液晶ディスプレイのトップブランド「SAMSUNG」が語る今後の世界観
「SAMSUNG」の存在は、PCユーザーのみならず、あらゆるジャンルにおいて大きな影響を与えている。液晶ディスプレイは、日本だけでなく世界全体で、当たり前のように見かける存在になった。もちろん、グローバルでのトップシェアブランドとして、その礎を創ってきたのが、サムスンであり、彼らの存在なくして今日の液晶ディスプレイ市場はあり得なかったといえる。
今回は、そんなサムスンの今後の製品展開を含め、「液晶ディスプレイ」がどのような影響を私たちに与えるのか、日本サムスンDMAチームの宮田隆氏(以降、宮田氏)、文聡東氏(以降、文氏)に話を伺ってきたので紹介しよう。
液晶ディスプレイのトップブランド「SAMSUNG」
──世界規模で見て、液晶ディスプレイ市場の中で「SAMSUNG」ブランドはとても幅広く受け入れられているように感じますが、サムスンとしての”強み”はどこにあるのでしょう?
宮田氏:サムスングループの中核企業「サムスン電子」の中でも、ディスプレイ事業は長い歴史があります。PC用ディスプレイの製造・販売に関しては、20年近くビジネスを継続しております。現在に至っては、年間3000万台近い生産実績があり、一般的なPCベンダーが作るディスプレイを上回る台数を販売させていただいています。
サムスンはPCブランドではありませんが、ディスプレイをたくさん販売しています。それを可能にしている理由のひとつに、サムスンでは自社工場にこだわりを持って製造を続けている点が挙げられます。自社工場では高度なSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)が実施されていて、かなりきめ細かいフォーキャストで、実際の受注、在庫等が管理されているのです。こうした取り組みにより、製造現場では非常に効率よく生産販売が行われています。
日本向け製品の生産拠点は、韓国の水原(スウォン)工場、中国の天津工場、このほかマレーシアの工場などがあります。各地域ごとに一番近い供給拠点を設けていて、迅速に製品を届けられるというのも特長です。
さらにサムスンならではという部分では、液晶パネルモジュールも自社で生産しているので、垂直統合型の設計製造ができる体制が整っています。液晶パネルモジュールもそうですが、グループ会社である「サムスンコーニング精密ガラス」が液晶用のガラスパネルを作っていますし、「サムスン電機」では電源関係の部品などを生産しています。要するに、企業グループによって、優れたパーツを内製できる体制が整っているというわけです。
こうした特長を備えた企業体ですから、液晶ディスプレイの分野でも、PCベンダーを上回る生産能力や高い品質を保つことが可能なのです。
──「SAMSUNG」ブランドの液晶ディスプレイは、シンプルな製品から企業向けの大型液晶パネルまで、非常に幅広いラインアップがありますが、どのようなテーマを持って開発や市場投入を行っているのでしょう?
宮田氏:PCの価格もずいぶん値が崩れ、その流れと共に「液晶ディスプレイ」も安くなりました。実際の話、10年前に比べて1/20程度の価格で取引されているのではないでしょうか。いわゆる「コモディティ化」というものですが、デジタル家電全般においてこの流れが進んでいます。ベンダーの中には「やってられない」という声も聞こえてくる状況です。
しかし、サムスンとしてはそうではなく、圧倒的なコモディティ化の中でも競争力を維持して、お客様にきちんと商品をお届けして、我々としても収益を上げながら事業を続けていくという体制を整えています。
その一方で、コモディティ化された中だけで事業を展開するのではなく、その潮流とは別に新しい製品開発にも力を入れています。「差別化された」あるいは「サムスンならでは」といったコンセプトを持つ製品を市場に投入し続けるのも、サムスンのスタンスです。
これを私は「二刀流」と呼んでいますが、どちらか一方ではなく、コモディティ化の中での事業も、付加価値を持った製品を提供する事業も、両方で全力を尽くす。これがサムスンとしての考え方だと思います。
──「二刀流戦略」といったところですね。
宮田氏:日本企業の代表的な事例として、「富士フイルム株式会社」は、「写るんです」という製品を市場に送り出し、大成功を収めました。発売の当初より、「使い捨てカメラ」としてではなく、「レンズ付きフィルム」という名称でセールスを行っていたことは有名です。流通経路も「カメラ」のそれではなく、例えば"観光地にあるようなお土産屋さん"といった、フィルムが売られているチャネルを使って販売されました。必要な時と場所でカメラが安価に買える。ビジネスとしては大きなチャレンジだったと思います。
まだ予定ではあるのですが、近々シンクライアントの商品を市場に投入します(注:11月24日にリリースされました。関連記事はこちらから)。これも変わったコンセプトのもので、PCベンダーがシンクライアントをやるのではなくて、ディスプレイベンダーがその延長線上で「ネットワークモニタ」という呼び名でリリースする製品です。あくまでもディスプレイが軸足にあって、そこから広げていく中で何ができるか、という考え方で製品を展開させていきます。
我々は、PCを製造・販売していた事業部ではなく、液晶ディスプレイを追求し続けてきたビジネスユニットです。その視点で新しい発想から商品を作っていく。法人向けのデジタルサイネージ分野での取り組みはもちろん、PC用の液晶ディスプレイの世界でも3面/6面マルチディスプレイ製品をはじめ、PCベンダーができないようなチャレンジングな製品をリリースしています。来年に向けてこうした新しい価値を提供する製品にも力を入れていくことになるかと思います。
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