2025年7月、SeagateからHAMR(熱アシスト磁気記録)を採用した30TBのHDD「IronWolf Pro」が発売された。HAMRはHDD大容量化の切り札とも言える技術で、20年以上前から開発されていたがついに実用化。今回使用する機会を得たので、IntelとAMDの両プラットフォームでその実力を検証してみた。
HDDの限界を突破するHAMR(熱アシスト磁気記録)技術
2025年はHDDにおける転換期だ。HDDは2004年に採用された垂直磁気記録方式が長く使われてきた。しかし、近年の大容量化、高密度化によってトラック間が狭くなった影響でデータの書き込み時にノイズやエラーが起きるリスクが高まってしまった。垂直磁気記録での大容量化に限界が見えてきたのだ。
その限界を突破するために開発されたのがHAMR(熱アシスト磁気記録)だ。HDDの高密度化にはプラチナ合金などを使った磁気に強い記録媒体の採用が必須だが、それはこれまでの磁気ヘッドでは磁気が弱すぎて書き込めない媒体になってしまう。そこで磁気ヘッドに組み込まれたレーザーで一瞬だけ加熱して書き込みやすい状態にし、データを書き込む方法を生み出した。まさに、“熱アシスト”磁気記録なのである。
SeagateではHAMR方式の独自技術「Mozaic 3+」を開発、現在発売しているHDDに採用している。2028年までに50TBの「Mozaic 5+」の開発を計画しており、生成AIによって起こる爆発的な大容量ストレージへのニーズに応えていくという。
Seagateではすでに「Mozaic 3+」を採用するHDDをデータセンター向けとして出荷していたが、今回一般向けにも販売がスタートした形だ。それが「IronWolf Pro」の30TB(型番:ST30000NT011)だ。これは一般向けのHDDとして過去最大の容量で価格は11万4,000円前後。IronWolf Proは24時間365日稼働を前提としたNAS向けブランドで、5年間の長期保証と3年間のデータ復旧サービスが付いている。
インターフェイスはSerial ATAの6Gbpsで、記録方式はCMR。ヘリウム封止技術も採用している。回転数は7,200rpm、キャッシュは512MB、最大シーケンシャル転送速度は275MB/sとHDDとしてトップクラスの速度だ。ちなみに、HAMRは物理的な記録方式で、論理的な記録方式はこれまでと同じくCMRとSMRがある。Seagateでは今後一般向けではCMRだけを採用していく方針とのこと。SMRは大容量を求めるエンタープライズ向けで使われるようだ。
30TB「IronWolf Pro」の性能検証
ここからは実際の速度をチェックしていこう。検証環境は以下の通りだ。Intel環境はCore i9-14900KとZ790チップセットの組み合わせ、AMD環境はRyzen 7 9800X3DとX870Eチップセットの組み合わせを使用している。
| 【Intel検証環境】 | |
|---|---|
| CPU | Intel Core i9-14900K(24コア32スレッド) |
| マザーボード | ASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790) |
| メモリ | Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
| 【AMD検証環境】 | |
|---|---|
| CPU | AMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド) |
| マザーボード | ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E) |
| メモリ | G.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
| 【共通検証環境】 | |
|---|---|
| ビデオカード | MSI GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC(NVIDIA GeForce RTX 5060) |
| システムSSD | Micron Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB) |
| CPUクーラー | Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス) |
| 電源 | Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold) |
| OS | Windows 11 Pro(24H2) |
データ転送速度を確かめる「CrystalDiskMark 9.0.1」でシーケンシャルとランダムの速度をチェックする。
どちらの環境でも速度にほとんど差はなかった。どちらでもしっかり性能を発揮できていると見てよいだろう。シーケンシャルリード、ライトとも公称値を超える280MB/sオーバーを記録。現役最速クラスのHDDと言ってよいだろう。ランダム性能がSSDよりも大きく劣るのは回転するディスクに記録するというHDDという構造上、仕方のない部分だ。
次にHD Tune Pro 6.10を使ってHDDの外周部と内周部でどこまで速度が変わるのかチェックする。HDDは円盤状のディスクに記録するので外周部のほうが高速で、内側になるにつれて速度が低下していくからだ。このテストはAMD環境で行った。
テストを開始した直後にキャッシュの動作などの影響かデータ転送速度が遅いタイミングがあるのでMinimumの結果は無視してほしい。外周部の読み出し速度は280MB/sを超え、内周部は125MB/s前後まで下がる。記録密度が高く、大容量ということもあって外周と内周の速度差は大きかった。
また、SeagateではHDD用のツールとして健康状態が確認できる「SeaTools」やデータのバックアップやクローニングが行える「DiscWizard」を無料で提供している。Seagate製のHDDを使っているなら、導入してみるのもよいだろう。
2025年、SeagateのHDDはかなり“攻め”の姿勢だ。BarraCudaの24TB(ST24000DM001)は、4万円台の低価格を実現して圧倒的な人気を獲得。今回紹介したIronWolf Proの30TB(ST30000NT011)は高価だがNAS向けなので耐久性、信頼性は高く、一般向けHDDで最大の容量かつHAMRを採用という強みがある。SSDではとても実現できない大容量とGB単価は、4Kでの動画編集やAIによる大量の画像や動画生成が当たり前になりつつある現在、HDD人気の盛り返しに繋がるのではないだろうか。










