「家じまい」や「実家じまい」は、しばしば家族間のトラブル、いわゆる「争族」の原因となることがあります。
そこで本稿では、株式会社オープンハウス・ディベロップメントにて開発事業部長と用地部長を務める須藤光輝氏に、「家じまい」や「実家じまい」を穏便に終わらせる方法について解説していただきます。
経験者が語る、「家じまいに苦労した意外なポイント」とは?
2024年にオープンハウスグループが実施した「家じまいに関する調査」でも、6.4%が相続人同士で意見が割れてしまったと回答していることからも、意外に高い割合で「争族」になっていることが伺えます。
例えば、親の介護施設入居に合わせて実家の売却を手伝っていた最中に、親が認知症になってしまい大変だった、という事例があります。つまり前回もお話した、「健康寿命」を頭に入れて準備を進めておくことが非常に重要なのです。
逆に、自分の家を売却したら子世代から文句が出た、という話もあります。やはり実家は単なる家ではなく自分たちの想い出のつまった場所であり、単純な利益・損得だけでは計り知れないものがある点も「争族」になってしまう一因と考えます。
また、相続後に「曾祖父から登記が更新されておらず、相続権のあるひとを探したり、関連書類を集めたりするだけでも大変だった」「登記を見たら知らない権利者がいた」「実は借地だった」という実例もあるのです。
事前に始める「対話」「気持ちを知る」ことの重要性
上記のような事態にならないためにも、「家じまい」「実家じまい」で何より大切なのは、家族間で事前にしっかり話し合っておくことです。
相続トラブルによる「争族」化を避けるためには、「持ち主が元気で判断力があるうちに家族で検討を始めて、どうするか決めておく」ことを強く推奨します。それこそが相続が争族にならない、そしてスムーズに進む唯一の方法です。
具体的なステップとして、まずは家族会議を開き、家をどうしたいのか話し合うことから始めましょう。これは単なる物の整理ではなく、親の人生観や価値観を理解し、親子のコミュニケーションを深める貴重な機会と捉えるべきです。そして、誰が意思決定者となるのかを明確にし、必要に応じて不動産会社、税理士、弁護士、遺品整理業者などの専門家へ相談することも重要です。
親に話す場合は、親の気持ちを知っておくことが大切です。親も納得して物を手放しやすくなり、片付けを通じて親の身体的・心理的な変化に気づくことができれば、介護や病気などへの早期対応にもつながります。
こうしたコミュニケーションを通じて、次世代が大変な思いをしたり、場合によっては「争族」になってしまったり、「負動産」を残したりするリスクをおさえ、家族の未来を守ることができるでしょう。専門家と連携し、最適な選択をすることが、賢明な資産家の皆様に求められる次なる一手です。事前に話し合っておくことで、適切な知識を得られ、準備ができるため、今後のくらしを見据えた「家じまい」を実現することができます。
――家じまいの2大パターンを解説