ボーナスは額面をそのまま受け取れるのではなく、所得税や社会保険料が控除されます。しかし一定の年齢の方なら、「昔はこんなにたくさん控除されていなかった」と覚えているでしょう。そこで今回は、いつから賞与が控除されるようになったのか、過去の経緯を辿って解説します。
ボーナスからの控除が始まったのはいつ?
ボーナスからは所得税や社会保険料が控除されていますが、開始されたのはそれぞれ別のタイミングです。
所得税の徴収は1947年から
所得税の徴収が始まったのは1947年と、戦後間もない頃からです。所得税は1947年に制定された「所得税法」により、賞与にも課税されることが決まりました。
それ以前は会社ごとに取り扱いの違いがあったものの、この法制定によって明確に賞与も課税対象となりました。
社会保険料の徴収は2003年から
社会保険料が現在の方式で徴収されるようになったのは、2003年4月の支給分からです。
それまでは特別保険料という名目で、ボーナスに対して1%(労使折半)の保険料がかけられていました。
2003年からは「総報酬制」という仕組みが取られ、ボーナスを含めた収入全体に対して同率で保険料が課されるようになりました。
総報酬制が導入された背景は「社会保険料の節約の阻止」です。月給が多くなくても賞与が多い人は、社会保険の負担が軽くなってしまうため、不公平感が生まれてしまいます。 そこで賞与も社会保険料の算出のベースに加えることで、不公平感を解消するのが狙いでした。この決定に至る議論では「保険料収入を増やすことが目的ではない」とされていますが、結果的に保険料収入の増加につながったことは否定できません。
ただし、保険料の負担が増えた方は、その分年金の受給額なども増えることになります。よって、丸ごと損をしたというわけでもありません。
昔と現在、ボーナス手取り額の比較
2003年より前の「特別保険料」と、2003年以降の「総報酬制」では、ボーナスの手取り額でどのくらいの違いが生まれるのでしょうか? 所得税も含めて、概算をシミュレーションしてみました。
- 2003年以前/月給30万円、賞与90万円、特別保険料
- 2003年以降/月給30万円、賞与90万円、総報酬制
※いずれも東京都在住、扶養人数は0人、所得税の源泉徴収税率は令和6年時点のものとする
2003年以前の場合
- 所得税:5万5,134円
- 社会保険料:9,000円
- 合計の控除額:6万4,134円
- ボーナス手取り額:83万5,866円
2003年以降の場合
- 所得税:5万5,134円
- 社会保険料:17万6,490円
- 合計の控除額:23万1,624円
- ボーナス手取り額:66万8,376円
この例で比較すると、手取り額で16万円以上もの差が生まれました。現在の賞与の手取り額は、額面の70%~80%程度が目安であり、昔に比べると手取り額はかなり減っていることがわかります。
※総報酬制導入のタイミングの前後では、激変緩和のため、税率調整措置が取られました
税制改正のニュースには注目しておこう
2003年からの総報酬制の導入により、賞与から社会保険料が多く控除されるようになり、手取り額の減少につながりました。
現在のところ、総報酬制の導入といった大きな変更は予定されていませんが、賞与にかかる社会保険料が将来さらに上がる可能性はあります。今後、何かしらの税制改正が行われる際にはニュースで報道されるため、日頃からチェックしておきましょう。