事務用品・各種設備大手のイトーキが、滋賀県・近江八幡のチェア工場をリニューアル、その名も「ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA」へと進化させた。この工場を皮切りに、今後も各地の生産拠点をリニューアルし、「ITOKI DESIGN HOUSE」を拡充していくという。
同社社長の湊宏司氏は、「これまでは事務用品や家具、各種設備を売ってきたが、これからは働き方を売る」と宣言する。そうはいっても同社のオフィス事業は絶好調だ。コロナ禍が過ぎたあと、毎年のように2桁成長しているという。
オフィスから工場へ。第三の波としての働き方改革
コロナによってオフィスのあり方がどんどん変わってきている中で、今、第三の波が来ていると湊氏はいう。
第一の波はコロナ禍中の在宅勤務のころだ。社員は在宅の心地よさや効率のよさを経験して、ずっとそうしたいと願うが、経営者側としては出社してほしいと願う。だから、会社に行きたくなるオフィスを作らなければというのが第一の波だ。この波は今なお引き続き健在だ。
そのうち第二の波が出てきた。こちらはオフィスという設備への投資だ。人的資本投資ではなく、設備への投資によって社員の気持ちが盛り上がるとか、離職率が下がるといったメリットが得られるという。今、製造業の採用で困っているという意味では、地方都市の状況が顕著なので、同社への案件も、地方都市からのものがどんどん増えているともいう。
そして今の第三の波だ。これまでの波の派生形ではあるが、工場における働き方に焦点があたる。大都市のど真ん中にあるわけではない工場を、そして、そこでの働き方をデザインするというわけだ。第二の波が設備投資によって社員の意識を変える取り組みだったのに対し、第三の波は工場という現場そのものの働き方をデザインするという視点だ。
開発と製造が交差する場所から生まれるチェア
今回は、リニューアルされた工場のお披露目と同時に、プロダクトデザイナー・柴田文江氏によるスタンダードコレクションワークチェアの人気製品「vertebra03」上位モデルとして、新ワークチェア「SHIGA」の発表会も兼ねられていた。働き方を売る会社になっても、製品作りをやめることは決してないと湊氏はいう。
今回のリニューアルでは、同一の建屋の中で開発と製造という異なる働き方が共存できるオフィスを構築したという。それを象徴するのが、居心地と座り心地を両立させたワークチェア「SHIGA」であるというわけだ。
滋賀県野洲市には、2028年春に同県初となる高専が開校予定だ。人と地球を支え続ける技術を磨く学校として学生を育成していく計画だという。情報系、機械系、電気電子系、建設・環境系の4つのコースを持つ予定だ。
今回の新工場お披露目に際してビデオメッセージを寄せた滋賀県知事の三日月大造氏はものづくりに関わる人材を育成できることを喜ぶ。
また、近江八幡市長の小西理氏は、イトーキのような会社の製造拠点が市内にあることはうれしいと語る。同市は5年前から庁舎の計画で働き方を検討してきた経緯があるが、その過程でイトーキからもアドバイスをもらって、これまでの行政になかったようなものを考えてもらい、実際、そのオフィスで働き始めてコミュニケーションがうまくいくようになっていると述べた。
共創を体現する10万平米の空間でものづくり
リニューアルのコンセプトは「共創」だ。社内外のパートナーが混ざり合って共創する空間。ここからどんな製品が生まれてくるかが楽しみだ。
34年目となるチェア工場の広さは10万平米で621名が働く。また、今回ITOKI DESIGN HOUSEとなった部分は、在籍人数113名で、1~4Fまでのオフィス延床面積は556平米だ。
近江八幡駅から京都駅までは新快速等で移動すればわずか30分ちょっと。地方というにははばかられるほどの都会だ。
工場までの道のりは田園都市そのものといえる風景が拡がるが、デジタル田園都市の実現を目指す地方創生のモデル都市として、デジタルの力を活用した安全・便利なまちづくりを進めているようだ。
今回の工場のリニューアルは社内の20名がプロジェクトを組み、業界をリードするものづくり拠点をめざす。そこから生まれる製品は、単なる事務用品や家具ではなく、働き方そのものだという湊氏の考え方を確実に実現できそうなムードを強く感じることができた。







