日々いくつもの仕事を同時にこなしていくなら、TODOやスケジュール管理は欠かせない。人によって、システム手帳に予定を書いたり、オンラインのスケジュールソフトを使ったり、はたまた、ディスプレイ周りに付箋紙を貼って対応したりと、管理の方法は様々だろう。みなそれぞれの良さがあると思うが、僕はあえて「EXCELでのTODO&スケジュール管理こそが最強だ!」と叫びたい。いや、叫ぶ。

当連載では、僕が自作した表を元に、仕事管理に役立つEXCELの活用法を紹介していきたい。フリーライターという職業に特化した構成になってはいるが、少し項目名などを変えれば、他の職業でも役立つはずだ。

システム手帳の柔軟性とデジタルならではの自動性がひとつに!

フリーライターというのは、基本的に複数の雑誌に記事を書かなければ食べていけない。僕も未熟者ながら、今は10誌以上の編集部に出入りさせてもらっている。そこでたくさん仕事がもらえるなら可能な限り受けたくなるのが人情だが、あまり詰め込み過ぎると処理できずにパンクしてしまう。

また、いい加減に予定を組むと、別の媒体と取材時間が重なることに後から気付いて、片方の編集部に死にそうな声で誠心誠意謝ることになる。そうした致命的なミスを避けて、パズルのようにスケジュールの空きを埋めていくには、相当綿密な予定表が必要だ。それは僕の脳の記憶能力ではお手上げのレベル。ならば、外部に優秀な脳を求めることになる。

外部の脳といっても、秘書を雇える経済力などないから、スケジュールソフトやシステム手帳に自分の記憶を委ねることになる。そうして、様々な道具を試した結果、最終的に行き着いたのがEXCELだった。EXCELなら自分の仕事量にぴったり合わせたサイズのTODO表が手軽に作れるうえ、ちょっとした関数を使うことで一日に受けられる仕事量の計算や作業時間の平均値を出し、さらに統計を得ることもできる。しかも、システム手帳にリフィルを追加するような感覚で、出入金や体組成を管理するタブを作成するといった拡張も自由自在だ。

オリジナルのTODO表を初めて作ったのは2002年10月。最初は単なる備忘録をまとめた表だったが、そこに1日の作業時間を計算する関数や目標達成/未達成に関する自身への賞罰ルールを加えて、レイアウトの変更や機能の追加を繰り返すうちに、スケジュールから収入の推移、長中短期目標を立てるまでの複合的な管理ツールになった。アプリケーション風にいえば、現在は「TODO表 Ver8.5」くらいになっていると思う。

僕が普段使っているTODO表の「週間」予定タブ。具体的な媒体名や固有名詞は変更しているが、それ以外は一切手を加えていない。人に見せることを想定せずに作っているので、恥ずかしい要素が散見されるが、そってしておいてほしい

2003年前半のTODO表。当時は1280×1024ドットのディスプレイをメインで使っていたため、現在よりも横幅が短かった

一見単なるスケジュール表に見えるかもしれない。しかし、このページの情報だけで、仕事のスケジューリングに加えて、中短期的な自身の方針とモチベーションの状態、体調の管理までもが把握できるのだ。これらのデータを基に、「最近ちょっと気合いが抜けているから頑張ろう」や「ここ2週間くらい、仕事量の割に無駄遣いが多い。反省」などと考えを巡らせている。もしも僕がこのファイルを紛失したら、同じ失敗を何度も繰り返すだろうし、その日のノルマや短期目標に対する責任感が薄れ、二度寝直前の甘えた精神状態に陥り、速攻で自堕落な生活を送ってしまうに違いない。

さて、すべての機能や役割を説明するときりがないし、聞きたい人もいないと思う。なので、これから数回に渡り、簡単に使えて応用が利くEXCELの機能に的を絞って紹介していきたい。

1日に詰め込む作業量を計算する

今回は数日先の予定の立て方について説明しよう。たとえば、雑誌Aの原稿を5月25日18時までに書いて納品する場合、僕は図のように「媒体A」の「5月25日」内にあるセルに「2.5h 18時 原稿納品」と記入する。2.5hは執筆や最終チェックにかかると想定される時間で、18時は納品期限だ。すると、左端にあるこの日の「残仕事」が「13.5h」と表示される。元から入力していた睡眠時間やジョギング時間の合計が11時間で、そこに2.5時間分の作業が追加されたわけだ。

現状では、この日は睡眠も含めて13.5時間の予定がある。ならば、あと10.5時間の予定を入れられるわけだ。そこで、次の日に作業しようと思っていた媒体Bの「リストアップ」作業や、祝日だから休みたいという心の声を聞いて「遊ぶ」などの予定を追加していき、最終的に「残仕事」が合計24時間になるようにする。このように、毎日24時間に収まる予定を立てていけば、1日にうっかり計28時間の分量を詰め込んで、あとから泣きをみるということはない。

「2.5h 18時 原稿納品」と入力したところ、「残仕事」が13.5時間となった

5月25日の予定を埋めた。リストアップ作業を前倒ししたため、26日には確認の後に画像手配まで進められるようになった

この仕組みには、EXCELの関数でもっともメジャーな「SUM関数」を使っている。SUMは指定した範囲にある数値の合計を求める関数。各TODOの左端にあるセルを1日分集計しているわけだ。関数式は下記のようになっている。

 =SUM(D471:D476,G471:G476,……,AH471:AH476)

 =SUM(媒体Aの作業時間,媒体BCの作業時間,……,プライベートの時間)

カラーの枠で囲まれた部分がSUM関数の集計範囲となる。ここに空白や文字列を入れても、エラーは起きずに無視される

もちろん、各予定で入力した作業時間は想像でしかない。いざ作業を始めたら意外に早く終わるかもしれないし、泥沼にハマるかもしれない。しかし、毎日作業時間を予想して予定をたてていくと、次第に実際の作業時間とのズレは少なくなっていく。作業所要時間が把握できれば、あとは取材や打ち合わせなどの時間が決まっている予定のバッティングを調整するだけ。時間的に柔軟性がある"いつやってもいい仕事"を空いた時間に詰め込んでいけば、自分の時間を最大限に活用できるようになるのだ。