悩みや迷いが激減する「ときめきセンサー」の磨き方
――ご著書の中で「ときめきは人生における最重要の指標」だとおっしゃっています。ときめきセンサーを磨くために、川原さんが大事にされていることを教えてください。
違和感に気づける自分でいることです。もう少しわかりやすく言うと、嫌だなと思うことを見逃さないことです。
人付き合いや、食べ物の選択、着るものなど、なんでも、少しでも違和感を覚えたら立ち止まって考える。ちゃんと心に聞いて、何が嫌なのかに向き合い、理解する。その上で、その「嫌」が許容できるレベルなら受け取り、許容できないなら取り去る。
それをサボらずに一つひとつやっていくことで「自分が何にときめくのか」というときめきセンサーが磨かれていきます。そうすれば、自分の価値観の輪郭もハッキリしてくるので、悩みや迷いが劇的に減ります。
――「自由とは自分で選んだほどよいサイズの制約」という言葉に共感・納得しました。ただ、自分にとっての「ほどよいサイズ」を知るのは必ずしも容易ではないと思います。見極めるコツはありますか?
今のところうまくいっているのは、一度行き過ぎた自由を体験してみて、気持ち悪さを感じたら戻ることです。人それぞれ「ここまで自由だとなんかソワソワするな」というラインがあると思います。
独立当初、1日24時間が自分のコントロール下にあり、下手をすると1日中ずっとダラダラできてしまうことに呆然とした経験があります。コロナ禍で似たような感覚を味わった人も多いかもしれません。思いっきり自由な状態を経験してみたら、「これぐらいの縛りがあったほうが自分は充実感を得られるな」というのがわかってきます。
ちょっといいレストランに行くときに、カジュアルすぎる格好だとむしろ居心地が悪いという感覚に似ているかもしれませんね。環境とのバランスで、どのくらいの自由があれば心地よさを感じるのか、自分が欲している自由のサイズを自ら探しに行く必要があります。
――ときめきセンサーの磨き方の話に通じるものがあります。物事や環境に対する自分の感覚や感情に意識を向けることが大事ということですね。
そう、答えは外ではなく自分の中にあるのです。それなのに、私たちはこれまで外からの価値観をもとに生きるトレーニングしかしてきていないので「自分の中にある答えを見つける」ことに関しては、戦闘力ゼロ同然なんです。だからこそ、まずは捨てるところからスタートすれば、1歩、あるいは0.5歩分の変化が起こせるのではないでしょうか。
"捨てる"ことは自由になるための人生修行
――"捨てる"という行為は、モノやコトに対する自分の感覚・価値観と向き合うことですよね。
はい。面白いことにすべてが自分への「問い」になります。いま自分が持っているものは、過去に「買う」か「もらう」かの意思決定をしたからそこにあるわけです。つまり、家の中にあるものは、過去の意思決定の積み重ねであり、過去の自分であるとも言えます。 それを今の自分がどう感じるか、再度今の価値観で検討し直す行為が片づけです。私も最初は「たかが片づけ」と思っていましたが、片づけの本質は人生に大きなインパクトをもたらす、自分の価値観と向き合う修行なんです。
1人あたり1万個、多い人なら2万個の持ち物があると言われています。ですから、持ち物の一つひとつを触って、感じて、残すか手放す決断を積み重ねていくと、否が応でも1万回考える機会が作られることになるのです。
1万回もの意思決定のトレーニングで自分の価値観が明確になると「自分はなにを大切にしたいのか」「どう生きたいのか」への確信が強まっていきます。「自分で選べる」ということは「自由になる」ことと同義です。なにを選び、なにを手放すか、取捨選択を自分の意思で行い、自分だけの「自由のあり方」をつくり上げることで、自分らしい生き方ができるようになるのです。
『人生は、捨て。 自由に生きるための47の秘訣』(1,760円/川原卓巳 著/徳間書店 刊)
タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出された「こんまり(KonMari)」こと、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さん。彼女を世界に押し上げた仕掛け人が、名プロデューサーの川原卓巳さんです。本書ではプロデューサー・川原さんが、あなたに"自由"を授けます。自由のカギを握るのは「捨てる」こと。過剰なモノや情報から解放されることです。そのための方法をあますところなくお伝えします。