「CP+2024」が終わりました。私も、プレスとして2日目を除く3日間会場内を終日ぶらつき、その様子をつぶさに見てきました。ここでは「CP+2024」を取材した者として、また「フォトエキスポ」時代から「フォトイメージングエキスポ」時代を含む30年近く“カメラショー”に外から接してきた者として、思うところ、雑感を緩く記したいと思います。

  • CP+が開催されるようになって14年。開催当初からパソフィコ横浜を会場としています。近隣は絵になるところも多く、ちょっと足を伸ばせば中華街や元町もあるなどロケーションとしては最高

スマホ関連の製品やサービスもCP+で展示すべき

初日の2月22日(木)から最終日の25日(日)までの来場者合計は、主催者発表で4万8879人。この数字は、昨年のCP+2023よりも1万人以上多かったとのことです。24日(土)以外天候が芳しくなかったことを考慮すれば、まぁまぁの数字のように思えます。ただ、コロナ以前の数字、なかでも過去最高の人出はCP+2019の6万9615人でしたので、コロナ明けであることを差し引いてもちょっと物足りなく感じなくもありません。

  • 開場前の長い行列。写真は場内ですが、会場の外まで写真愛好家の列がつながっていました

実は「CP+」といっても、ほとんどの人はその存在を知らないように思います。フィルムカメラやスマホで積極的に撮影を楽しんでいる人でさえ、「何それ?」と返事されることが多々ありますし、“カメラの見本市”と言うと何となく理解してもらえることもありますが、そういうイベントが開催されていること自体、やはり知らない人が大多数です。名称が昨年から「JAPAN MOBILITY SHOW」と変わった「東京モーターショー」の認知度にはほど遠く感じます。CP+を主催するカメラ映像機器工業会(CIPA)は、限られた人や予算のなかでやり繰りしているのでしょうが、カメラや写真関連の枠を超える媒体を活用し、これまで以上の告知や宣伝の必要があるように思えてなりません。

  • ハンズオンコーナーはどこでも人気。長い列がどのカメラメーカー、レンズメーカーのブースでも見られました(富士フイルムブース)

  • 望遠レンズ、超望遠レンズのハンズオンコーナー。普段なかなか触れないカメラやレンズが思いっきり試せるのもCP+の魅力(キヤノンブース)

そのようななか、出展したらより認知度が上がるかもと思うのがスマホ関連。個人的には携帯キャリアも含め、スマホメーカーのブースもCP+の会場で見てみたい。スマホのなかには、今回ブースを出したハッセルブラッド銘のレンズを搭載したものもありますし、カメラとしての機能も不足はありません。何より、スマホはいまや国民のほとんどが持っている撮影デバイス。スマホをカメラのひとつとして捉え、展示すれば、カメラと写真のイベントとして訴求効果も高いように思えます。

前述の東京モーターショーが「JAPAN MOBILITY SHOW」と名前を変えたのは、展示がクルマやバイクだけにとどまらないことの表れであるといいますし、実際昨年の開催では電車やドローンなども展示されていました。それと同じです。ただ、やっぱ難しいかな。コンパクトデジカメというジャンルを潰した元凶であるスマホ関連のキャリアやメーカーがブースを構えるのを、CIPAは嫌がるかもしれません。

  • Z世代と呼ばれる若い世代、それでも女性だけのペアやグループも多く来場していました。InstagramやTikTokなどにアップする写真や動画のための機材を探しているのかも(タムロンブース)

  • 今回の目玉のひとつ、プラレールのジオラマでの1カット。子どもたちの注目を集めるとともに、自分のカメラのAFなどを確認する場にも。カメラとは直接関係ないものですが、このようなブースもまた楽しい

今回のCP+では、以前まで参加していたいくつかのメーカーがブースを出していなかったのはちょっと寂しく思えたところです。三脚やカメラバッグでよく知られたあの海外ブランドや、派手なステージで毎回賑わっていたストロボのあのメーカー、ドローンやジンバルで人気の高い中国のメーカーなどなど。もちろん、ブースを出す費用は安くないと聞きますし、それぞれの懐事情などもあるかとは思いますが、元気のあるところを見せてほしいですし、来場者もそれを期待しているところがあるかと思います。

そのようななか、コロナ以降出展を控えていたEIZOなどが今年ブースを出し、多くの来場者で賑わっていたのは嬉しく思えるところでした。また、ケンコー・トキナーは今回ブランドに応じて3つのブースを会場内に分散して展開していましたが、写真関連用品の総合商社ならではのもので、とても面白い試みに思えました。ただし、ミスターケンコーこと同社の有名広報マン、田原栄一氏は3つのブースを終始駆け回らなければならず、大変だったでしょうが。

男性モデルが増え、カメコが消えた

ミニスカートにブーツだったり、派手な色のコスチュームだったりと、会場内で目立つ格好のいわゆるコンパニオンがますます少なくなったのも今回のCP+の特徴のひとつです。以前は、あちこちのブース前で多数見かけることができましたが、今回は“絶滅危惧種”に例えられるほど。取材前、マイナビニュースの担当者編集者からは「コンパニオンは必ず撮っておいてね、ボク好きだから」と指示をいただきましたが、もちろん期待に十分応えることはできませんでした。また、カメラに大口径望遠レンズとストロボを付け、コンパニオンを専門に撮影する“カメコ”の姿もほとんど見られず、こちらも寂しく思えるところでした。どこいっちゃったんでしょうね、コンパニオンとカメコ。

  • 中国のメーカーのブースで出番を待っていたモデル。セーラー服に引かれてシャッターを切ったわけではありません

  • すっかり影を潜めてしまったコンパニオン。そのようななかでも頑張っているブースもありました。それにしても“カメコ”はいずこへ?(SDアソシエーションブース)

反対によく見かけるようになったのが、男性モデル。派手なアクションスポーツなどは従来から男性がモデルを務めることが多いのですが、それとは異なり、ファッショナブルなコスチュームを纏い、立ち姿で一人または女性モデルとペアで被写体となっている男性のモデルを起用するブースが増えました。今回、ソニーやタムロンなどのブースで見かけましたが、ある意味とても新鮮。男性ファッション誌から抜け出してきたようで、同性から見てもカッコいい。女性の写真愛好家の方々はどう思うか知りたいところでもありますが、先のほとんど見かけることのなくなったコンパニオンとともに時代の移り変わりを強く感じさせるものでした。

これまであった、アウトレットの物販コーナーがなかったのはちょっと寂しく感じられたところです。あれほど賑わっていたのに止めてしまうというのは、主催者であるCIPAには何か考えがあったのだと思いますが、来場者の立場から言えば会場の面白さ、賑やかさに少し欠けるように思えてしまいます。同様に、コロナ以前にパシフィコ横浜内の別会場で開催していた中古カメラの即売会も行われておらず、こちらも同様に思えました。ブースの展示そっちのけで物販コーナーに並ぶ入場者もいたことがなくなった理由なのかもしれませんが、いずれも復活を望みたいところです。

今回のCP+について思いつくままを書いてみました。いわゆるコロナ明けのCP+としては2回目の開催となりました。前述したとおり、コロナ以前の入場数にはまだ及ばないところはありますが、それでもかつての勢いが徐々に戻ってきたように思えます。来年は、今年以上に魅力あるカメラやレンズ、アクセサリーなどが発表され、それに合わせて入場者が増え、より賑やかになることを期待したいと思います。次回「CP+2025」は2025年2月27日(木)から3月2日(日)まで同じパシフィコ横浜で開催される予定です。

  • 規模の小さな企業のブースでも人が集まっているところは集まります。ひとつのブースを2つのメーカーで折半して使っているところありました(よしみカメラ&サクラスリングブース)

  • フェンシングを被写体に撮影が楽しめるハンズオンコーナーのステージ。動きものを得意とするカメラにとって絶好の被写体のようでした(ソニーブース)

  • 蔵書とする写真集を展示、開放したブース。貴重な写真集から、若手写真家の写真集まで広く手にとって見ることができました(シグマブース)

  • ステージはどこのメーカーのブースでも人気。多くの写真愛好家が有名写真家、カメラマンの話を熱心に聞き入っていました(OMデジタルソリューション)