財務省が新たな国債を2027年1月から発行することを明らかにしました。合わせて、個人向け国債の購入可能な対象を拡大させる見通しも示しています。日銀の利上げにより日本も金利のある世界が戻り、個人向け国債も以前に比べると人気化しつつあるようです。
こちらの記事では国債をめぐる状況について、個人投資家の視点で簡単に解説します。
新たな国債が2027年1月以降に発行を開始
財務省は5月、新しい変動利付国債を2027年1月以降に発行すると明らかにしました。金利は半年毎に市中金利に連動し、償還までの期間は2年と5年の債券を候補としています。
新たな国債の詳細は以下とされています。
- 表面利率(クーポン) 「基準金利」+「スプレッド」(クーポン:0.001%刻み、下限を0%とする)。なお、スプレッドは入札時に決定し、満期まで変更しない
- 基準金利 6ヵ月T-Bill(米国の短期債券)の発行利回り
- 発行方式 入札方式
- 年限候補 2年、5年
- 利払い日 償還日の半年単位の応当日、年2回
- 最低額面 5万円
なお、機関投資家などプロの投資家向けの国債となる見込みです。
個人向け国債の販売先の多様化も2027年1月から図られる見通し
また同日、財務省は個人向け国債の販売先を学校法人やマンション管理組合などの法人に広げる時期についても、2027年1月発行分からとなる見通しを示しました。
新たな債券に加えて個人向け国債の販売先の多様化もあり、投資商品として日本国債の存在感が高まることになりそうです。
国債を売らなければならない日本政府
アベノミクスに合わせて日銀は大幅な金融緩和を行い、国債市場から国債を買い上げる政策を強力に進めました。機関投資家などの国債の引き受け手は、バックに日銀という国債の買い手がおり安心して国債の投資を進め、また政府も大量に国債の発行ができました。 しかし世界的な金利上昇を背景に、日銀も金融緩和を昨年遂に終えて、利上げを行い国債買取の減額も進めています。
その結果、機関投資家などは通常のリスク判断に基づき国債の投資を行うようになり、また政府も無尽蔵な国債発行ができなくなりました。令和7年度(2025年度)の国債発行予定額は176.9兆円ですが、そのうち136.2兆円は過去の発行分の借換債です。
発行する国債の7割以上は既存分の借り換えのため、新たな国債の発行による資金調達には投資家層の拡大が欠かせません。
人口のボリュームゾーンである団塊の世代の高齢化とともに、今後も社会保障費の増大が見込まれます。財務省は海外投資家などに日本国債の売り込みを図るとともに、国内では新たな種類の国債発行や個人向け国債の裾野の拡大で、国債による資金調達のパイプ強化に努めています。
金利が上昇し個人向け国債の人気が高まっている
2024年3月に日銀はマイナス金利政策を解除するとともに金融緩和政策の縮小を進め、7月には利上げを行いました。更に2025年1月に追加利上げを行っています。
日銀の利上げにより、日本も金利のある世界が戻り、ほとんど金利が付かず人気のなかった個人向け国債が以前に比べ人気化しています。10年の個人向け国債の金利は0.84%(25年5月発行、税引前)です。昨年までの令和の時代は毎月2,000~4,000億円台(一時的な例外あり)が続いた月間の個人向け国債の発行額が、本年1月は5,000億円台、そして4月と5月は6,000億円台となりました。
トランプ関税ショックもあり、手堅い投資先として個人向け国債が個人投資家の注目を集めつつあります。
まとめ:金利のある商品が増えて個人投資家にはよい時代だが政府はやりくりが大変
国債は国の借金です。簡単に言えば2024年3月まで日銀は際限なく国にお金を貸していましたが、2024年3月以降は政府に対する貸出を減らしています。本来、中央銀行による国債購入は禁じ手であり(そのため日銀は債券市場から国債を買い取る形とした)、現在は本来の姿に戻る過程です。
国債の種類を増やす、個人向け国債の購入対象を拡大させるなど、国=財務省も国債の引受先の裾野の拡大に注力し、日銀の国債購入の減少分を埋めようとしています。
新たな国債発行や個人向け国債の購入対象拡大が予定される中で、今後金利や国債について、個人投資家の観点でも注目の機会が増えることになりそうです。