日本人に人気の移住先として14年連続1位にランクインしているというマレーシア(ロングステイ財団調べ『ロングステイ希望国・地域2023』より)。移住先として圧倒的な支持を集める理由はいったい何なのだろうか?
今回は、マレーシアへの移住支援・海外不動産投資コンサルティング会社のFSIGMA株式会社の山本聖氏に、マレーシアの海外移住事情について伺った。
マレーシアは"5点満点中、オール4点"の国
━━移住先として、マレーシアがここまで日本人に支持されている理由は何でしょうか?
マレーシアは、気候や治安、医療といったあらゆるものの水準がそこそこ高い、"5点満点中、オール4点"といったような国です。
首都のクアラルンプールは周りを山に囲まれて風通しがよく、東南アジアの他の都市に比べると比較的涼しい地域です。治安に関しても韓国やタイよりも安全というデータが出ています。
また、マレーシア政府が医療発展を推進してきたこともあり、幹細胞治療や不妊治療もかなり進歩しています。中国の富裕層たちが医療ツーリズムとしてマレーシアを訪れるほどです。
教育スタイルと税制が富裕層には魅力
━━他に富裕層の方がマレーシアを移住先として選ぶ理由は何でしょうか?
富裕層がマレーシアに移住してくる理由は、教育移住と節税目的の大きく2つです。
マレーシアはインターナショナルスクールが多く、首都のクアラルンプールだけでも50校以上あります。さらに教育のスタイルも豊富で、イギリス式から始まりアメリカ式やカナダ式、オーストラリア式にバカロレアなど、様々な教育スタイルから選べます。学校で英語や中国語を学び、家庭で日本語を話すトリリンガルになれる、という点もマレーシアならではの教育環境です。
また日本と比べると税制も比較的寛容で、富裕層にとっては3つの税制においてメリットがあります。
まず、株式といった金融商品や暗号資産などに対する所得課税が原則ありません。資産運用をしている富裕層の方は多いので、やはり税金がかからないというのは重要なポイントです。
さらに日本に居住していると口座開設ができない、シンガポールのプライベートバンクの口座を開設できます。そのため日本では買えない金融商品が購入できて、運用の幅を広げたり効率を上げたりできます。
次に経営者の富裕層にとっては、マレーシア内の経済特区・ラブアン島で簡単に低い法人税率で法人を設立できるというメリットがあります。ラブアン法人の法人税率は3%(経済的実体要件を満たす場合)で、日本の法人実効税率30%と比較するとかなりの額を抑えられます。
また、3%を法人税として納めた後の残りの利益は、個人の株主配当として受け取れば、原則非課税対象にできます。そのため、日本ですでに安定した経営母体や仕組みを持っている現役のビジネスマンは、このラブアン法人を使って移住する方が多いです。
そしてマレーシアは、贈与税と相続税もかかりません。日本側の税制で、「相続人と被相続人ともに国外に10年以上住み続けないと、贈与税と相続税の課税対象となる」というものがあります。マレーシアに移住して10年以上経過すれば、贈与税と相続税の課税がなくなるので、納税金額を抑えて資産を守れます。
プール付きの"タワマン"に月5万で住める!? 移住者の暮らしとは
━━移住者の方はどんな場所に住んでいるのでしょうか?
大きく分けて、郊外と中心地に分かれます。郊外には学校が多いため教育移住の方が、ビジネス目的で単身の方やまだお子様のいらっしゃらない方は、主に中心地に住んでいらっしゃいます。
郊外の居住地として代表的なのが、首都のクアラルンプールから車で20分ほどの距離にあるモントキアラです。共用プールやジム、大きな公園などが敷地内に付いた高層コンドミニアムに暮らしている方が多いです。高層コンドミニアムとは、日本で言うところのタワーマンションですね。モントキアラでは、1LDK・約5万円~で借りることができます。
中心地では、KLCCやブキ・ビンタンが代表的なエリアになります。ここでは、『リッツカールトンレジデンス』など、高級ホテルが運営するサービスアパートメントを利用している方が多いです。家賃の一例をあげると、100平米の1LDKで月額35万円ほど。日本で同じクオリティの部屋を借りようとしたら、その3倍ほどはかかるのではないでしょうか。
━━家賃と同様、生活費もあまりかからないのでしょうか?
実はそうではないのです。世界全体で物価高になっていることもあり、東南アジアでも生活費は日本に住んでいる場合とあまり変わらなかったりします。
━━生活費は日本とそこまで変わらないのに、家賃だけが安いのはなぜですか?
マレーシアは、国土が広いものの人口は3,350万人ほどしかおらず、人口密度が他の東南アジアに比べると低いです。そのため1人当たりが使える土地が広く、不動産単価が抑えられるという背景があります。
不動産価格の伸びは鈍化傾向、局所的に将来性が見込めるエリアも
━━マレーシアの不動産、投資対象としてはどうでしょうか?
不動産投資の側面でみると、正直成長は鈍化傾向にあります。現在マレーシアはかなり経済成長を遂げていて、2020年代の後半には先進国並みの所得水準に達すると言われています。今後は不動産の利回りもかなり安定する傾向があります。
そのため、ドバイのように積極的に投資をしていくような国ではないかと。ただ、住むという点では適しているので、人気地域や中心地の綺麗な高級物件をしっかり選んで買えば、不動産価格も伸びていくと予測できます。
マレーシア内でも注目されている地域はあって、新しい経済特区のTRXという地区や、デサパークシティという高級住宅地域は不動産価格が値上がりしています。前者は世界の金融系企業のオフィスが集まっており、後者はイスラム教のマレーシアで唯一犬の散歩が許可されている特別地区のため、価格の高騰が見込めます。
FSIGMA株式会社 海外移住コンサルタント 山本 聖
1994年横浜生まれ。慶應義塾大学法学部卒。学生時代に起業し、学生向けビジネススクールやフィリピン不動産販売事業、ワインの輸入販売事業などを立ち上げ、事業を一部売却。2021年にマレーシアのクアラルンプールへ移住。現在はマレーシアでの法人設立やビザ取得などの移住サポート事業やマレーシアへの医療ツーリズム(臍帯幹細胞点滴など)事業を運営している。
会社HP:https://fsigma-co.com/ YouTube:https://www.youtube.com/@seiyamamoto/