機能的に高次元でバランスのとれた「EOS R6 Mark II」。ミドルレンジクラスのミラーレスとして、完成度が高く手堅いつくりのカメラに仕上がっていることは、前回のレビューでお伝えしました。今回は、デジタル一眼レフEOSとの比較を行い、その進化点をあらためて確認するともに、一眼レフからミラーレスへの乗り換えを考えている写真愛好家の参考になりそうな記事としてまとめてみました。比較で用いたデジタル一眼レフは、EOS R6 Mark IIとクラス的には同じと考えられる「EOS 6D Mark II」。果たして、その結果はいかがだったでしょうか。

  • EOS Rシステムのミドルレンジクラスとして手堅い進化を遂げた「EOS R6 Mark II」。写りや機能、操作感の完成度は高く、プロからビギナーまでの幅広いユーザーに訴求できるモデルです。実売価格は、ボディ単体モデルが396,000円前後、RF24-105 IS STMレンズキットが44万円前後、RF24-105 L IS USMレンズキットが55万円前後となっています

AF性能に大きな差、RAWバーストモードの存在も注目

EOS R6 Mark IIとEOS 6D Mark II、大きな違いと言えば、ファインダー、AF、シャッター、そして大きさ・重さとなるでしょう。

  • 一眼レフ「EOS 6D Mark II」(左)にくらべ、一回りコンパクトなEOS R6 Mark II(右)。EOS R6 Mark IIは、マウント径がより一層大きく感じられます。欲を言えば、EOS R6 Mark IIのトップカバーにもディプレイが欲しいところ

ファインダーは、EOS 6D Mark IIが光学ファインダー(OVF)であるのに対し、EOS R6 Mark IIは電子ビューファインダー(EVF)となります。OVFの見え具合はクリアでスッキリ、リアル感あるもの。被写体の動きと、ファインダーに表示される被写体の動きのタイムラグもありません。一方、EVFは有機EL(OLED)による表示のため、OVFには残念ながら及びません。しかしながら、解像度は369万ドットと高精細、高コントラストですので、慣れてしまえばさほどの違和感はないでしょう。それよりもEVFは、露出やホワイトバランスなどの状態がリアルタイムで確認できるうえに、ファインダーを覗いた状態のまま撮影直後の画像(ポストビュー)が見られます。また、撮影に関する多くの情報もファインダー内に表示でき、マニュアルフォーカス時には便利なスルー画の拡大表示も可能。見たままのクリアで鮮明な画像で撮影を楽しみたければOVFのEOS 6D Mark II、露出などの状況をリアルタイムに知りたければEVFのEOS R6 Mark IIとなります。ちょっと好みが分かれるところです。

  • 両者の大きな違いはファインダーにあります。背面の操作部材の違いは、マルチコントローラーとサブ電子ダイヤルの有無となります。特にマルチコントローラーについては、測距点の移動が直感的に可能で、操作性の向上に一役買っていると述べてよいでしょう

AFについては、まずフォーカスエリアの広さの違いがあります。EOS 6D Mark IIは、画面の中央周辺のみを測距点がカバーしているのに対し、EOS R6 Mark IIはほぼ画面全域をカバー。ファインダー内のどの位置に被写体があってもピントを合わせられます。測距点の数もEOS 6D Mark IIが最大45点であるのに対し、EOS R6 Mark IIは最大1,497点(ポジション)と圧倒的。ファインダー使用時は、構造的に狭い範囲にしか測距点の置けないデジタル一眼レフと、イメージセンサー自体がAFセンサーともなるミラーレスとの違いが如実に現れた結果と言えます。ただし、合焦スピードはどちらもいい勝負。以前は、AFスピードがミラーレスのウィークポイントと言われていましたが、今ではそのようなことはなく、カメラや条件によってはミラーレスのAFのほうが速いうえ、より精度の高いピント合わせが可能です。

  • ▲EOS R6 Mark II

  • ▲EOS 6D Mark II

  • EOS R6 Mark IIは被写体認識AFを選択。EOS 6D Mark IIの測距点は1点としています。やはり安心感が高いのがEOS R6 Mark II。一度捕捉すると、狙った被写体がどこにあってもピントを合わせ続けるため、アングルを自由に変えたり、シャッターチャンスに集中できます。測距点が中央に集まるEOS 6D Mark IIでは、被写体も中央寄りになりがち EOS R6 Mark II・RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM・絞り優先AE・WBオート・ISO800・JPEG EOS 6D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6 L IS II USM・絞り優先AE・WBオート・ISO800・JPEG

  • 検証で使用したレンズを装着した状態となります。一眼レフ用の「EF100-400mm F4.5-5.6 L IS II USM」(左)よりもミラーレス用の「RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM」(右)の全長が長いのは、テレ端の焦点距離が100mm長いため、と考えられます

AFに対応するレンズの明るさは、EOS 6D Mark IIがF8、EOS R6 Mark IIがF22。超望遠レンズにエクステンダーを付けての撮影など、一眼レフ時代ではAFが到底効くとは思えなかった組み合わせでも、EOS R6 Mark IIではAF撮影が楽しめます。技術の進化を強く感じさせてくれるところです。

そして、何よりEOS R6 Mark IIで心強いのが、最新のAI技術ディープラーニングを応用したトラッキング機能と被写体認識機能を搭載していること。前者は、SERVO AF(=AF-C)で動く被写体を追うときなど、被写体が測距点から外れてしまってもカメラが自動で被写体を追尾し、ピントを合わせ続けてくれます。これは先に述べたように、画面のほぼ画面全域をカバーするフォーカスエリアを持つミラーレスならではの機能と述べてよいでしょう。さらに後者の場合、「人物」では顔や瞳のほかに頭部や胴体も検出。「動物優先」では、犬、猫、鳥、馬に、「乗り物優先」ではフォーミュラカー、GTカー、ラリーカー、オンロードバイク、オフロードバイクに加え鉄道と飛行機にも対応します。EOS 6D Mark IIでも、ライブビュー撮影時には顔優先撮影を可能としていますが、EOS R6 Mark IIの圧倒的な被写体認識機能には残念ながら遠く及びません。

  • ▲EOS R6 Mark II

  • ▲EOS 6D Mark II

  • どちらもSERVO (=AF-C)で撮影。EOS 6D Mark IIはすべての測距点を選択、EOS R6 Mark IIは被写体認識を「人物」に、トラッキング機能をONにしています。結果的には、どちらもしっかりと被写体を捕捉しています。ただし、画面全体で測距が可能なEOS R6 Mark IIにくらべ、EOS 6D Mark IIは画面の中央周辺にしか測距点がないため、どうしても被写体の位置に制約が生じます EOS R6 Mark II・RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM・絞り優先AE(絞りf5)・WBオート・ISO800・JPEG EOS 6D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6 L IS II USM・絞り優先AE(絞りf5)・WBオート・ISO800・JPEG

  • ▲EOS R6 Mark II

  • ▲EOS 6D Mark II

  • 離陸する航空機を狙いました。測距点が中央周辺のみのEOS 6D Mark IIは、画面の中央に航空機が集まりがち。一方のEOS R6 Mark IIは、被写体認識AFの「乗り物優先」で撮影しています。この機能を活用すれば、どこに被写体があってもピントが合うため、滑走路助走中は画面の下部に、離陸後は画面上部に被写体を置くような撮影が手軽に楽しめます EOS R6 Mark II・RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM・絞り優先AE・WBオート・ISO400・JPEG EOS 6D Mark II・EF100-400mm F4.5-5.6 L IS II USM・絞り優先AE・WBオート・ISO400・JPEG

シャッターは、何と言っても電子シャッターの違いとなるでしょう。EOS 6D Mark IIは電子先幕時のみの機能となりますが、EOS R6 Mark IIでは電子シャッター単独での撮影が可能。その場合のコマ速は40コマ/秒、最高シャッター速度は1/16000秒を実現しています。ローリングシャッターゆがみは条件によってわずかに出ることもありますが、今回実写した限りは気になることもありませんでした。大口径レンズを絞り開放で、しかも晴天屋外で使いたいときなど電子シャッターは重宝するはずです。

さらに、RAWバーストモードもミラーレスならではの機能と言えます。電子シャッターで30コマ/秒の高速連続撮影が行えるとともに、シャッターボタンを押す0.5秒前からの記録を行います。そのため、ボクシングでのパンチの瞬間や、野球のバッターがボールを打った瞬間、昆虫の飛び立つ瞬間などの撮影を容易にしています。写真愛好家にとっては心強い味方といえるでしょう。なお、メカシャッターの場合、EOS 6D Mark IIの最高シャッター速度は1/4000秒、最高コマ速は6.5コマ/秒であるのに対し、EOS R6 Mark IIは1/8000秒、12コマ/秒としていることも見逃せない部分です。

  • RAWバーストモードで撮影。シャッターを切る前に記録された画像となります。シャッターチャンスと思いシャッターを切ってもどうしても一瞬遅くなることがありますが、そんなときにとても役立ちます EOS R6 Mark II・RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM・絞り優先(絞りf7.1・1/500秒)・WBオート・ISO3200・RAW(Digital Photo ProfessionalでJPEGに生成)

  • このカットもRAWバーストモードによるもの。同機能は電子シャッターでの撮影となりますが、この作例を見る限りローリングシャッターゆがみの発生は気になりません。スポーツの撮影でも積極的に使ってみたい機能です EOS R6 Mark II・RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM・絞り優先(絞りf7.1・1/1000秒)・WBオート・ISO6400・RAW(Digital Photo ProfessionalでJPEGに生成)

一眼レフからの移行にふさわしい完成度

ボディの大きさ・重さは、EOS 6D Mark IIが144.0×110.5×74.8mm(幅×高さ×奥行き)・765g(バッテリー、メモリーカード含む) 、EOS R6 Mark IIが 138.4×98.4×88.4(同)・670g(バッテリー、メモリーカード1枚含む)となります。ミラーレスであるEOS R6 Mark IIがいかに一眼レフのEOS 6D Mark IIにくらべコンパクトで軽量に仕上がっているかがよく分かります。一眼レフの大きさ・重さが苦になるようであれば、迷わずミラーレスとなるでしょう。ただし、レンズのなかには同じ焦点距離、同じ開放値ながらミラーレス用のRFレンズのほうが一眼レフ用のEFレンズよりも重いことも。例えば、一眼レフ用のEF24-70mm F2.8L II USMはφ88.5×113mm・805gであるのに対し、ミラーレス用のRF24-70mm F2.8 L IS USMはφ88.5×125.7mm・900gで、ちょっと悩ましく感じるところです。

  • 開放F2.8の標準ズームレンズをそれぞれに装着した状態。バックフォーカスの長い一眼レフ用の「EF24-70mm F2.8L II USM」よりも、ミラーレス用の「RF24-70mm F2.8L IS USM」のほうがなぜか大きさ・重さとも上回っています

そのほかの部分としては、キーデバイスであるイメージセンサーの違いがあります。EOS 6D Mark IIが有効2,620万画素であるのに対し、EOS R6 Mark IIは有効2,420万画素となります。画素数ではEOS 6D Mark IIが上回っていますが、解像感に関して言えば両者の違いは感じられません。デジタルデバイスの進化を強く感じさせるところです。また、このイメージセンサーは、手ブレ補正機構を備えているのも、EOS 6D Mark IIに対するアドバンテージ。5軸対応で同じく手ブレ補正機構を備えるRFレンズとの組み合わせであれば、最大8段もの補正効果が得られます。低照度下での手持ち撮影や、望遠レンズでの撮影などとても心強く感じられるはずです。

いくつか見比べてみましたが、2017年8月発売のデジタル一眼レフと、2022年12月発売の最新ミラーレスと比較するのは大きな違いがあることが分かりました。以前からデジタルの進化は日進月歩と言われてきましたが、それを改めて認識するとともに、ミラーレスの可能性を強く感じさせる結果と述べてよいでしょう。それは同時に、一眼レフを愛用する写真愛好家がミラーレスに移行するための不足のない理由にもなると思われます。ただ誤解してほしくないのは、EOS 6D Mark IIもデジタル一眼レフとして基本的な性能および機能にいまだ不足を感じることはなく、一眼レフが好きという写真愛好家に未だ強く訴求できるように思えます。

何はともあれ、多彩な機能と卓越した写りでミラーレスとして手堅くまとまったEOS R6 Mark II。EOS RシステムのみならずEOSシリーズの新しいスタンダードとなりそうです。

  • 解像感の高いレンズで撮影していることもありますが、線が細く、キレキレのエッジで高精細な写りです。被写体の細かな部分も緻密に再現しており、立体感のある写りが得られました EOS R6 Mark II・RF50mm F1.8 STM・絞り優先AE(絞りf2.8・1/6400秒)・WBオート・ISO100・JPEG

  • 明暗比の極めて高い被写体を撮影。「オートライティングオプティマイザ」をあえてOFFにし、コントラストの高い写真としてみました。空のグラデーションが滑らかに変化しており、美しく感じます EOS R6 Mark II・RF16mm F2.8 STM・絞り優先AE(絞りf4・1/2500秒)・WBオート・ISO100・JPEG

  • こちらも「オートライティングオプティマイザ」をOFFにし、メリハリある写真としてみました。ミラーレスならEVFでリアルタイムに画像の状況が把握できるため、露出を追い込むのも簡単です EOS R6 Mark II・RF50mm F1.8 STM・絞り優先AE(絞りf4・1/3200秒)・WBオート・ISO100・JPEG

  • 小さな被写体も分離がよく、リアルに再現します。ピントもカメラ任せながら、被写体である柿をしっかりと捕捉しています EOS R6 Mark II・RF50mm F1.8 STM・絞り優先AE(絞りf4・1/640秒)・WBオート・ISO100・JPEG

  • ピントは手前の傾いた立て看板に合わせています。絞りはF5.6ですが、背景のビルも被写界深度内に収まり、パンフォーカスとなりました。スルー画の拡大表示でピントの拡大も容易としています EOS R6 Mark II・RF35mm F1.8 MACRO IS STM・絞り優先AE(絞りf5.6・1/1600秒)・WBオート・ISO100・JPEG

  • コントラストの高い写りとするために「オートライティングオプティマイザ」をOFFにしています。結果は狙いどおり。一見するとコントラストの強いモノクロ写真のような仕上がりが得られました EOS R6 Mark II・RF35mm F1.8 MACRO IS STM・絞り優先AE(絞りf5.6・1/800秒)・WBオート・ISO100・JPEG

  • 背景から被写体を浮き立たせるため、絞りはF2としています。シャッター速度は1/5000秒。もう少し日差しが強くなると、電子シャッターの出番となるはずです EOS R6 Mark II・RF35mm F1.8 MACRO IS STM・絞り優先AE(絞りf2・1/5000秒)・WBオート・ISO100・JPEG

  • このようなシーンは、EVFで露出の状況がリアルタイムで把握できるミラーレスの得意とするところ。露出をギリギリまで切り詰め、より思い通りの仕上がりが得られます EOS R6 Mark II・RF35mm F1.8 MACRO IS STM・絞り優先AE(絞りf5.6・1/1000秒)・WBオート・ISO100・JPEG