動画共有サイトをはじめ、PC上での動画編集もずいぶんと身近になりましたが、なんだか難しそうというイメージを持っている人もまだ多いのではないでしょうか。実は、Windowsには標準で「Windows ムービー メーカー」という動画編集用のソフトが用意されていて、誰でもすぐに動画編集を楽しめます。

使い方も簡単で、「タイムライン」と呼ばれる再生時間を帯状のグラフとして表したものの上に、デジカメで撮った写真や動画を並べていき、必要に応じてBGM用の音声ファイルや、各種映像効果、タイトル字幕などを加えるだけで、オリジナルの動画を作成可能です。

「trakAxPC」

しかし「Windows ムービー メーカー」は、初心者でも分かりやすい反面、タイムラインが動画用と音声用の各1トラック(1本)ずつしか用意されていないため、BGMにかぶせてナレーションや効果音を入れて、それぞれの音量やタイミングを細かくコントロールしたりするのにはあまり向いていません。こんなときに活用したいのが、今回紹介する動画 / 音声編集ソフトの「trakAxPC」です。

名称 trakAxPC
バージョン 2.0.108
作者 HighAndes Ltd.
種別 フリーウェア
動作環境 Windows XP / Vista

簡単操作で高度な編集が可能

trakAxPCは、「ループシーケンサ」と呼ばれる音楽制作ソフトに動画編集機能を加えたソフトです。ループシーケンサとは、ループ再生可能な短いフレーズの音楽データを切り貼りすることで曲を作成するソフトの総称で、「Windows ムービー メーカー」の音楽版と考えてもらうと分かりやすいでしょう。逆に言えば、trakAxPCは、「Windows ムービー メーカー」の音楽編集機能を強化したソフトと考えることもできます。基本的な操作方法も非常に似ていて、選択した動画・静止画・音声データを、画面中央のタイムラインにドラッグ & ドロップすることで動画や音楽を作成していきます。今回は、このtrakAxPCの動画関連機能を中心に使い方や特徴を紹介します。

「trakAxPC」はループシーケンサに動画編集機能を追加したソフト。Windows標準の「Windows ムービー メーカー」と異なり、複数の音声・動画トラックを編集可能だ。BGMやナレーションなどパートごとに編集できるので、細かなタイミング調整なども行いやすい

まずは日本語化してみよう

trakAxPCは、海外製のソフトなので表示は全て英語です。しかし、有志の方が作成された日本語化ファイルを利用することで、表示を日本語に変更できます。日本語化を行うと、画面右の「Prompt」画面に表示される、マウスカーソルを利用した簡易ヘルプ機能もしっかりと日本語で表示されるのも初心者にはうれしいところです。trakAx@wikiなどからダウンロードできます。

多彩なファイル形式に対応し、動画共有サイトへの投稿も簡単

trakAxPCは、多彩なファイル形式に対応しているのも特徴です。WMV / ASF / MPEG / AVI形式の動画データ、BMP / JPEG / JFIF / GIF / TIFF / PNG / ICO形式の静止画データ、WAV / MP3 / OGG / WMA形式の音声データ、音楽CDやWebカメラ、マイク入力などを扱うことができ、編集したデータは、AVI / WMVの動画データやOGG / WAV / WMA形式の音声データとして出力することが可能です。また、動画データの出力サイズが標準で320x240に設定されているため、そのまま動画共有サイトに投稿できるのもうれしいところでしょう。

「trakAxPC」上の各種画面やツールボタンなどにマウスカーソルを合わせることで、画面右端中央に表示された「Prompt」画面に簡易ヘルプが表示される。この写真は日本語化済みのものだ

複数トラックが利用可能なタイムライン表示

画面中央の「Mix View」は、余白にファイルをドラッグ & ドロップすることで、次々とタイムラインを追加できるので、BGMやナレーション、効果音、ドラムパートといったように、目的や種類別に異なる音声・動画トラックを作成することが可能です。各トラックは個別に再生音量や再生速度を変更できるのはもちろん、他のトラックへの影響を気にせず個々のトラックを編集できるので、あとからナレーションなどの挿入位置を変更するなど、動画と音声のタイミング調整が非常にやりやすくなっています。

編集作業の中心となるのが画面中央に配置された「Mix View」だ。「Media Browser」から各種メディアファイルをドラッグ & ドロップすることで、トラックの作成やメディアファイルの配置・編集が行える

ファイルの検索・即再生が可能な「Media Browser」

画面左端の「Media Browser」は、Windowsの「エクスプローラ」にファイル検索機能を統合したもので、ツリー画面を利用してファイルを手動で探したり、動画・静止画・音声ファイルを検索することが可能です。また、ファイルを選択するだけで即再生できる機能を備えているため、いちいちファイルを開かなくても内容を確認でき便利です。

動画編集に利用する画像や音声ファイルの選択は、画面左端に用意された「Media Browser」から行う。ファイル種別や任意のキーワードによる検索機能など、素早くファイルを選択するためのさまざまな機能が用意されている

直感的で分かりやすいユーザインタフェース

trakAxPCでは、タイムライン上でファイルの右端をドラッグすることで、ドラッグして延長した分だけ同じファイルをループ再生したり、キーボードの[Shift]キーを押しながらタイムライン上をドラッグすることで範囲指定を行えるなど、直感的なマウス操作が行えます。さらに、[Space]キーによる再生・停止やカーソルキーを使ったタイムライン上のカーソル移動など、キーボードショートカットを利用した素早い操作も可能です。

直感的なマウス操作も「trakAxPC」の特徴。たとえば、メディアファイルの右端をドラッグして再生時間を延長することで簡単にループ再生させることができるほか、キーボードの[Shift]キーを押しながらドラッグすれば範囲指定が可能

「Mix View」の右下にある[+]ボタン / [-]ボタンをクリックすることでタイムラインの縦軸方向、また虫眼鏡ボタンをクリックすることで横軸方向の拡大表示が可能だ。細かいタイミング合わせを行いたい時は、横軸方向を拡大すると便利

多彩な演出効果を実現するビデオエフェクト & オーディオエフェクト

タイムライン上で右クリックして[Insert] - [Video Effect]や[Video Transition]、[Audio Effect]を選択することで、各種演出効果を動画や音声に加えることが可能です。エフェクト自体の数は「Windows ムービー メーカー」ほどではありませんが、複数のエフェクトを重複してかけたり効果具合を調整できるので、工夫次第で多彩な演出効果を実現できます。

タイムライン上で右クリックし[Insert] - [Video Effect]や[Video Transition]、[Audio Effect]を選択することで、ビデオエフェクトや画面切り換え効果、音声エフェクトといった各種演出効果を利用できる。複数の効果を組み合わせて利用することも可能だ

画面下部の「Trak Kutter」画面は、編集前の映像・音声素材などをプレビュー再生したり、必要個所の切り出し作業などの一時作業スペースとして利用できる

「Windows ムービー メーカー」との併用もお勧め

trakAxPCは市販ソフトにも負けない非常に強力なソフトですが、その分操作がやや分かりにくいほか、「Windows ムービー メーカー」に比べ出来合いの画像演出効果の種類が少ないなど、初心者にはやや敷居が高い面もあります。しかし、複数トラックを利用できるなど、特に音楽関連の機能では使いやすさの面でも「Windows ムービー メーカー」を上回っています。操作になれない内は無理にtrakAxPCだけで作業しようとはせずに、、動画部分に関しては「Windows ムービー メーカー」の豊富な画像演出効果を利用して、BGMやナレーション部分の合成にtrakAxPCを併用するといった方法も有効ではないでしょうか。