この記事では、マネジメント、コミュニケーション研修講師として、階層別教育、プレゼンテーション、話し方などの分野で年間120回以上の講演を行っている濱田秀彦氏の新著『仕事で伝えることになったら読む本』(アルク刊)より、一部を抜粋して紹介します。今回のテーマは「報告の価値を高めるベストタイミングの見分け方」。
報告の価値を高めるベストタイミングの見分け方
こまめな報告を求める上司に対し、報告の頻度を増やすのは考えもの。こちらの手間が増えるからです。とはいえ、上司の要求を無視するわけにもいかず。悩ましいところですが、この問題は報告のタイミングに注目することで解決できます。
では、どんなタイミングで報告をすればよいのか。まずは、次の問題の答えを考えてみてください。
今は1月の初旬。あなたは期末の3月末までに仕上げるプロジェクトを上司から任されました。残りの3カ月弱の間で、1回途中経過を報告するとしたら、どのタイミングでするのがよいでしょうか?
セミナーでこの問題を出すと、多くの参加者は真ん中あたりの「2月の中旬から下旬あたり」と答えます。
それは間違いではありませんが、もっと効果的なタイミングがあります。それは「上司が参加する管理職会議の3日前」です。
「そんな答え、わかるはずないよ」と思った方。すみません。引っかけ問題でした。ただ、このことは報告のタイミングを考える重要な視点になります。
上司も上席者に対し、チームの動きを報告しなくてはなりません。管理職は経営陣に報告する場があります。それが管理職の定例会議です。この会議は、多い会社で月1回、少ない会社でも3カ月に1回ほどのペースで行われます。
その場で、チームの動きを報告するためには、自チームのプロジェクトがどうなっているかを把握する必要があります。そのため、会議の前になるとメンバーを呼び「あれはどうなっているか」「これはどうなっているか」とネタの仕込みをするわけです。
それがわかっているならば、管理職会議の直前に「現在進めているプロジェクトの進捗報告をしたいのですが」と切り出せばよいのです。上司は「ちょうど聞こうと思っていたんだ」と言いつつ、心の中で「間のいい部下」と評価します。
これが、会議のあまりにも前だと、報告しても、聞き流されてしまうかもしれません。聞き流されると、後になって「聞いてない」ということになってしまう可能性もあります。逆に、会議が終わってからでは、「もっと早く言ってくれ」ということになります。早すぎても遅すぎてもダメ。タイミングを外してしまうと、報告の回数を重ねても効果が薄いわけです。
一方、上司の会議日程を把握しておき、その直前に報告をすれば、回数が少なくても上司の満足度は上がります。その上、自分の株が上がるのですから、やってみる価値があります。
このような経過報告は、「中間報告」と言われるものです。ここで、報告のイメージを「結果を伝えること」と思っている方は、修正してください。実は、結果報告よりも、その前の中間報告のほうが、相手は喜びます。なぜなら、中間報告に応じて、手が打てるからです。結果報告だけでは、それが悪い結果の場合、反省会しかできません。逆に中間時点で報告があれば、その時点で状況に応じた対策ができます。それに、結果報告しかしないと「あれはどうなっているのだろう......」と心配され、「どうなっている?」と聞かれてしまいます。
報告の本質は「発注者への情報提供サービス」です。サービスレベルを上げるには、中間報告は欠かせません。
かつて私は二人のクリエイターにデザインの仕事を発注していたことがあります。二人とも腕は確かです。ただ、一人は中間報告をしてくれ、もう一人はしてくれません。どちらも納期は守ってくれますが、中間報告をしてくれないクリエイターに対しては、ときどき「大丈夫かな」と心配になりました。結果的に私は、中間報告をしてくれるクリエイターに仕事を多く出すようになりました。
中間報告が、次の仕事の発注につながる、「競争力」の1つになったわけです。
ジャストタイミングで中間報告、ぜひやってみてください。あなたが思う以上に効果があります。
『仕事で伝えることになったら読む本』(濱田 秀彦/アルク)
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