「若者のクルマ離れ」は過去の話? 35歳以下のクルマ好きが集まる「YOKOHAMA Car Session~若者たちのカーライフ~」の会場を訪れてみると、そう思わずにはいられなかった。第2回が、国籍も年式も多彩な約150台が集まった横浜赤レンガ倉庫の会場で、同イベントの主催者3人に話を聞いた。
「若者による若者のためのカーイベント」開催の理由
横浜赤レンガ倉庫と言えば、さまざまなイベントが行われることで知られている。石畳の広場があることから、クルマのミーティングの場となることも多い。
4月20日に開催された「YOKOHAMA Car Session~若者たちのカーライフ~」もそのひとつ。2024年3月20日に開催した第1回の反響が大きかったことから、2度目につながったようだ。
会場を訪れると、国籍も年式もさまざまな約150台のクルマたちが並んでいた。他の多くのカーイベントと違うのは、サブタイトルにもあるとおり、若者による若者のための集まりであるということ。具体的には35歳以下の若者たちが、趣味として所有する自慢のクルマたちを展示していた。
運営代表も35歳以下、しかも全員横浜育ちの3人だ。いすゞ自動車「ピアッツァ」に乗る後藤さん、シトロエン「BX」のオーナー本田さん、ホンダ「S2000」を所有する甲野さんである。
ちなみに35歳以下というのは、平成生まれという意味も含まれているという。これを20歳代としてしまうとすぐに卒業という人が多くなってしまうので、35歳というのは切りのいい数字なのではないかと話していた。
3人のうち本田さんと甲野さんは、中学生時代からの付き合いだという。どちらも小さい頃からのクルマ好きで、本田さんが幼馴染みを介して甲野さんを紹介してもらったところ、びっくりするほどの知識を持っていたので、すぐに意気投合したそうだ。
驚くのは、2人とも免許を取る前にクルマを買ってしまったということ。運転免許を取るまでは、本田さんはお父さん、甲野さんはひとつ年上の本田さんに自分のクルマを運転してもらっていたという。かなりハイレベルのクルマ好きだったことが想像できる。
「若者のクルマ離れ」への解答として
甲野さんよりひとつ年下の後藤さんは、社会人になってからマイカーを購入し、別のクルマのイベントを運営していた2人と出会った。そこで、若いクルマ好きが集まる場を作りたいという気持ちが盛り上がる。
イベント空間などのデザイン設計に関わる仕事をする後藤さんの知識もいかし、どんな申請が必要なのか、また会場の使用料がどのくらいなのかなどを調べ、「いけるかもしれない」ということで開催したのが昨年の第1回だったそうだ。
開催の理由のひとつとして彼らが挙げていたのは、「若者のクルマ離れ」という外野の目だった。
「クルマ離れということを言われていたのは、僕たちより少し上の世代です。でも、メディアは表に見えているものしか発信できないので、こちらから見せていくことが必要だと考えました。これだけクルマが好きだということを、若いうちに、3人の地元・横浜で発信していくべきだと思ったんです」(後藤さん)
同じクルマ趣味を持つ人たちが、ここに来て情報交換をすることで愛車を維持しやすくすることや、イベントを通じて友だちづくりができることも大事だと話していた。
筆者もクルマ趣味を通じて、違う業界にいる人と出会えたり、仕事でつながりのある人とクルマの話題で盛り上がったりするのは価値があると思っているけれど、若い人たちも同じような気持ちを抱いていた。
「社会人になると、仕事仲間はいても、友だちを増やしていくことは難しいと感じていますが、クルマが趣味だと、友だちの輪がどんどん広がっていく。このイベントはそういう場にもなるし、大人になっても友だちは増やせることが伝えられればいいと思っています」(甲野さん)
趣味グルマを次世代に引き継ぐ場でもある
クルマのイベントというと、参加するためには自分で申し込むのが一般的だ。しかし、YOKOHAMA Car Sessionでは、3人がつながりのある人たちに声を掛けるという方法を取っている。
後藤さんはデザインにこだわったクルマ、本田さんは実用車、甲野さんはスポーツカーと3人の好みが分かれているので、それぞれが好きなジャンルでクルマ好きを集めれば、バリエーションも自ずから多彩になるというわけだ。
イベントに出たいという人は多いので、昨年よりは少し間口を広げたそうだが、既存の運営スタッフの人数では、これ以上の規模は難しいとのこと。イベントを安全に運営していくためにも、参加者=友だちであることは大事という言葉もあった。
会場は仕切りなどが設けられているわけではないので、誰でも無料でクルマを見ることができる。運営する3人は同世代だけでなく、展示車両が現役の頃に若者だった人たちにも、会場に足を踏み入れてほしいと話していた。
「終活で趣味のクルマを手放そうかと考えているとき、家族から『早く売って』と言われて、安い価格で泣く泣く手放すよりも、ここで『こういうクルマを持っているんだけど、誰か欲しい人いないかな?』といった感じで声をかけてもらえれば、我々もうれしいですし、ウィンウィンになります。そういうお手伝いもしていきたいと思っています」(本田さん)
3人の中で最年長でもあるその本田さんは、まもなく31歳になる。つまり、この3人が「35歳以下しばり」のYOKOHAMA Car Sessionを運営できるのは、あと5年ということになる。将来について尋ねると、今回でまだ2回目で、今はブラッシュアップしていきたいという気持ちが強いものの、35歳で区切りにしたいと話していた。
でも話を聞いて、いろいろな意味で長く続いてほしいイベントだと思ったし、おそらく、彼らよりも下の世代のクルマ好きが、このムーブメントを引き継いでくれるのではないかと期待している。