は、さまざまな施設に対応 できる入退室管理システムです。オフィス用スマートロック、店舗・倉庫向けの南京錠型スマートロック、電池式や電気錠式など、 豊富な鍵の種類で顧客の利用シーンに合う製品が揃っています。取付工事が必要な場合でも、日本全国に対応しています。
入室権限は、クラウドの画面上でまとめて管理。入退室のログも記録し、勤怠管理システムと連携できます。社員ごとに、 1日の最初と最後の入退室履歴を連携システムに出力するため、正確な勤怠管理ができるでしょう。
「入退室管理システムGG-2」
株式会社クマヒラ
- 参考価格:別途お問い合わせ
- 設置タイプ:取付工事
- 対象従業員規模:別途お問い合わせ
「入退室管理システムGG-2」には、暗証番号にICカードから、QRコード・生体認証まで認証方法が豊富 にそろっています。生体認証の部位は、顔・指紋・虹彩・静脈から選択可能です。入室するためには2名の認証が必要な「2名照合」も設定できるので、 高度なセキュリティを求める施設にも導入できます。
他にも、共連れ防止になるアンチパスバック、在室人数カウント、遠隔解錠といった多様なサポート機能 を装備。照明や空調と連動設定すると、入退室時の自動オン・オフもできます。
「Webvisor 入退室管理システム」
株式会社日立システムズ
- 参考価格:別途お問い合わせ
- 設置タイプ:取付工事
- 対象従業員規模:別途お問い合わせ
「Webvisor 入退室管理システム」を導入すると、1つのエリアに複数の認証方法 を採用できます。たとえば、運搬業者や来客などの外来者はハンズフリータグ、社員はICカードで同じ扉を通れます。逆に同じ扉でも、ハンズフリータグは入れないといった設定も可能です。
ハンズフリータグが認証エリアを通過すると、立ち入り禁止区域の侵入通知・音声案内 ができるので、不用意な侵入を防止できます。監視カメラと連携すると、認証操作時から録画をスタートします。入退室履歴から映像検索やライブ映像表示もできるので、 追跡管理を強化できるでしょう。
「BIVALE入退室管理サービス」
株式会社日立ビルシステム
- 参考価格:21,000円 ~
- 設置タイプ:別途問い合わせ
- 対象従業員規模:150,000人以下
「BIVALE入退室管理サービス」は、1ドアから低価格で導入できる クラウド型サービスです。導入後は、ビル1棟や複数拠点の管理まで拡張できる利便性も兼ね備えています。クラウド型なので、いくら拡張しても サーバーの負担はゼロです。業務拡大に合わせて、柔軟に利用シーンを広げられます。
認証方法は、指静脈による生体認証かICカードのいずれかです。2つを組み合わせることもできます。ICカードは小さなNタグシールを貼るだけで、社員証などを簡単に認証用ICカード化させられます。予備のNタグシールでも認証できるので、万が一紛失しても再発行の手間がかかりません。
また、定期点検や故障時は、全国300ヵ所ある事業所から迅速に対応してくれます。
「TimePro-NX入室」
アマノ株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 設置タイプ:別途問い合わせ
- 対象従業員規模:1,000名未満
「TimePro-NX入室」は、同社の人事労務管理製品「TimePro-NX 」シリーズの入退室管理システムです。同シリーズ製品と併用すれば、入退室管理だけでなく、従業員の就業状況・給与管理・人事管理などもおこなえます。
ICカードにスマートフォン、タブレットや生体認証など幅広い認証方法に対応しています。時間帯による入室制限や、 入退室者を顔写真つきで記録するといった管理サポート機能も豊富です。
遠隔操作が可能 なので、監視カメラで来客を確認して解錠するといった使い方もできます。
入退室管理システムの注意点
入退室管理システムを導入すれば、従来の鍵よりも管理が楽になります。とは言え、利用時の注意点がないわけではありません。
ICカードやスマートフォンといった認証媒体を使う場合、紛失・盗難のリスクがあるため、社員1人ひとりが適切に管理する必要があります。普通の鍵よりも小さいハンズフリータグは紛失リスクが高く、慎重に携帯しなくてはなりません。
単にポケットや鞄に入れるのではなく、チェーンやリングでくくりつけるなど対策をしましょう。また、鍵のつまみ部分に後付けするタイプだと、開閉装置の電池切れが起きます。万が一電池切れが起きた場合、従来の鍵でも解錠できるか確認しておきましょう。
スマートロックの場合、インターネットを経由するアプリなら安定したネット環境も必要です。ネット接続が不安定な環境であれば、Bluetooth接続可能な製品が向いています。
入退室管理システムを導入する前に注意点を考慮し、実際の運用までに対策しておきましょう。
まとめ
入退室管理システムを使えば、従来の鍵を使わずに解錠・施錠がきます。誰がいつどこに入退室したか記録するため、セキュリティ強化も可能です。
多くの製品があるので、選ぶときは利用シーンや必要な機能、費用対効果から絞り込んでいきましょう。