新NISAの開始もあり、ますます注目を浴びている「投資」。分散投資がセオリーとされる中、エンジニア・起業家・投資家の中島聡さんは、独自の「メタトレンド投資」でApple株90倍、NVIDIA株30倍の成果を残してきました。なぜ中島さんは2004年にApple株を買えたのでしょうか。
『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)を上梓した中島さんに、人生をもっと面白くする投資論とキャリア観を聞きました。
10倍、100倍も夢じゃない!? メタトレンド投資
――中島さまが提唱・実践する「メタトレンド投資」とは、どういった投資手法なのでしょうか?
「メタトレンド」は「メタ(高次の)」と「トレンド(流れ)」を組み合わせた造語です。「メタトレンド投資」とは、テクノロジーの飛躍的な進歩や社会構造の変化などが生み出す“時代の巨大なうねり”を早い段階でとらえ、しかるべき企業に投資し、長期的な成長を狙う手法です。例えば、Apple やAmazon のように世界経済をリードする企業の個別株を、まだ株価が割安な段階で購入すれば、その後10倍、100倍に化ける可能性があります。
――中島さまは20年以上にわたってメタトレンド投資を続けられているそうですね。世の中にはさまざまな投資手法がある中、なぜメタトレンド投資を実践されているのでしょうか?
プロのアナリストはテクニカル分析やファンダメンタルズ分析に基づいた投資を行っていますが、これらは素人向けとは言えません。テクニカル分析は、過去の価格変動しか材料にできないので、未来を織りこむことができませんし、そもそも不確定要素の多い株価の値動きを予測するのは“無理ゲー”です。
ファンダメンタルズは「すでにわかっている数字」に頼るので、アナリストが分析を出す頃には株価に反映されてしまっており、素人がプロの投資家よりも良い結果を残すことはできません。
ところが、メタトレンド投資なら、一般人の強みを生かすことができます。「これからはスマートフォンの時代が来る」「電気自動車の時代が来る」など、時代のうねりが来たときに、早い段階で個別株に投資をしておくのです。iPhoneのローンチで「世の中が変わる! 」と思ったとしても、半年後、1年後を見ているアナリストは10年後の不確かな未来への期待を業績に織り込むことはできません。
しかし、一般消費者である私たちは職業上のしがらみがないので、スティーブ・ジョブズのプレゼンを見て「これはすごい! 成功するに違いない! 」と感じたら、その企業に投資ができます。
家族が日用品をしょっちゅうAmazonで買うようになったなど、消費者だからこそ見えることもあります。いち消費者としてライフスタイルの変化を経験したときに、アナリストたちが織り込めない未来を織り込んで先に投資ができる。それがメタトレンド投資の醍醐味です。
個別株投資は"社会参加の一環"として楽しむ
――一般的な投資のセオリーとしては「卵はひとつのカゴに盛るな」と「分散投資」が推奨されることが多いですが、それとは違った考え方ですよね。
確かに、できるだけ手間をかけずに投資がしたいというなら投資信託やETFもひとつの選択です。ですが、私が個別株投資にこだわっているのは「個別企業の株を持つことで社会に参加する」という姿勢が大事だと考えているからです。
個別株を持つということは、その会社を“推す”こと。私は単に将来伸びそうな企業に投資しているわけではなく、その会社の商品やサービスが気に入っていたり、リーダーのビジョンが好きだったり、自分なりに気に入った会社に投資をしています。世の中の大きな流れを見て「この会社なら成長しそう」「この会社なら応援したい」と思う会社の株を買っているのです。
「これからは電気自動車の時代だからテスラの株を買おう」と投資すれば、電気自動車関連のニュースが気になるようになりますし、会社のことも、社会のことも前のめりに知ろうとするようになって、社会に参加している感覚が味わえます。これって非常に健全な投資のあり方ですよね。好きな会社の株を持って、一緒に成功していくプロセスが楽しいので、個別株投資が好きなんですね。
――投資先はどのようにして選んでいるのでしょうか? 「好きな商品やサービスがある」以外で、なにか判断基準はありますか?
尖ったリーダーがいる会社ではないと、中長期で株価が10倍、100倍に化けるような成長は見込めません。「売上を10%伸ばす」といったレベルではなく、経営トップには大きなビジョンを抱えていてほしいですね。だから私は「これからは○○の時代が来るし、そうあるべき。私がそれをやります」という趣旨の発言をしてくれる経営者が好きで、経営トップが大風呂敷を広げたときに感銘を受けることが多いです。
例えばTesla CEOのイーロン・マスク氏は「2030年までに年間2000万台のクルマを売る」という目標を公言していました。アナリストなら無視するしかないくらいの大きな数字であり、常識はずれとも言える宣言です。
詐欺師とカリスマ経営者は紙一重なので、大風呂敷を広げた経営者全員を信じるわけではありません。ですが、リーダーシップを持つ人が世の中を変えていこうという姿勢を見せたときは注目し、「信じられる」と思ったらその会社に投資するということをしばしばしています。