いよいよ今年も確定申告の季節がやってきました。
株式、債券、コモディティなど、資産の守りを固めるために分散投資をされている方も増えましたが、その中で今注目されているのが不動産投資です。
不動産投資は、安定した収益を見込める魅力的な投資手段ですが、利益に対して課せられる税金が一つの大きな壁となることもあります。
特に、税負担が大きくなると、せっかくの投資効果が薄れてしまうことにもなりかねません。
そこで、本連載では全5回にわたり、不動産投資における節税術をテーマに、税金を最適化し、より効率的に資産を増やしていくための方法を解説します。
税金の仕組みを理解し、実践的な節税策を取り入れることで、投資の収益性を最大限に引き出すことが可能です。
このコラムを通じて、税負担を減らしながら不動産投資の魅力をさらに深めていきましょう。
不動産投資で節税できる税金の種類
第1回の連載では、不動産投資でどういった税金が節税できるのか、そのカラクリもあわせてご紹介します。
まず「節税」とは、税制上の仕組みを用いて税金を払いすぎないようにする行為を指し、タックスコントロール、タックスマネジメントなどとも呼ばれます。
一般的には、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)や扶養控除、生命保険料控除などが馴染みのある税金対策ではないでしょうか。
不動産投資における節税とは、法律の範囲内でこの税金を適正に減らすための手段や方法を活用することを指します。
不動産投資による家賃収入は「不動産所得」として扱われ、毎年1回、確定申告を行う必要があります。しかし不動産投資においては、購入費用や維持管理費用など、さまざまな経費が税務上の控除対象となるため、これらを上手に活用することで税負担を軽減できます。
では早速、本題「不動産投資で節税できる税金とは」、具体的にご説明します。
1. 所得税・住民税
まず不動産所得には所得税・住民税が課されます。節税のポイントは、不動産投資にかかる経費を適切に計上することです。例えば、以下のような経費が所得税の課税対象となる所得から差し引かれます。
- 減価償却費:建物や設備の価値が減少する分を経費として計上できる。
- 賃貸管理会社に払う管理手数料:修繕費や管理費など物件の維持管理に必要な費用。
- ローン利息:不動産購入のためのローンの利息部分。
- 固定資産税・都市計画税:所有する不動産にかかる税金。
- 火災保険や地震保険の保険料:物件にかかる保険の費用。
これらの経費を差し引いた後の不動産所得に対して所得税が課されます。また、不動産所得と給与所得、事業所得などは損益通算が可能で、不動産所得が帳簿上赤字の場合、給与所得などの黒字分を引き下げることができ、税金の還付を受けることもできます。
例えば、年間1,000万円の給与所得がある人が不動産投資で300万円の赤字を出した場合、給与所得から赤字分を引いた700万円が課税対象となります。これにより、すでに源泉徴収で納めた1,000万円分の税金から、確定申告を通じて還付を受けることができる可能性があります。
これが不動産投資における基本的な節税のカラクリです。節税術の実例については今後の連載でご紹介していきます。
2.復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興を支援するために課される税金で、所得税額の2.1%が加算されるので、所得税の計算に含める必要があります。
3. 法人税
不動産投資を個人ではなく法人として行う場合、その所得には法人税が課されます。法人の場合、個人事業のように所得の種類が細かく分けられず、法人全体の事業活動による所得に対して法人税が課されます。このため、個人事業主が不動産投資を行う場合よりも、より広範な経費を計上できるメリットがあります。
個人の所得税は累進課税制に基づき、所得が増えると税率も高くなり、最大45%、さらに住民税もあわせると最高税率55%にまで上ります。対して、法人税は法人の種類や資本金額、年間所得金額で税率が変動はするものの、最大の法定実効税率は約30%と、個人の税率に比べると低くなります。そのため高所得の方は法人化することでより高い節税効果を享受できます。
4.相続税
不動産を相続した場合、相続税が課されますが、相続時の評価額を減らす、小規模宅地等の特例を適用するなど、適切な節税方法を用いることで相続税の負担を軽減できます。
経費計上で節税効果を高める方法も
こうして税金に対する節税方法を活用することで、不動産投資の利益を最大化し、税負担を減らすことが可能です。
また「不動産投資で節税できる税金」以外にも、「経費計上」することによって節税効果を高めることもできます。
例えば、不動産投資の際に生じた「仲介手数料」、そして不動産の物件探しにかかった「交通費」、不動産会社など取引先とのやりとりで必要になる通話料やインターネット回線費などの「通信費」などは、経費として認めらやすいケースが多いです。
税金対策には法的なルールがあるため、専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。
次の連載では、どんな人が不動産投資での節税に適しているのか、解説します。お楽しみに。