「分割払い」というとどんなイメージでしょうか。クレジットカードの使い方としては、商品代金に加えて手数料が余計にかかるからムダという考え方もありますが、家や車のローンと同じだと考えれば、無理なく支払いをしつつ必要な商品を得られる仕組みではあります。
そんな分割払いをメルカリで利用できるようになりました。メルカリが分割払いを導入することで、ユーザーの購買行動に変化は起きるのでしょうか。今回はそのあたりを考えていきたいと思います。
メルカリの分割払い
決済サービスなどを提供するメルペイは、9月にメルカリ内での決済において分割払いを導入しました。10月17日には分割払いにおける「2回払い」に対応し、さらに2回払いにおける分割払い手数料を無料にしました。
仕組みとしては、メルペイが発行するクレジットカード「メルカード」を利用します。このメルカードに新たに「分割払い」機能が追加され、これがメルカリの支払い方法に追加される形です。
現状でメルカードを使った分割払いはメルカリでの支払いにしか利用できず、メルカリ以外で利用した場合の支払いに対して分割払いはできません。この分割払い導入の目的は、メルカリに出品されている高額な商品を買いやすくするため、とされています。
メルカリはユーザーが出品するマーケットプレイスであり、「一点物」という商品も多くあります。商品を購入したいときに「一括払いが厳しい」ということで購入できなくなるよりは、分割払いによって購入できるようになることがメリットだと、メルペイの執行役員VP of Growth Fintechの李希成氏は話します。
分割払いを利用する場合は、手数料が発生します。実質年率は15.0%で、10回払いだと7%、24回払いだと16.36%になります。10万円の買い物で10回払いだと、そのまま計算すれば手数料が7,000円となるところですが、実際には初回の支払額が11,355円で、残り8カ月が10,700円、最終月が10,661円となるため、最終的には107,616円が手数料を含めた支払金額になります。
ちょっと計算はややこしいですが、購入時に支払い回数に応じた精算金額のシミュレーションが表示されるため、確認した上で分割回数を指定できます。
今回2回払いが利用できるようになったことで、支払回数としては2回~24回までが選べます。実はもともと、メルカードには分割払いの機能がありませんでした。一般的なクレジットカードでは珍しくない分割払いの機能ですが、メルカードで提供が遅れたのは、「メルカードではまず基本機能を早期に提供したかったから」だと李氏は言います。
分割払い選択時の精算金額の表示の仕方など、メルカリアプリ内でのUIやUXを含めて、時間をかけて議論してきたと李氏。9月に3~24回の分割払いをリリースし、10月17日に2回払いを追加と、2回払いだけ提供が後になったのは、「事故がないように社内で時間をかけて開発した」とのこと。これは2回払いの手数料を無料にすることで、ユーザーの利用が増えることが予想され、問題が発生しやすくなるとの判断からのようです。
これまでメルペイには、クレジットカードを使わないメルペイスマート払い、メルカードを使った定額払いがありました。いずれも毎月決まった額を弁済していくというリボ払いの仕組みです。そのため、毎月の支出は一定金額に抑えられるものの、「高額商品だけ支払いを分割したい」というニーズには応えられませんでした。
また、リボ払いだと残債をすべて一定の金額で払い続けるため、一定の手数料が毎月発生します。分割払いであれば、1回の支払いごとに分割するかどうかを決められるため、より柔軟に設定できます。
特に手数料がかからない2回払いは使いやすいものです。一般的なクレジットカードでも2回払いで手数料が発生しないことは多いのですが、李氏は「2回払いで手数料がかからないことを知らない人も多い」としており、この点を今後はアピールしていく考えです。
ちなみに、メルカリの支払いで他社クレジットカードを設定している場合、そのクレジットカードの分割払いを利用することはできます。あくまで、「メルカードを使ってメルカリアプリ内で精算や返済管理、設定などができ、ポイント還元率が高い」という点が今回のポイントです。
これまで通り、メルカードを持たない人はメルペイスマート払いを利用することもできますが、メルカードを使った分割払いだとポイント還元があるのがメリット。メルカリアプリでの管理を含めて、メルカリのヘビーユーザーであれば十分なメリットです。ちなみに分割払い時のポイントは1回目の返済を終えた後に一括で還元されるそうです。
高額商品でもレンタル感覚?
今回の分割払い導入は、こうしたヘビーユーザーの消費行動の変化に繋がるかもしれません。その影響が現れてくるかが注目です。
高額品、趣味のグッズ、季節物といった商品は、買うかどうかは迷うものですが、「メルカリのレンタル的な消費行動と合わさるとさらに柔軟性が高まる」と李氏は指摘します。これは、購入した商品を、使い終わったらメルカリで売るという行動です。
この場合、メルカリで売却するときの価格が購入時よりは安くなったとしても、売上をメルカードの精算に充てることで分割払いの残債を減らすことができるため、「数カ月のレンタル料」というイメージで使えるというわけです。
もちろん今までも一括払いで同様のことはできましたし、他社カードで分割払いを利用していたユーザーもいるでしょう。ポイントは今まで分割払いに触れてこなかったメルカリのヘビーユーザーを取り込めるという点です。
リボ払いは避けたいけれど一括で一度に支払うの厳しい……という利用者にとっては、無理せずに自分の好きな商品を試して、仮に自分に合わなくても売却して返済に充てるという手段が取れることはメリットでしょう。ヘビーユーザーであれば、その辺りの感覚もある程度は予想できて、リセールバリューを考慮して検討できる人は多そうです。
「高額商品でも、これまで以上に計画的に購入しやすくなる」と李氏は言います。分割払いなので最大でも支払い回数は24回に収まるため、リボ払いよりは安全性は高いのですが、かといって購入しすぎると無理が出てしまいます。こうした点について李氏は、AI与信の存在をアピールします。
AI与信によって適切な与信額を設定できている、というのが李氏の考えです。AI与信の精度も向上しているそうで、直近の3四半期における回収率は99%を超えており、現状は与信が適切に設定されているとの認識を示します。
今回の施策には、メルペイにとっては分割払いによる手数料収入の増加、メルカリにとっては商品の売買の活性化といったメリットがあります。2回分割払いが多いと手数料的にはメリットが薄くなりますが、分割払いに慣れたユーザーがさらに多くの分割払いを利用することで、手数料などに貢献することはあるでしょう。
さらにメルカードでは、メルカリ以外の利用でも分割払いに対応するよう機能拡張を検討しており、他にも他社クレジットカードにある機能は順次カバーしていきたいとしています。
スマホのタッチ決済への対応といったサービス面の拡充、2枚目カードの発行といったビジネス面での展開もありえますが、具体的な予定はないと言います。逆にメルカリでの後払いサービスをメルカードに一本化することもないということで、マーケットプレイスでの支払い方法に関しては選択肢を確保していく考えを示しています。
分割払いを計画的に利用するユーザーが増えるのか、トラブルなくメルカリの利用拡大に繋がるのか。メルペイの今後の舵取りは注視していきたいところです。