2025年4月13日から開幕する大阪・関西万博の会場内において、NECの顔認証システムが導入されることになる。入場管理および電子マネーによる決済において、顔認証技術を採用。会期中の登録者数は120万IDを想定しており、国内最大級の顔認証システムが稼働することになるという。

2025年日本国際博覧会協会の企画提案公募において、NECとSMBCのグループが、最優秀提案事業者に選ばれ、導入が決定した。NECは顔認証システムと顔認証用カメラを提供する。また、NECは「キャッシュレス決済 EXPO 2025 デジタルウォレット事業」にプラチナパートナーとして参画しており、その取り組みのひとつとして顔認証決済システムを提供するという。

  • (右から)NEC 大阪・関西万博推進室長の高橋篤史氏、NEC Corporate EVP 兼 国内営業統括の松原文明氏、2025年日本国際博覧会協会 企画局長の河本健一氏、大阪・関西万博公式キャラクターのミャクミャク

    (右から)NEC 大阪・関西万博推進室長の高橋篤史氏、NEC Corporate EVP 兼 国内営業統括の松原文明氏、2025年日本国際博覧会協会 企画局長の河本健一氏、大阪・関西万博公式キャラクターのミャクミャク

2025年日本国際博覧会協会 企画局長の河本健一氏は、「大阪・関西万博では、全面的なキャッシュレス決済を導入する予定であり、原則として現金を使用することができない。会期中の184日間に、2820万人の来場が想定される会場では、60種類以上の決済手段が利用可能であり、万博オリジナルのキャッシュレスである『ミャクペ』も利用できるようにする。『ミャクペ』は万博会場以外にも、全国230万台以上のVISAのタッチ決済でも利用が可能である。まさに、未来社会の実験場となる」と前置きし、「今回の顔認証の実装により、会場内での来場者の利便性と安全性を高めることができる。顔認証は、『ミャクペ』の利用者全員が対象となり、据置型オールインワン決済端末のstera terminaが設置された店舗では顔認証を利用した決済サービスが利用できる。これにより、会場内の買い物が顔パスで行える。また、入場ゲートでの顔認証を追加することで、なりすまし防止を実現するとともに、スムーズに、セキュアに入場できる」と述べた。

  • 2025年日本国際博覧会協会 企画局長の河本健一氏

2025年日本国際博覧会協会では、大阪・関西万博での顔認証システムの導入により、キャッシュレス化やデジタル化の促進につながることを期待しているほか、今後の顔認証の普及にもつなげたいとしている。

今回の顔認証は、通期パスおよび夏パスの購入者による会場への入場時と、ミャクペの利用者の電子マネーによる決済時に利用できる。

入場時に利用するチケット顔認証システムでは、全体の4分の3にあたる51カ所のゲートで顔認証システムを導入し、来場者はチケットのQRコードをかざしたあとに、ゲートに設置されたカメラで追加認証を行う。

  • 入場ゲートでの認証のイメージ

「QRコードとの組み合わせによって、登録者と顔を照合することになる。なりすましや使いまわし防止に効果があるほか、入場ゲートでの省人化にもつながる。来場者には、新たな技術を体験もしてもらえる」(NEC 大阪・関西万博推進室長の高橋篤史氏)と見ている。なお、各パピリオンでの入場にはQRコードを利用するが、顔認証は利用しない。

  • NEC 大阪・関西万博推進室長の高橋篤史氏

ゲートでの顔認証は、カメラ位置を考慮することで、車椅子での来場者や、子供の来場者でもスムーズに認証を行えるようにする。また、マスクを装着しても顔認証が行えるようにしている。NECの顔認証は、見た目で判断しているのではなく、顔の目や鼻、口などの特徴点の位置や、顔領域の位置や大きさをもとに照合を行っており、眼鏡の有無や、帽子の有無、ひげの有無などは影響しない。

一方、顔認証決済システムでは、万博会場内に設置された約1000台のstera terminalを活用。対象店舗で顔認証を行うだけで、スマホやクレジットカードなどは使用せずに、手ぶらで決済ができる。決済方法は、クレジットカードか、「EXPO2025デジタルウォレット」アプリの電子マネー「ミャクペ!」が利用できる。

  • 万博オリジナルのキャッシュレスである「ミャクペ!」

stera terminalには、Androidが搭載されており、NECは決済用アプリケーションを開発し、提供した。stera terminalに内蔵されているカメラを利用して、顔認証する。

  • 据置型オールインワン決済端末であるstera termina

会場内のほとんどの店舗では利用できるが、キッチンカーによる移動型店舗など、一部では、stera terminalが導入されていないため、顔認証決済は利用できない。

利用者は、物品の購入時に、「顔認証決済でお願いします」といえば、店員が端末を操作。画面にはミャクミャクがカメラの位置を指さすイラストが表示される。カメラに向かって顔認証をすると、紙のレシートが発行され、商品が購入できる。数秒で決済が終了する。

  • ミャクミャクが指したカメラの方向を向いて顔認証を行う

  • 顔認証中の画面の様子

  • 顔認証が完了する店員の操作を待つ

  • 店員側の画面には、顔認証による決済が完了した様子が表示される

  • 顔認証すると店員が確認ボタンを押す

  • 決済された金額を確認する

<動画>実際に顔認証決済を使用してみる

また、店舗側もデジタルでのデータ管理が可能になり、販売管理業務の短時間化、現金の管理の手間がなくなり、店舗の回転率の向上につながるといったメリットを想定している。

「通期パスおよび夏パスの利用者は、入場も決済も顔パスで済む。手がふさがっているときも、財布からお金を取り出したり、クレジットカードなどを出したりする必要がなくなる。決済時の時間短縮にもつながる」とした。

いずれの利用においても、チケットサイトなどを通じて、事前に顔画像を登録することになる。スマホやカメラ付タブレットなどで登録ができ、現時点では、2025年1月頃からの顔登録を予定しているという。顔画像データは国内のデータセンターに格納しており、個人情報は利用者の同意なしに、別の用途で利用することはないという。

NEC Corporate EVP 兼 国内営業統括の松原文明氏は、「顔認証をはじめとするNECの生体認証技術は、NEC Digital Platformの中核技術のひとつであり、米国国立標準技術研究所(NIST)が主催する顔認証技術のベンチマークテストにおいては、世界ナンバーワンの評価を獲得している。これがNECの強みになっており、生体認証によって、あらゆるサービスをつなぎ、人と社会、世界を結ぶことになる。世界約70の国と地域に導入しており、安心安全、効率的な社会の実現に貢献している。この観点からも大阪・関西万博に貢献し、その先の未来づくりにも貢献したい」と述べた。

  • NEC Corporate EVP 兼 国内営業統括の松原文明氏

NECでは、今回の実績をもとに、国内に顔認証による決済システムの導入を促進する考えも示した。

  • NECの生体認証技術は世界ナンバーワンの評価を獲得している

万博会場での採用により、国内からの来場者のみならず、世界に対する発信が可能になるメリットは大きい。多くの利用者が顔認証システムを体験することで、その利便性が伝われば、今後の普及にも弾みがつくことになるだろう。