ジンバルカメラ「Osmo Pocket 3」が幅広い層にヒットしているDJIが、アクションカメラの新製品「Osmo Action 5 Pro」を発売しました。使ってみると、最新スマホでも苦手とする夜景など低照度のシーンや明暗差の大きなシーンも手間なくきれいに撮れ、画質にまず満足。縦長の自撮り動画の撮影がスマートにできるだけでなく、人物が動いても中央に据えた縦動画に仕上げるトラッキング機能も秀逸。ワイヤレス接続のDJI Mic 2との連携で話し声もクリアに収録できました。残暑の屋外で4K動画を長回ししても止まることなく動作し、バッテリーもよく持つうえ15分の充電で2時間撮影できる急速充電も備えます。GoProの弱点を研究し尽くして仕上げたような内容で、価格も安くコスパも上々。スマホと一緒に持ち歩いてスマホ以上にきれいに映像や音声が記録でき、高画質な自撮りも楽しめる便利な超小型カメラとして、アクションカメラの定番が変わると感じました。
【画質】夜間など暗いシーンの画質に目を見張る
アクションカメラ(アクションカム)の市場を開拓し、アクションカメラの代名詞となったGoPro。6~7年ほど前には「#GoProのある生活」というハッシュタグを付けて投稿するのがInstagramで流行るなど、ブランドが一般層にも広く浸透。テレビ番組のロケでもよく使われるなど、放送業界でも評価を獲得しました。
しかし、ブランドの強さとは対照的に、ここ3~4年のGoProはいまひとつパッとしなかったのが事実。センサーサイズの小ささによる画質の低さや撮影時の安定性などが指摘されていたにもかかわらず、HEROシリーズのアクションカメラはモデルチェンジしても改良が最小限にとどまり、「変わり映えしない」と批判を浴びることも。多くの人になじみの薄いスキーやダイビング、モータースポーツなど動きの激しいアクティビティの撮影にフォーカスしすぎて、ニーズの増す自撮りやVlog、縦動画などへの対応が二の次になったこともユーザー離れを招いたといえます。
そのようなGoProの停滞を横目に、アクションカメラの分野で攻勢を強めていったのがDJIやInsta360などの中国メーカー勢です。DJIが今回投入した「Osmo Action 5 Pro」は、初のProの名称を加えただけあって、プロも納得して使える品質や機能、安定性に仕上げてきたと実感できました。
デザインや大きさは従来モデル「Osmo Action 4」から変わりなく、競合モデルとも大きな差はありません。そんな小型軽量ボディを維持しながら、まず注力したのが画質の向上です。1/1.3型の大型センサーはサイズこそ従来と同じですが、センサーの世代を更新しつつ画像処理エンジンが改良され、特に低照度の画質が向上したと感じます。
夜景の写真は、複数枚の写真を連写して重ね合わせるナイトモードに入ることなく、日中と同じく一瞬で撮影できるので、カメラを数秒間動かないよう配慮する必要はナシ。夜間もテンポよく次々に撮影できます。本体前面のロゴ内に搭載した色温度センサーのおかげで、ホワイトバランスも見た目に忠実に仕上げてくれました。
特に目を引いたのが、光が極端に少ない状況での動画撮影に特化したSuperNightモードです。このモードにすると、裸眼だと真っ暗でほとんど見えない状況でも見た目より明るく、しかも白飛びを抑えて撮影できました。明るい屋内に入っても適正露出で撮れるので、夜はずっとこのモードに設定しておけばよいのは便利です。SuperNightモードでも撮影時の揺れや傾きをしっかり補正でき、アクションカメラならではの威力を感じました。
センサーと画像処理エンジンの改良でダイナミックレンジが大きく向上したので、日中の輝度差が大きいシーンも見た目に近く仕上がりました。明るい日中、複数の照明や外光が混じる屋内、暗い夜間も画質が向上し、カメラとしての完成度や魅力が高まったと感じます。
【撮影機能】4:3比率の4K動画が撮れ、柔軟なトリミングが可能
高画質を生かしたユニークな撮影機能も備えています。その1つが、4:3比率のセンサーのすべての領域を利用した4K/120fps動画(3840×2880ドット)が撮影できること。16:9比率の4K動画(3840×2160ドット)よりも縦の記録範囲が広いので、トリミングの柔軟性が高まります。うっかり横位置で撮影しても、撮影後に左右をカットして縦動画にできます。
人物撮影時に左右カットの手間を省くのが、高度なトラッキング機能です。「被写体トラッキング」モードにすると、横位置での撮影時に人物を検出して追跡する機能をが働き、自分で編集する必要なく人物を中央に据えた縦動画に仕上げてくれます。横位置での撮影なので、ある程度横方向に動いてもしっかり追跡してくれます。
スローモーションは、従来のOsmo Action 4と同様に1080p/240fpsで撮影できますが、「普通の動画モードで撮影した120fpsの動画をカメラ内で960fps相当に変換する機能」を新たに搭載したのが注目できます。画像処理を用いたフレーム補完により超スロー化する仕組みですが、仕上がった動画は自然な描写でインパクト大。スローを開始するポイントも自由に指定でき、ここぞというシーンをエモい超スロー映像に変換して活用できます。
【装備、機能】電源オン即撮影や急速充電は便利
撮影をスピーディーに、より確実にするためのハードウエアの工夫も目を引きました。
まず便利だと感じたのが、電源オンと同時に撮影できる機能です。電源がオフの状態でも、上部の撮影ボタンを押すと電源が入るとほぼ同時に撮影が始まります。再び撮影ボタンを押せば、撮影が終わると同時に3秒後に電源が自動でオフになる仕組みも備えています。実測では、電源ボタンを押してから1秒経たずに撮影が始まるので、撮りたいと思った瞬間を逃しません。
バッテリーまわりの満足度も高いと感じます。バッテリー自体を1950mAhに大容量化しつつ省電力の設計にしたことで、フル充電にすれば4時間もの撮影が可能。炎天下の屋外で2時間ほど撮影しても、バッテリーは40%近くも残っていました。電源を入れっぱなしでも途中で止まることはなく、安定性や信頼性も申し分なし。15分の充電で2時間使える急速充電機能も備えており、ドローンなどでバッテリー技術を磨いたDJIの底力を感じました。
Osmo Action 5 Proは内蔵マイクの性能がよく、周囲の音をステレオで忠実に収録してくれますが、周囲が騒々しい状況では自身の声が聞き取りにくくなる場合も。そこで便利なのが、ワイヤレスマイク「DJI Mic 2」との連携機能。ケーブル接続の必要なく、自身の話し声を高音質で収録できます。標準でワイヤレスマイクの接続に対応する点は、自撮りやVlog用途で使いたい人に大きなメリットとなるでしょう。
本体底面には磁力でくっつくマウントを装備しており、近づけるだけでピタッとくっつき、押し込んで爪をカチッと引っかければ簡単に固定できます。GoProマウントのようにネジを回す必要がないので手間がありません。磁力は強いので、鉄のポールなどがあれば三脚なしで本体を固定できるのも便利だと感じます。
ニーズの増す縦位置撮影もしっかりサポートしています。標準で付属している本体保護用のケージには、側面に同様のマウントが用意されているので、縦位置の状態でも自撮り棒や三脚を固定できるようになります。前面にもカラーの表示パネルを搭載しており、ライブビューを見ながらの自撮りも確実にできます。
表示パネルは、前面・背面ともに有機ELになり、背面は2.5インチに大型化しました。明るい日中でも視認性が高く、角度が付いた状態でも鮮やかな表示で確認できます。撮影中や再生時にきれい!と感じられるのは、やはり気分がいいと感じます。
【まとめ】価格も意欲的、アクションカメラでもDJI旋風か
価格は、標準的なアクセサリーが付属するスタンダードコンボが55,000円ですが、バッテリー×2つと充電機能を備える多機能バッテリーケース2、1.5mの延長ロッドが付属するアドベンチャーコンボを69,300円で用意します。15分の充電で2時間使える急速充電機能を備えていることもあり、アドベンチャーコンボではなくスタンダードコンボでも十分実用的に活用できると感じます。GoPro最新モデルのHERO13 Blackは68,800円からなので、価格競争力も十分。DJIは、Osmo Pocketシリーズを擁するジンバルカメラの分野で圧倒的な人気を獲得していますが、アクションカメラの分野でもグンと飛躍するのは間違いなさそうです。