インターネット検索では、結果として日本語以外の言語のページが見つかることがある。あるいは、日本語で検索してもそれらしいページが見当たらない場合、英語で検索してみることもある。そういうわけで、外国語とは、なんらかの形で付き合う必要がある。そんなときに必要になるのが「翻訳」だ。

筆者は語学には堪能ではないため、翻訳は、ほとんどインターネットの自動翻訳サービスに頼りっぱなしである。どうしても正確に訳さねばならないときには、辞書を引くこともある。

もちろん、普通にWebページを見る場合にも、翻訳サービスを使う。しかし、こうしたインターネット翻訳には、誤訳もつきもの。5年ぐらい前の話だが「Get Smart Phone」という英文が「それ行けスマートフォン」と訳されていたことがあった。米国のテレビ番組「Get Smart」は、日本で「それ行けスマート」というタイトルで放映されていたので、AIの学習が、それに引っ張られたのであろう。しかも番組に登場する靴が電話になる「Shoe Phone」というのが有名(英語版Wikipediaに項目がある)で、いまでも「get smart phone」でGoogle検索すると、その画像が表示される。

あるいは、英文の意味とはほぼ真逆な日本語になってしまう自動翻訳もある。日本語は、最後に否定するので、否定と肯定を含むような英文、「~することも、~しないこともできる」といった文章が、「~することも~することもできない」といった文章にすり替わってしまう。たとえば、Microsoftの開発者向けサイトには、

WM_SETREDRAWメッセージをウィンドウに送信して、そのウィンドウの変更を再描画したり、そのウィンドウの変更を再描画したりすることはできません

WM_SETREDRAW message (Winuser.h) - Win32 apps | Microsoft Docsより
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/win32/gdi/wm-setredraw

という文章がある。だったらWM_SETREDRAWってなんなのよ、という感じだ。ここまで来ると、誰でも間違いに気がつく。原文は

You send the WM_SETREDRAW message to a window to allow changes in that window to be redrawn, or to prevent changes in that window from being redrawn.

大意: 再描画によるウィンドウの更新を許可または禁止するには、WM_SETREDRAWメッセージをウィンドウに送信します

である。そのほかにも、さまざまなところで英文とは真逆の表記を見た記憶が何回かある。Win32とはいえ翻訳をまともに受け取ってプログラムを書くと大変なことになりそうな感じがある。そういうわけで、自動翻訳は「千三つ」とはいわないまでも、「話半分」に受け止めておくのが無難だ。

効率が上がるのも事実

しかし、筆者は、仕事の大半をクラウド上で行っているため、インターネット翻訳を使うことで効率が上がるのも事実。ローカルの翻訳アプリケーションとは違い、テキストのコピー、貼り付けなしに翻訳できるのはありがたい。

Google翻訳では、ページ全体か、選択範囲を翻訳できる。しかし、ページ全体を訳してしまうと、訳文がとてつもなくおかしくない限り間違いに気がつかないこともある。細かい部分は、原文と比較しながら訳を確認したい。ところが、Google翻訳では、翻訳可能な選択範囲が狭く250文字程度。選択範囲が長いと翻訳ボタンが表示されないことがあり、段落全体を訳せないことがある。

筆者は、こうした問題に対処するため、Chrome拡張である「ImTranslator」を使っている(写真01)。

Chrome ウェブストア ImTranslator
https://chrome.google.com/webstore/detail/imtranslator-translator-d/noaijdpnepcgjemiklgfkcfbkokogabh?hl=ja

  • Get Smart! 自動翻訳

    写真01: ImTranslatorのオプション設定画面。翻訳エンジンはGoogleやMicrosoftのものだが、インライン、ポップアップなどさまざまな形式で翻訳を提示でき、細かく設定が可能。Chromeのほか新しいEdgeにも組み込み可能

このChrome拡張は、選択範囲をポップアップウィンドウに表示することができ、翻訳をクリップボードにコピーすることもできる。細かい設定が可能で、筆者は、範囲を選択するとボタンを表示させるようにしているが、範囲選択で自動的に翻訳させることも可能。範囲を選択して翻訳という作業の使い勝手は、Google翻訳やMicrosoft翻訳そのものより格段によくなる。ポップアップウィンドウなので、元のページは原文のままで移動もしない。以前、本連載で紹介したPDF表示サービスであるKamiでも、選択範囲を翻訳し、注釈としてPDFに貼り付けることも可能だ。

窓辺の小石(9) PDFだけど「ファイル」じゃない
https://news.mynavi.jp/article/pebble_in_the_window-9/

とはいえ、自動翻訳エンジンはGoogleやMicrosoftのものなので、ちょっとでも怪しいと思ったら、DeepLなどの他の翻訳エンジンで確認してみることは必要だろう。

Monty Pythonという1970年台の英国のテレビ番組には、デタラメなハンガリー語慣用句集でトラブルになる話(Dirty Hungarian Phrasebook)があった。奇しくもスパムメールの語源となった「スケッチ」(俗に言うコント)のある回だ。そのうちに誰もが原文のページを見ることなく自動翻訳されたWebページだけを見るのが当たり前になるだろうから、翻訳が原因でトラブルにならないことを祈るばかりだ。