アパート経営を検討している人の中には、既存のアパートを購入するのではなく、既に所有している土地にアパートを建設して運用したいと考えている人もいます。その場合は、アパートを建てるためにいくらかかるのでしょうか。
なるべく安い金額で建てて初期費用を節約しようと考える人も多いと思いますが、そのためにはどのような工夫をすればよいのかも気になるところです。そこで今回は、アパート建設にかかる費用の相場と建設を依頼する会社の選び方、建設の流れなどを詳しく解説していきます。
アパートを建てるにはいくら必要?
アパートを建てる費用は構造によって大きく異なります。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリートなどの構造によって坪単価が変わるからです。各構造の坪単価の平均相場を見ていきましょう。
構造別坪単価の相場
2020年に発表された政府統計データをもとにすると、構造別の平均坪単価は以下の通りです。
項目 | 木造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 |
1平米あたりの工事費予定額 | 17万円 | 24万円 | 25万円 |
平均坪単価 | 56万円 | 79万円 | 83万円 |
※坪単価=1平米あたりの工事費×3.3で計算
このように、坪単価はアパートの構造によって大きく異なります。木造が最も安く、次いで鉄骨造、鉄筋コンクリート造の順に価格が上がっていきます。
工事費用の目安
本体の工事費用は「坪単価×延べ床面積」で計算すると目安になります。平均坪単価に建てたいアパートの延べ床面積をかければ、おおまかな費用の算出が可能です。
ただし、必ずしも希望通りの建物を建築できるわけではありません。土地の広さや地域のインフラ状況などの条件により、建ぺい率・容積率などの定めがあるので注意しておきましょう。
アパートを建てるまでの手順
アパートの建設は建設会社に依頼することになりますが、依頼者側にもやることがあるため建設の流れを把握しておかなければなりません。そこで、アパートを建てるまでの手順について解説していきます。
1. アパートを建てるための情報を収集する
アパートを建てる際は、まずさまざまな情報収集が必要です。所有地の接道義務についての確認や建ぺい率や容積率のチェックの他、土地そのものがアパートを建てることが可能なのかを確認します。また周辺エリアの不動産会社などをチェックして、アパートの需要があるかを確認することも大切です。
接道義務とは
都市計画区域にて建物を建てる際に、原則として幅員4mの建築基準法上の道路に、敷地が2m以上接していないといけないという規則のことを接道義務といいます。
建ぺい率とは
敷地(土地)の面積に対する建物の建築面積の割合のことを建ぺい率といいます。建ぺい率には地域ごとに決まった制限が設けられています。
容積率とは
敷地(土地)の面積に対する建物の延べ床面積のことを容積率といいますが、これは人口制限のために設けられています。例えば、インフラが不十分な土地の人口が多くなりすぎないよう調整するために、既定のパーセンテージが定められており、建ぺい率と同じように地域ごとに制限があります。
接道義務や容積率などについては以下の記事でも解説しているので、詳しく知りたい方は合わせてご覧ください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/22326
2. ハウスメーカーなどに相談する
次に、ハウスメーカーなどの土地活用相談窓口で相談します。ハウスメーカー各社は独自のアパートの規格品を持っており、ファミリー向けや単身者向けなど得意分野も異なってくるので、自分が建てたいアパートに合ったハウスメーカーを選んでください。エリアによってアパートの需要も異なるため、よく調査しましょう。
ハウスメーカーを選ぶ際は、複数の会社をピックアップして、それぞれのプランを比較検討することが重要です。比較する項目としては設計と建築費と収支計画が上げられます。比較することによって、不可能だと思っていたプランが可能な会社があったりするなど発見も多いです。またハウスメーカーの他に、工務店や建設会社に依頼することも可能です。
3. プランを吟味して建設会社を決める
各ハウスメーカーなどのプランを複数ピックアップしたら、それぞれのプランを吟味して、建築を依頼する会社を決めます。アパートの構造・間取り・設備などが希望に合っているか、現実的なプランを提案しているかなどで建設会社を選ぶのがおすすめです。
この時点で建設費用がいくら必要か、家賃はいくらにするか、収益はどのくらいになるかなどを計算しておくとよいでしょう。
4. アパートを建てるための資金を準備する
プランが決まったら、銀行に相談してどのくらいの融資を受けられるか、自己資金はどのくらい準備できるのかなどの資金計画を行います。自分で融資を受ける銀行を探すことも可能ですが、ハウスメーカーなどに提携銀行を紹介されることもあります。
一般的には建設費の3~5割を自己負担
アパート建築の際に実際に必要になる自己資金は、建設費の3~5割です。ただしアパートの賃料が高いエリアでは、自己資金が少なくても問題にならないことがあり、その場合は最低ラインの建築費の1割が用意できればよいとされています。
一方で郊外の賃料が安いエリアの場合は、建設費の5割ほどの自己資金を用意しないと、返済リスクが高くなるといわれています。借入額が多くなるほど毎月の返済額も多くなり、返済負担が重くなって結果的に苦しい思いをすることになるため、長期的にシミュレーションして資金計画を立てることが大切です。
ローンの融資限度額は資産価値の5~6割
アパート建設におけるローンの融資限度額は、資産価値の5~6割以下が相場とされています。金融機関によって割合はさまざまですが、アパートローンのみでアパートの建設費用をまかなうことは、不可能であると頭に入れておきましょう。
なお、アパートローンの最大借入限度額は年収の10~30倍ともいわれています。さらに、銀行によってはアパートローンに限り融資額を1~3億円と決めているところもあります。しかし資産価値の5~6割以下にするのが望ましいとされているので、無理なく返済できる借入金額になるように資金計画を立てましょう。
また、融資までの流れやおすすめの低金利住宅ローンについては、以下の記事がおすすめです。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/13861
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/13907
5. 建設会社と請負契約を締結して着工
依頼する建設会社と請負契約を締結したら、いよいよ着工です。着工前に近隣挨拶を行っておくと、工事の騒音トラブルなどの無駄な問題を回避できます。工事中に現場の視察に行くことも可能ですが、その際は事前に工事長に連絡を入れましょう。
工期は通常、2階建ての木造アパートで約3ヶ月といわれています。(階数×1ヶ月)+1ヶ月が目安と考えるとよいでしょう。
アパートの完成予定が決まってきた段階で、入居者募集も開始します。完成後に募集すると、入居者が集まるまでの一定期間は、すべての部屋が空室になってしまうためおすすめできません。
6. アパートの引き渡し・賃貸経営開始
アパートが完成したら、まずは役所の建築完了検査を受けます。これは建物が設計通りに完成しているかを確認する公的な検査で、必ず受けなければなりません。
その後オーナーとしての検査を行い、依頼した通りの物件になっているか、使いにくい部分はないかなどを確認し、問題がなければ引き渡しとなります。なにか気になる点があったら、引き渡しになる前に建設会社に伝えて解決しましょう。引き渡しが終ったら賃貸経営開始です。
アパートを建てるときは利回りの計算をする
アパートを建てる際は、利回りについて理解する必要があります。利回りとは投資に対して得られたリターンの割合のことです。アパートを建てたら、建設や管理にかかった費用を家賃収入などで回収するので、この回収率がアパート経営の利回りになります。
利回りには表利回り、実質利回り、想定利回りの3種類あります。以下で詳しく見ていきましょう。
表面利回り・想定利回り
表利回りとは、アパートの建設費に対する年間の家賃収入の割合のことです。表面利回りは次の計算方法で算出することができます。
この計算方法は、ざっくりとどれくらいで収益回収できるのかを調べたいときに使う方法で、諸経費に関しては触れられていません。投資物件を紹介される際は、基本的に表面利回りが使われています。諸経費などは年度によって変動するため、不確かな情報であるとして紹介の際は情報が省かれるのです。
また、空室がない状態の年間の家賃収入を使って計算した場合は、想定利回りとなります。
実質利回り
>実質利回りとは、アパートの建設費と諸経費を足した金額に対して、年間の家賃収入から管理運営に必要な経費を差し引いた割合のことを指します。実質利回りの計算方法は下記の通りです。
年間経費は火災保険や固定資産税、修繕費などアパートの経営にかかった費用があてはまります。この計算方法では、表面利回りよりもより具体的な利回りを計算することができます。アパート経営の際は、表面利回りばかりを注視せず、実質利回りを把握することが重要です。
マンション経営を含めた利回りを良くするコツなどについては、以下の記事も参考にしてください。
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/20678
https://news.mynavi.jp/fudosan-satei/20904
アパートを建てる会社の選び方
アパート建設は建設会社に依頼することになりますが、アパート建設を依頼できる会社にも複数の種類があり、それぞれに特徴や得手不得手があります。自分が建てたいアパートの建設をどこに頼むべきかの参考にしてください。
アパート建設会社は主に3種類
アパートの建設が依頼できる会社は、主にハウスメーカー・工務店・総合建設会社の3種類あります。それぞれ特徴や得意分野が違うため、自分の経営したいアパートのニーズに合った会社に依頼することが重要です。それぞれの特徴を詳しく解説していきます。
ハウスメーカー
アパート建設の際に、最もメリットが多く初心者向けといえるのがハウスメーカーです。各会社で独自のアパートブランドを所有しており、複数のプランを提示してもらえます。
木造や軽量鉄骨の建設実績が最も多く、アパート建設自体の実績も豊富なので安心して依頼できます。工場のラインで製造している高品質な部品を使用しており、施工ミスが起きる可能性も少なく品質が安定している点も大きなメリットです。
工務店
ハウスメーカーのような全国展開はしておらず、地域密着型の運営をしているのが工務店です。昔ながらの大工や職人に外注していることも多く、自由度の高い設計など柔軟な対応をしてもらえる点がメリットです。
工務店はアパートのような集合住宅よりも戸建ての建設を得意としているため、3階建て以上のアパートの建設を頼みたい場合は確認する必要があります。また、ハウスメーカーよりも工期が長くなる場合が多いため、建設予定期間は長く見積もったほうがよいでしょう。
総合建設会社
総合建設会社は建物だけではなく、道路の施工や公共施設工事なども行っている大きな会社です。一般的なアパート建築よりも、大きな商業施設や巨大ビルなどの建設のほうが得意なため、大規模アパートの建設に向いており、小規模アパートの場合はそもそも依頼を請け負わないこともあります。
知名度が高く入居者が集まりやすい点が大きなメリットですが、建設費用が高くなりがちな点はデメリットです。
アパート建設の実績が豊富な会社を選ぶ
アパート建築を依頼する会社を選ぶ際に最も重要なことは、アパート建設の実績が豊富な会社を選ぶことです。各建設会社はアパート以外にも、戸建てやマンションなどさまざまなタイプの住宅の建設を扱っており、得意分野が異なります。
また、同じアパート建設の実績でも木造が得意であったり、低層アパートが得意であったりするなど、アパートの種類によっても得意分野が異なります。そのためそういった点を考慮した上で、自分が建てたいアパートの建設が得意な会社を選びましょう。
実績のある会社では、需要があるプランや人気の高い設備などのアドバイスがもらえます。
アパート経営のノウハウがある会社を選ぶ
アパート建設を頼む会社は、建設だけではなく家賃設定や経営計画なども提案してくれるような、経営のノウハウについて詳しい業者を選ぶことがおすすめです。アパート経営は長期的な投資となるため、その後の経営についてもよく考えた上で、提案してくれる業者に頼むのが安心といえます。
また、建設後にアパートの管理やメンテナンスも請け負ってくれる会社もあります。管理も任せるつもりでいるなら、そのような建設から管理まで一括して対応してくれる会社に頼むのもいいでしょう。
アパートを建てる金額を抑える方法
アパートを建てる金額を抑えて、初期費用を節約することが可能です。どのようにして建設費用を安くすることが可能なのか見ていきましょう。
設計施工一括方式のハウスメーカーを選ぶ
設計施工一括方式とは、設計と施工を同じ会社が行っていることを指します。設計施工一括方式は、アパートを安く建てるために最もメジャーな選択で、設計と施工が別々の会社よりも建設費が安くなります。一般的にはハウスメーカーがこの方式になっていることが多いです。
なぜ設計施工一括方式だと費用が安くなるかというと、設計費用が安くなるためです。一括の場合は設計費用が工事費用の1~3%になるのに対し、別々に行う会社だと工事費の5~8%もかかってしまいます。
建設費が安くなるだけでなく、耐久性を含む品質が高くなる点も大きなメリットです。
複数の会社に見積もり依頼する
アパート建設の際は、必ず複数の会社に相見積もりを依頼してください。それぞれのプランと費用を比較して、自分が建てたいアパートに合った会社を見つけましょう。
その際は、一括資料請求サイトを活用することがおすすめです。一括資料請求サイトは、情報を入力するだけで複数のハウスメーカーの資料を入手することができます。
土地活用の方法に迷っているなら「HOME4U土地活用」がおすすめ
- どの土地活用方法を選べば良いのか迷っている
- 土地活用の相談をどこにしたら良いのかわからない
- 初期費用や将来得られる収益のバランスを見ながら検討したい
間取りや設備をシンプルにする
間取りや設備をシンプルにすることも、アパートの建設費を抑えるコツのひとつです。間取りが複雑だったり、設備のスペックが高すぎたりすると、予想以上のコストがかかってしまうことがあり、特に間取りはシンプルなほどコストを抑えられます。
外観に関しても同じで、こだわりを出し過ぎると建設費が上乗せされてしまうので、コストを抑えるのであればある程度の妥協が必要になるでしょう。
まとめ
アパートを建てる費用は構造によって大きく変化し、最も安く済むのは木造アパートです。自己負担額は建設費の3~5割が一般的なため、それを目安に初期費用を用意しておくとよいでしょう。
アパート建設の際は、建設を頼む会社を複数社から選ぶことがポイントです。建設会社の種類によって得意分野が異なるので、自分が運用したいアパートの建設が得意な業者を見極める必要があります。
アパート経営を始めたら、実質利回りが高くなるように建設費用もなるべく節約できるように工夫しましょう。
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