数十億円、数百億円といった資産を保有する富裕層。巨額の資産をプライベートバンクに預けている富裕層も多いようです。一般人にはあまりなじみのないプライベートバンクとは、どのような金融機関なのでしょうか。今回はプライベートバンキングの概要、ADV RATINGSが発表した世界のプライベートバンク残高のランキングを解説します。
そもそもプライベートバンクとは?
プライベートバンクはスイス発祥の金融機関で、富裕層を対象に資産管理を手伝う金融サービスを提供しています。ほとんどの場合、100万米ドル以上の資産の保有者のみがサービス対象です。
特にスイスのプライベートバンクは、他国からの情報提供も拒否するほどの強固な姿勢で知られており、「秘密銀行」などと呼ばれることもあります。
プライベートバンクは顧客の資産残高から手数料を取ることで収益を得ており、手数料は年間で資産の0.3%~0.5%ほどが相場とされています。
一般的な銀行との違い
一般的な銀行は、集めた資金を他の顧客や企業へ貸し出します。銀行預金は原則としていつでも引き出し可能で、何もせずに残高が減ることもありませんが、預けたお金が間接的な形で他で使われます。
これに対し、プライベートバンクでは許可なしに貸し出したり勝手に運用したりすることはありません。
証券会社との違い
証券会社は投資商品の売買を行いますが、プライベートバンクはそれだけではなく、税務相談・相続計画といった幅広い領域に対応します。投資商品に関して、証券会社は一般的な商品を取り扱うのに対し、プライベートバンクは顧客に合わせてカスタマイズされたサービスを提供するのが特徴です。
また、証券会社は通常の場合海外の投資商品を紹介しませんが、プライベートバンクは海外の投資商品も紹介できます。
日本におけるプライベートバンク
日本でも、銀行や証券会社がプライベートバンク部門を立ち上げて運営しています。海外のプライベートバンクは日本の税制には対応しないケースが多いですが、日本のプライベートバンクは対応可能なところもあります。
相続税などについて相談するなら、国内のプライベートバンクのほうが良いと評価する意見もあります。
世界のプライベートバンク運用残高ランキング
ADV RATINGSによると、2023年8月27日時点の運用残高ランキングは1位がUBSグローバルウェルスマネジメント(スイス)、次いでエドワード・ジョーンズ(アメリカ)、クレディスイス(スイス)、モルガン・スタンレー・ウェルスマネジメント(アメリカ)、バンク・オブ・アメリカ・プライベート・バンキング(アメリカ)と続いています。
ランキングの上位を占めているのは、スイスやアメリカのプライベートバンクです。モルガン・スタンレーやバンク・オブ・アメリカなど、一般的にも知られている金融機関もプライベートバンク部門を運営しています。
ランキング上位のプライベートバンク
ここからは、上位に入ったプライベートバンクを個別に見ていきましょう。
UBSグローバルウェルスマネジメント(スイス)
1位のUBSは2兆ドル以上と、2位以下を大きく引き離す運用残高です。150年以上の歴史を持つ銀行で、世界50以上の国や市場で金融サービスを提供しています。日本でも1960年代半ばに拠点を開設し、60年以上に渡って運営されています。
世界最大級のプライベートバンクであり、盤石な顧客基盤を築いていることから、外部機関からも高い評価を得ている銀行です。
エドワード・ジョーンズ(アメリカ)
エドワード・ジョーンズはアメリカの富裕層向けの金融機関で、長期的に資産を築いていきたい富裕層に支持されています。投機的な商品ではなく、安定的に運用することを重視する方針です。
同社のもう1つの特徴は、アドバイザー制を採用していること。各地方に1人、アドバイザーを設置して地域密着型のサービスを展開しています。
クレディスイス(スイス)
3位のクレディスイスは、UBSと並びスイスを代表する銀行でした。2023年に信用不安によって経営危機に陥り、株価が急落しました。
スイス当局を始めとした世界の規制当局の尽力もあり、2024年にクレディスイスは前述のUBSグループに買収され、世界的な金融危機は回避されました。