インデックスファンドの隆盛が止まらない。その理由は2つあると考える。
1つは株式市場、特に米国を中心に価格が大きく伸びたこと。そしてもう1つは手数料(信託報酬)が低いこと。しかしそれらの理由は、この十数年の相場環境だからこそ効果を発揮できたと言えるかもしれない。
超長期では米国S&P500に連動する商品やオールカントリー型のファンドをつみたて投資しておけば問題ないと考えるものの、短・中期の成績は大いに懸念が残る。
まずは、インデックスファンドの投資家が、足元の波乱相場を心の平静さを保って乗り越えられるかがポイントだ。
S&P500やオールカントリー型のインデックスファンドには、成績以外の問題点がいくつかある。第一に、それらが社会にもたらすマイナスな部分が露見したら、果たしてこれまでと同じような勢いを保てるだろうか。
そして仮にそれらインデックスファンドに本格的な陰りが見えたら、これまで取り沙汰されなかったような落とし穴が突如顔を出すかもしれない。本項を前編とし、インデックスファンドの問題点を2回に分けて考えていきたい。
インデックスファンドの落とし穴(前編)
2024年スタートの新NISAでは多くの人が資産運用デビューを果たしたと思われる。強さを見せる米国の株式市場を背景にS&P500やオールカントリー型のファンドの人気が加速し、多額のマネーが米国に流れた。
オールカントリー型とはいえ、実際のところ中身は6割前後が米国株式である。見方によっては、日本国内の数多の補助金や経済浮揚を狙った企業の賃上げ部分が、日本国内で巡らず国外へ逃げて行ってしまったと言えよう。
それが日本に何をもたらすか……円安である。純粋に資産運用をしようと励む投資家のマネーが円安を引き起こし、エネルギーや食料品を輸入に頼る日本の物価を押し上げる。結果論として、せっかく将来の安定を望んだ資産運用が現在の生活を圧迫するジレンマに陥っている。
以上は極論ではあるものの、このような合成の誤謬は大なり小なり起こっている。
バタフライ・エフェクトではないが、マネーは世界とつながっており、一つひとつの行動があらゆる面に作用することを忘れてはいけない。自分の資産を増やすことは念願だが、将来、日本経済・社会が疲弊してしまっては、増やした資産の意味がなくなる。全体最適を図り、かつ、日本を元気にするような視点を持って投資に励むこともまた重要なのである。このあたりは次回、後編で詳しく書く。
さて、足元のトランプ関税が世界経済、そして株式市場に大きなインパクトを与えている。ディールを好むトランプ氏、最終的には常識の範囲内で落ち着かせると予想しているが、しかしながら米国への悪影響は免れないだろう。
関税による米国内の物価上昇か、米国を含む世界中の企業の利益圧迫か、はたまたその両方か。ともあれ、どう転がっても米国株式の先行きには不安が残る。
いまだあふれるマネーが一時的に下値を支える可能性はあるものの、経済へのダメージがはっきりしてくれば誰も食い止められない状況となろう。公的マネーに甘えるのではなく、世界はそろそろ自助自立の健全な方向へ進むべきだ。
米国株式を中心としたインデックスファンドは今後、厳しい局面に立つと思われる。上述のような理由による成績悪化と円高によるダブルパンチだけでなく、それに伴って資金流出がはじまれば、悪化が加速する可能性もある。マネーの流れが逆回転を起こせば、ここまでの上昇もまた逆回転を起こすのだ。
さらにはその際、冒頭で述べた手数料(信託報酬)の低さが次の問題を起こすかもしれない。信託報酬はファンドの資産規模に比例するため、基準価額の急落と資金の引き出しによってファンドの資産額が縮小すると、母体である金融機関のファンド運営維持が難しくなる。資産形成を期待する個人投資家にとってはファンドの持続力も重要だ。