ジョンソンコントロールズ日立空調の日本&台湾バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーである菊地正幸氏が取材に応じ、日立ブランドの家庭用エアコン「白くまくん」シリーズの今後の展開などについて説明した。
これまでと同じ工場でモノづくりを続ける
菊地ゼネラルマネージャーは、「ジョンソンコントロールズ日立空調の株主がボッシュになり、新会社を設立することになるが、日立GLSとブランドライセンス契約を締結し、日立ブランドの空調機器を、国内外ともに、これまでと同様に継続することになる。生産についても、これまでと同じ工場でモノづくりを続ける。日立ブランドを継続するビジネスであり、品質もこれまでと同様に厳しい基準で維持する。その上で、日立ブランドの空調機器を世界各地に提供する。詳細は今後12カ月以内に決定する」と発言。「日立ブランドのルームエアコンは、これからも継続する。『白くまくん』もなくならない。日立ブランドの高品質な空調製品を届けていく」と述べた。
「日立」ブランドおよび「白くまくん」ブランドの新会社に対するライセンス期間については、「長い期間になると聞いている。具体的には詰めていくことになる」という。
日立ブランドの家庭用エアコン「白くまくくん」シリーズの開発、生産を行うジョンソンコントロールズ日立空調(JCH)は、2015年10月に設立したジュイントベンチャーで、日立製作所の白物家電の子会社である日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)が40%、ジョンソン・コントロールズ・インタナショナル(JCI)が60%の株式を保有していた。今回の契約は、ドイツのRobert Bosch GmbH(ボッシュ)に、それぞれが保有する株式のすべてを譲渡。2024年7月23日に合意したと発表した。
日立GLSが40%保有するJCH株式の譲渡額は14億ドル(約1950億円)となる。2025年4~6月までに買収を完了させる予定だ。
ボッシュが100%出資して新会社を設立し、新会社は日立GLSとブランドライセンス契約を締結して、従来同様、日立ブランドの空調機器を世界各国に提供する。日本における家庭用エアコンの販売およびサービスは日立GLSが行うことになる。
白くまくんの栃木事業所、変わらず供給力の要へ
白くまくんのエアコンは、栃木県栃木市の栃木事業所で引き続き生産する。「円安が続いていることもあり、競争力のある地産地消での拠点として、確固たる供給力の要として、大切な製造拠点であることに変わりはない。目標としていた国内ルームエアコンの国内生産比率50%は2024年春に達成している」と述べた。
また、「日本国内での販売、アフターサービス、製品保証もこれまでと同様である。お客様には安心してほしい」と強調した。
白くまくんは、1959年に、同社エコアンの前面パネルに白くまのシンボル―マークを貼付したのがはじまりであり、その後も製品カタログなどに使われてきた経緯がある。1975年に、日立ルームエアコンの愛称として採用され、2025年には50周年の節目を迎えることになる。また、2025年には、日立が栃木に工場を構えてから80周年を迎える。
菊地ゼネラルマネージャーは、「長年愛されてきた白くまくんの節目となる年を迎え、新たな歴史をスタートすることになる。古いけれども、新しい白くまくんを、多くのお客様にご愛顧いただきたい」と語った。
また、JCHの業務用空調機器の開発および製造拠点である清水事業所は、日立GLSが取得。国内の業務用空調機器は、日立GLSが開発、製造、販売、保守、サービスまでを一貫して提供することになる。また、日立GLSに移管した清水事業所は、新会社の世界各地における開発、製造拠点をサポートする。
「ボッシュは、欧州をはじめとして、世界中に広範囲なフットプリントを持つ。これを活用して、日立GLS、ボッシュ、新会社は、競争力が高い日立ブランドの空調機器のグローバル展開を強化し、さらなる成長を実現できると考えている。研究開発についても、新会社と日立GLSが協業を進めていく」としている。
続けることもあるが、変化は常に必要
菊地ゼネラルマネージャーは、「発表があってから、取引先やお客様から多くの問い合わせがあった。栃木での生産を継続するのか、清水での生産が続くのかといった内容や、白くまくんの利用者にとっては、引き続き、サポートしてもらえるのかという問い合わせもあった」とする。
現在、JCHの栃木事業所では約1600人、清水事業所では約1500人が勤務。JCH全社では約3700人の規模になる。
「栃木事業所の雇用は維持することになるが、清水事業所の社員全員が日立GLSに移行するかどうかはこれから決めていくことになる。新会社の人員規模はこれから決まることになる。また、サプライチェーンを維持していく考えであるが、これまでにもサプライチェーンを変化させてきたのと同様に、変化はしていくことになる」とした。
同社では、ここ数年で、栃木県内の取引先から購入する件数を45%、日本国内の取引先から購入する件数は70%に引き上げている。現在、栃木事業所では年間80~100万台のルームエアコンを生産、清水事業所では年間20~40万台の業務用空調機器を生産しているという。
菊地ゼネラルマネージャーは、「ボッシュが親会社になることで、事業の進め方には変化が生まれるだろう。その点には期待している。モノづくりにもボッシュの技術力が生かせることになり、欧州での販売においても、ボッシュのエンジニアリング力を生かせる。地球環境に優しいモノづくりもできるだろう。新会社になることで、より愛されるために変革をしていく」と述べた。