新型「ヴァンキッシュ ヴォランテ」はクーペモデル「ヴァンキッシュ」と同等の性能を発揮できる? 屋根の開閉はどんな感じ? 実物を見て話を聞いてきた。
「ヴォランテ」という名前が生まれて60年
新型「ヴァンキッシュ ヴォランテ」は2024年9月にデビューしたV12エンジン(最高出力835PS)搭載のフラッグシップ クーペモデル「ヴァンキッシュ」のコンバーチブルバージョンだ。
「ヴォランテ」の名は、アストンマーティンが1965年に限定生産したオープントップの「ショート シャシー ヴォランテ」で初めて使用して以来、長きにわたり引き継いできた伝統の名称。今回のヴァンキッシュ ヴォランテは、「ヴォランテ」というアイコニックな名称の生誕60周年を記念したモデルでもある。
軽量に仕上げたファブリックルーフの開閉は、センターコンソールのメタルスイッチで操作する。半径2m以内であれば、車外のスマートキーでも操作可能だ。操作に要する時間はオープンが14秒、クローズが16秒。50km/h以下であれば走行中でも開閉できる。
格納時のスタック高は260mmに抑えた。シームレスに流れるボディのラインを損なうことなく、シート後方のトノカバー下にルーフを格納できる。クローズ時にはクーペ同様の遮音性と断熱性を発揮し、高い快適性を実現するとのことだ。
クーペ同等の性能はどうやって獲得した?
搭載するパワートレインは最高出力835PS、最大トルク1,000Nmを発揮する5.2LのV型12気筒ツインターボエンジン。リアアクスル内に配置したZF製8速ギアボックスを介して後輪を駆動する。ゼロヒャク加速は3.4秒、最高速度の345km/hはベースモデルのヴァンキッシュと変わらない。
コンバーチブルとしながらクーペ同様の性能を発揮させるため、アンダーボディには剛性を強化する部材を追加した。新しいビルシュタイン製DTXダンパーにはヴォランテの前後重量配分を考慮した独自の特注サスペンションチューニングを実施。その恩恵により、「GTモード」「スポーツモード」「スポーツ+モード」の動的特性を従来以上に差別化できたそうだ。より快適な長距離走行とより俊敏でタイトなレスポンスも獲得したという。
2シーターのインテリアは、ルーフを開けるとヴァンキッシュの血統の代名詞ともいえるV12の咆哮に包まれるという。
シートはスポーツプラスシートが標準で、カーボンファイバー製パフォーマンスシートをオプションで用意する。ダッシュとコンソールには次世代インフォテインメントシステムを搭載。10.25インチのデジタルTFTドライバー・ディプレイとオンライン接続機能を持つ10.25インチのピュアブラック・タッチスクリーンを採用するとともに、各部に同社のオーディオパートナーであるBowers&Wilkins社の15個のスピーカーを配置した。ヴォランテ専用のチューニングを施したダブルアンプのサラウンドサウンドシステムは、聞く人の心を虜にするサウンド体験を提供するラグジュアリーさを誇る、というのがアストンマーティンの説明だ。
アストンマーティンのユーザーは2グループに分かれる?
今回の展示モデルは、アストンマーティンのカスタマイズサービス「Q by Aston Martin」の鮮やかな「モンフェス・ブルー」のボディにブラックのファブリックルーフを装着していた。発表会に登壇したヘッド・オブ・Q・スペシャルプロジェクトセールスのサム・ベネッツ氏によれば、「Qスペシャルのカラーは今回のブルーをはじめ、お客様のリクエストに応じてどんな色でもカスタマイズできます。例えば『今日のネイルの色に合わせたい』とか、大事にしているシューズの色、大好きなペットの色など、どんなものにでもできるだけの力を発揮して対応します。コアカラーは52色ですが、現在でも4,000色以上のカラーを用意できます」とのことだ。
インテリアも含め、大きなモニター画面を見て、光線の状態を変えながら色を確認できるので、実車を前にしたようなシチュエーションでスペシャルな1台を作り上げる体験ができるのだ。
ヴァンキッシュはクーペとコンバーチブルを同時開発したというが、世界最速のオープンモデルというのは当初の目標ではなく、ユーザーのリクエストを実現していったことが最高の性能という結果につながったそうだ。べネッツさんは「面白いのは、お客様がそれぞれ全く違う2つのグループに分かれるという点です。例えば私はホンダ『S2000』を持っていて、『クルマはオープントップじゃないと嫌』というところがありますが、一方で私の母親のように、『クルマには屋根がないと絶対にダメ』という人もいる。こんな風にお客様も2つのタイプに分かれているんです」と面白い話を披露してくれた。
新型ヴァンキッシュ ヴォランテの最初の納車は2025年第3四半期を予定している。年間生産台数はヴァンキッシュを含めて1,000台以下ということで、現在は台数限定で注文を受け付けているという。価格は非公開となっている。