7月1日、国税庁より路線価が発表されました。2025年の路線価における宅地は、全国平均で前年比2.7%上昇し、4年連続で上昇かつ昨年の上昇率2.3%を上回る結果となりました。
都道府県別の上昇率の前年変動率の平均値を見ると1位は東京都の8.1%で、上昇幅も+2.8ポイントと圧倒的な結果に。また宮城県4.4%、神奈川県4.4%、千葉県4.3%、愛知県2.8%、大阪府4.4%、京都府3.7%、福岡県6.0%、沖縄県6.3%などと大都市や観光地を中心に大きく上がりました。上記は都道府県の平均値のため、都心部になるとよりその上昇率は高くなります。
この路線価は、主に相続税や贈与税の計算に使用されます。最近では、元気なうちに財産整理や、葬儀やお墓の準備をする「終活」という言葉も定着していますが、意外に抜けがち、先送りにしがちなのが実は金額的にも大きい「家」に関すること。
そこで本稿では、調査データや法改正の動向などから、株式会社オープンハウス・ディベロップメントにて開発事業部長と用地部長を務める須藤光輝氏に、「家じまい」や「実家じまい」について解説していただきます。
なぜ今、「家じまい・実家じまい」が注目されているのか?
先に「家じまい」「実家じまい」を定義しますと、「家じまい」は自身が現在住んでいる家を処分して新しい家に住み替えたり施設に入ったりすることで「終活」の一環ともいえます。「実家じまい」は、相続した家を整理・処分することです。また親が介護施設に入居したりして、実家を今後使用する予定がないなどの理由で実家を子世代が代理で整理・処分することも含みます。
さてなぜ今「家じまい・実家じまい」が注目されているのか、社会背景を簡単に振り返っていきます。なぜならそれこそ「家じまい・実家じまい」の今と今後の動向が分かる数値となるからです。
「2025年問題」による「大相続時代」の到来
2025年には、団塊の世代が全員75歳以上となり、およそ5人に1人が後期高齢者に。日本は本格的な超高齢化社会に突入します。これに伴い、親世代から子世代へと膨大な資産が相続される「大相続時代」が到来します。
さらに戦後の持ち家率上昇に伴い、日本では初めての「家じまい」「実家じまい」の大きな波を迎えることとなります。家を相続し売却するという経験がない人が多いため、大きな問題となることが予想されます。
実際、昨年オープンハウスグループが実施した「家じまいに関する意識調査」からは、「家じまい」「実家じまい」に関する課題感が浮き彫りになりました。
家じまいの経験者と検討者の双方に家の売却を検討し始めたきっかけを聞いたところ、売却のきっかけは、「使う見込みがなく、家の維持・修繕が大変になった」が最多(経験者34.3%、検討者29.1%)。
これから家じまいをしようとしている検討者に絞ると「家族や親族の高齢化」が「死別」を上回るとともに、検討者かつ相続・贈与予定の人に限定すると「家族や親族の高齢化」が「使う見込みがない」を大きく上回る結果となりました。つまり親が生きているうちに親の「高齢化」をきっかけとした「家じまい」を始める傾向が高まっていると言えます。
――家じまいを「賢く損をせずに」進める方法を解説