企業にとって重要な義務の1つである従業員の勤怠管理は、きちんと行われていないとトラブルを招く恐れがあります。とはいえ、管理する側の人材が不足していたり、働き方が多様化したことで管理が複雑になったりと、しっかりと管理できていないという企業の方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、あらためて確認しておきたい勤怠管理の項目や方法、便利な勤怠管理システムについて解説していきます。
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勤怠管理の意味とは?
勤怠管理とは、従業員の労働時間を正確に把握するため、出勤・退勤・休憩時間・欠勤・遅刻の状況、休日の取得状況などを管理することです。
法定労働時間は、「1日8時間、週40時間」と定められています。これが適正に守られているか、正しい賃金を支払えているかを管理する仕組みが勤怠管理です。
勤怠管理が必要な理由や目的とは?
正しい勤怠管理は、適正な賃金の支払いだけでなく、過剰労働の早期発見や防止効果が生まれ、従業員の健康維持やひいては法令遵守にも結び付くことになります。勤怠管理を行うことは、使用者に与えられた責任であり義務です。
労働基準法第108条には、勤怠管理について「使用者は、事業場ごとに賃金台帳を調整し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省命令で定める事項を賃金支払いの都度遅滞なく記入しなければならない」と定められています。
厚生労働省により「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」平成29年1月20日付けで新たに策定されています、その中でも、適正に記入していない場合の罰則にも言及されています。
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
勤怠管理で管理すべき対象者や項目とは?
従業員を守るための重要な記録となる勤怠管理をする上で、対象者は全ての労働者となるのか具体的に説明していきます。
そして、勤怠管理はどのようにして行えば良いのか項目を説明していきます。
勤怠管理の対象者
勤怠管理の対象者は、厚生労働省のガイドラインでは「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者を除く全ての労働者」と示されています。
労働基準法第41条に定める者とは、管理監督者を指し、部長や工場長といった労働条件の決定や従業員の労務管理について、一定の責任を負う立場の人物です。また、秘書のように経営者と一体である従業員も入ります。
みなし労働時間制とは、使用者の指揮監督が及ばず、具体的な労働時間の算定が困難な場合に所定の労働時間働いたとみなすことです。記者や外勤営業、デザイナー、システムエンジニア、事業運営の企画・立案・調査・分析業務者、在宅勤務者などが入ります。
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勤怠管理の項目
勤怠管理の必要項目の主に挙げられる項目として、出退社時間、勤務時間、残業時間、有給休暇、振替休日などです。
勤務時間に関係する項目は、特に細かくチェックする必要があります。このチェックを怠ってしまうと、正確な勤務時間に対する報酬や残業代を支払うことが出来ず、ブラック企業となってしまう危険性があります。
勤怠管理によって、従業員の偏ってしまう仕事の配分を減らし、より効率的に働く環境を作るため、これらの必要項目を管理する必要があります。
始業・終了時刻、労働時間、休憩時間について
労働時間とは、企業や事業所などから与えられた仕事をするために、自由に過ごせない時間のことです。企業や事務所によっては「変形労働時間制」(1ヵ月単位で法定労働時間を超えないようにする)を採用している場合もあります。
労働時間を正確に把握し、賃金の算定をするため、始業・終業については1分単位で管理をする必要があります。これによって、遅刻や早退が多い従業員に、適正な業務指導や配置換えなどの対応に応用することができるのです。
休憩時間は、労働基準法により「労働時間が6時間を超える場合少なくても45分、8時間を超える場合は少なくても1時間を労働時間の途中に与えること」とされています。
時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間について
法定労働時間を超えたり法律で定められた休日に労働した場合は、「時間外労働」や「休日労働」となり、労働が深夜に及ぶ場合は「深夜労働」となります。
時間外労働や休日労働は原則禁止ですが、労働者と使用者とが書面による協定を労働基準監督署に届け出た場合に限って、例外的に認められます。
こうして働いた時間は割増賃金を支払う必要があります。時間外労働時間や深夜労働時間、休日労働時間にはそれぞれ異なる割増率が適用されます。
出勤日、欠勤日、休日出勤について
1ヵ月単位で勤務状況を把握することも必要です。
休日を正しく取得出来ているか、休日出勤があった際には振替休日や代休を取得出来ているかなどの情報は、従業員の健康管理をする上で欠かせません。
給与計算にも影響があるため適切な管理が必要となってきます。
有休取得日数・残日数について
有休とは、年次有給休暇のことで、2019年4月から労働基準法改正で、「年次有給休暇の取得」も義務化されました。使用者は、条件を満たした従業員に対して、毎年一定の有給休暇を付与しなければなりません。
雇入れの日から起算して、6ヵ月間継続勤務し8割以上出勤している全労働者に対して付与します。正社員だけでなく、条件を満たす契約社員やパート・アルバイトなどにも有給を付与することが法律で義務付けられています。
毎年付与する必要がある有休ですが、消化されないものは翌年繰越となります。有効期限は2年となり超えた場合は消滅します。労働者が退職する場合、残日数分の有休取得を求めてきた場合は、本人の請求権が優先されます。
適切に有休を取得出来ているかを把握するためにも、勤怠管理をしっかり行うことが大切となります。
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勤怠管理を行う4つの方法
勤怠管理をする上で重要になるのは、労働時間と休憩時間の見極めや、労働時間の種類の把握です。適正な賃金の支払いや、長時間労働防止、従業員の健康管理、また訴訟トラブル防止など法令順守にも結び付くことになります。
厚生労働省のガイドラインには、「労働時間管理を行う企業や管理監督者が、直接確認し適正に記録をすること。タイムカードやICカード、パソコンの使用時間等の客観的な記録を基準とし確認して適正に記録をすること」と、指示されています。
原則としてこのガイドラインに則って記録する必要があります。
「紙の出勤簿」、「タイムカード」、「エクセルでの管理」、「勤怠管理システム」の4つの方法があります。
勤怠管理の方法1:紙の出勤簿
紙でのフォーマットで勤怠管理をしていきます。カレンダー仕様のフォーマットを用いて、出勤・退勤時刻や、残業・休憩時間、遅刻、早退、休日取得など、あらゆる情報を書き込んでいきます。
アナログ式ながら、1枚のシートに全てをまとめて管理できる特徴があります。
しかし、全て手書きの自己申告が主となるため、不正申告やサービス残業の温床になりやすく、厚生労働省のガイドラインに定める「適正な労働時間の把握」は難しくなります。
ただし、ガイドラインには、自己申告制の特例措置についても条件が定義されています。それらを全て満たすことができれば「客観的記録」として認められます。
勤怠管理の方法2:タイムカード
紙の打刻シートをタイムレコーダーに差し込んで打刻する方法で、1人分の勤怠状況の1ヵ月分を1枚のシートで管理することができます。
打刻する端末を購入し、用紙を補給することだけで済むためコストを低く導入可能となります。操作も簡単なので誰でもすぐに使用することが出来ます。
ただし、始業・終業時刻しか記録できないものが多く、休日や残業時間の管理が出来ない可能性があります。社内にタイムレコーダーの設置が必要なため、テレワークや社外で勤務する場合には「リアルタイムに打刻できない」デメリットがあります。
手書きの修正による自己申告は、厚生労働省のガイドラインで定める「客観的記録」として認められていないため、別の措置が必要になります。
打刻機能しかないタイムレコーダーは、集計作業をエクセルなどの表計算ソフトを活用することとなり、労力と時間がかかり、転記ミスなどのリスクを考慮する必要があります。
勤怠管理の方法3:エクセルで管理
エクセルで打刻から集計まで、同時に行う方法です。セルに数式を設定しておき、出退勤時刻を入力するだけで自動的に労働時間を計算します。エクセルがインストールされていれば実質0円で導入できます。
入力ミスや不正申告が起こりやすく適正に管理するのは難しいと言えます。固定されたPCでデータを共有する場合はテレワークなどには対応できない可能性があります。
1つのセルで管理出来るのは単純な計算に留まるため、分析に用いるには複雑な計算が別途必要になります。表計算エラーや入力ミスでのエラーで残業代が未払いとなるケースが発生しています。割増率の変更があると計算式が変わるので定期的に確認する必要が出てきます。
勤怠管理の方法4:勤怠管理システム
勤怠管理システムは、タイムレコーダー、スマートフォン、パソコンなどとリンクしておき、打刻から集計、分析まで一貫してシステムで管理出来ます。
リアルタイムで打刻管理が出来る上、集計や分析にかかる手間も少なく済みます。給与システムとリンクできるため、転記する手間が省け、給与計算ミスも防げます。
個別の勤務状況があれば、アラート機能を設定しておきます。もし労働過多になっている従業員がいても、適切な指導を的確に行えます。
勤怠管理システムの3つのタイプ
勤怠管理システムの導入は、専用機器を購入する必要がないため従来よりも投資を抑えることが出来ます。
なりすましや不正打刻の防止、打刻の待ち時間の解消、勤怠管理のための手間やコストの削減、残業時間の抑制といった、より良い勤怠管理にシステムを使用することは多くのメリットがあります。
勤怠管理システムには3つの方法があります。
勤怠管理システムのタイプ1:クラウド型
クラウド型とは、インターネット上のサーバーを利用してソフトウェアを利用するタイプです。
利用者はインターネット環境さえあれば、どこでも利用出来ます。サーバーなどの設備やその保守の必要がないため比較的低コストで利用出来ます。
利用人数に応じた課金体系のため、使いたい時に使う分だけ利用することが出来ます。煩雑な設定なしにモバイルからのアクセスが可能で、モバイル専用画面が用意されている場合が多く使いやすいと言えます。
外部サーバーとのネットワークを介してアクセスするため多少のリスクを伴うことと、カスタマイズ性は限定的となります。クロノス(株)の提供するテレタイムクラウドなどがあります。
勤怠管理システムのタイプ2:オンプレミス型
オンプレミス型とは、自社で用意したサーバーへソフトウェアをインストールし利用するタイプを指します。社外へ情報が洩れる可能性が低く既存ソフトウェアとのサーバー上で統合しやすいことが特長です。
自社でカスタマイズしやすいため、利用形態が複雑化しがちな大企業においては様々な社内ニーズに柔軟に対応出来ます。
サーバー購入、ソフトウェア・ライセンス購入等の初期費用、サーバー管理やメンテナンスなどの費用が必要となります。クロノス(株)クロッシオンなどがあります。
勤怠管理システムのタイプ3:タイムレコーダー型
タイムレコーダー型は、タイムレコーダー端末へICカードをかざして打刻するタイプです。パソコンの操作が苦手な方でも安心して使うことが出来ます。
インターネット環境がなくても使えるので構築に費用や工数がかかりません。多数のシリーズが用意されており、最初に自社の勤務パターンなどを登録しておくだけでソフトが集計し勤怠管理がスピーディになる商品もあります。
ICカードは構造上非常にデリケートで、外部からの物理的ストレス(曲げ、反り、擦れ、高温、強い磁気など)に弱いので取り扱いには注意が必要となります。クロノス(株)のテレタイムなどがあります。
自社にあった勤怠管理方法でしっかりと勤怠管理しましょう
勤怠管理は法令上「義務」ですが、企業生命を守る上でも重要な業務と言えます。
そもそも勤怠管理をできていなかったり、現状の勤怠管理が上手くいっていない場合は、今一度勤怠管理の仕方について見直す必要があるでしょう。その際は、従業員数を含めた企業規模や雇用形態など様々な要件から、自社や従業員にとって一番適した管理方法を選ぶことが重要です。
また、手間をかけずにしっかりとした勤怠管理を行いたい場合は、勤怠管理システムの導入がおすすめです。ぜひこの機会に勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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