ライアットゲームズは、eスポーツ大会プラットフォーム「Adictor」で開催されるモバイル版MOBAゲーム『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト(ワイリフ)』の複数のコミュニティ大会に、認定大会として賞金10万円を付与する「ワイリフ認定大会強化月間」を2021年11月に実施しました。
開催された賞金付きコミュニティ大会は1カ月で8つ。累計の動画再生回数は1万9,671回、Twitterインプレッションは98万7,168、大会参加総数は966人という結果を残しました。
賞金がつくことで、プレイヤーは参加するモチベーションが上がります。コミュニティ大会を主催する人にとっても大会の認知向上に期待できるでしょう。さらに、タイトルの活性化によって、「Adictor」では『ワイリフ』のコミュニティ大会の数が増えたといいます。
多方面で恩恵の大きかった「ワイリフ認定大会強化月間」。ライアットゲームズ ブランドマネージャーの高田ダスティン氏と、「Adictor」を運営するウム(ログリーの100%子会社)の藤澤裕人氏に、実施の経緯とその効果、今後の予定を聞きました。
――ワイリフ認定大会強化月間を開催した経緯をお聞かせください。
高田ダスティン氏(以下、高田):コミュニティ大会を強化するために、2021年の夏ごろに定期的に大会を開催できる運営会社やインフルエンサーを探していました。そこで、2021年7月から「Adictor」の運営チームと「花金杯」の定期開催をスタート。毎週金曜日に『ワイリフ』の大会を開催した結果、大会用のDiscordサーバも盛り上がり、ここであればコミュニティ大会の強化ができるのではないかと考えました。
賞金をつけたのはある種テスト的な面もありました。ちょうど2021年10月末に『ワイリフ』の1周年記念、11月にはワイリフ初の国際大会公式の「Horizon Cup(ホライゾンカップ)」が開催されるなど、ワイリフの催しが増えるタイミングだったので、コミュニティ大会も賞金を付けて盛り上げたいと思ったんです。
「ワイリフ認定大会強化月間」では、インフルエンサーなどにもお声がけし、計8件の大会を開催しました。それぞれの大会に特色を持たせるために、通常5人対5人でプレイするところ1人対1人で対戦する「1v1大会」や、相手に使わせるチャンピオンを選んでいく「逆ドラフト杯」なども行いました。賞金付きの逆ドラフト杯はかなり珍しかったですね。
藤澤裕人氏(以下、藤澤):Adictorとしては、非常にありがたいお話でした。Adictor自体がeスポーツのコミュニティ大会を盛り上げたい想いから始まったプラットフォームです。なので、IPホルダーがかかわったうえで、エンタメ的に大会を開催できるのはありがたいですね。
バラエティ豊かなコンセプトの大会が1カ月間あったことで、ユーザーにも楽しんでもらえたのではないでしょうか。
――ワイリフ認定大会強化月間の大会開催数は8回でしたが、この数字についてはどんな印象でしょうか。
高田:回数は予想内でした。とにかくこの強化月間では、どのタイミングでゲームを起動しても大会が開催されており、気が向いたらすぐに参加できるような期間にしたかったんです。そういう意味では、もっと多くてもよかったのですが、週2で大会ができたことには満足しています。大会ラッシュで選択肢も多く、楽しんでもらえたのではないでしょうか。
一方、主催者側は大変だったと思います。先ほど言ったとおり、さまざまなルール、コンセプトで行ったので、それらを把握し、しっかり対応するのは難しかったかもしれません。今後開催するのであれば、もう少し運営の参加ハードルを下げたいですね。
――動画再生回数やTwitterインプレッション、大会参加総数についてはいかがでしょうか。
高田:ライアットゲームズとしては参加人数を主に見ていました。いくつかの大会は参加人数の上限に達してしまったので、応募者数としては3,000人近くだったと思います。最初の強化月間としては、人数的にも満足のいくものでしたね。2021年にさまざまな企画や配信イベントを行ったんですが、その中で一番成功したのが「ワイリフ認定大会強化月間」でしょう。また、プレイヤーの参加地域もかなり広く、関東がもちろん多いんですが、それでも4割くらい。思った以上に地方からの参加者がいました。
――1大会10万円の賞金に対して、今回のKPIや満足度など、費用対効果についてはどのように見ていますでしょうか。
高田:抜群の効果だったと判断しています。このままの状態をキープできるのであれば、もっと大きくできますし、規模に応じて賞金を増やす可能性もあるでしょう。
――今後も賞金付きのコミュニティ大会は継続していくということでしょうか。
高田:はい。今後も賞金付きコミュニティ大会は継続していきたいと考えています。2022年はまだ実施していないんですが、そろそろ考えていきたい。あと、前回は1カ月行いましたが、もう少し中長期的に楽しめるようにもしていきたいですね。リーグ戦の開催は運営側が厳しいので、大会に優勝したら賞金以外にその次の大会の参加権がもらえるなど工夫できればと思います。
また、大会を継続するためには「開催のしやすさ」を考える必要があるでしょう。フォロワーの多いインフルエンサーでも、大会を開いたことがない人は結構多いんです。とはいえ、興味がある人も多いようなので、大会運営を気軽にできるようにサポートしていきたいですね。もともと『ワイリフ』は観戦モードがあり、大会を開催しやすいタイトルですので、少しのサポートですぐに大会を運営できるようになるはずです。
――ワイリフ認定大会強化月間では、どの大会に注目されたのでしょうか。
高田:個人的に好きだったのは、「プレミアム花金杯」ですね。『ワイリフ』のコミュニティ大会としてすでに定着しています。コミュニティ内では、特に1v1ランダムミッド杯(主催者:チケンナゲット)の大会が盛り上がりました。
『ワイリフ』は『リーグ・オブ・レジェンド』に比べてマップが狭いので、2対2や3対3など集団戦が起きやすいんですよね。なので、1v1は珍しく、その分、新鮮な感じでプレイしてもらえたんじゃないでしょうか。チーム戦でないので、賞金を独り占めできますしね。
あとは「逆ドラフト杯」。これもおもしろかった。本来は自分達が使いたいチャンピオンを指定するのですが、逆ドラフトでは相手に使わせるチャンピオンを指定します。普段使われないようなチャンピオンが登場したり、バランスの悪い構成でどうやって対戦するか、見ごたえがありました。
――ライアットゲームズから見たAdictorの印象を教えてください。
高田:Adictorのサポート体制は評価しています。強化月間を行う前に、花金杯の様子を見て、本当に丁寧に運営しているのがわかりました。運営を下請けに任せたり、配信や宣伝は違うところに任せたりして、役割を分散させることが多い中で、Adictorはすべて一括してやっているので、微調整が行えるのも魅力です。当日の無断欠席などの穴埋めもしっかりできており、1人の欠席者によってチームが失格にならないようにしているんです。
藤澤:参加人数の上限を超えた大会では、参加に漏れてしまった人に当日待機してもらっているんです。欠席が出たら、そこから参加者を募って、補填するようにしています。
――1人でも欠けたら対戦できなくなるチーム戦のゲームで、当日の補填はありがたいですね。
高田:一方で改善していただきたい点としては、Webサイトですね。参加しやすいシステム作り、ライアットゲームズアカウントとの紐付けなんかもできればいいなと思っています。
『ワイリフ』は、5人集めればいいわけではありません。それぞれのロール(ポジションのようなもの)も合わせないといけないんですよね。バロンレーン、ミッドレーン、ドラゴンレーン、ジャングル、サポートの5つのロールがありますが、とりあえず人数だけを集めてしまうと、全員ジャングルなんてことにもなりかねない。そういうことが起こらないように、チームバランスのランク調整とロールの希望を反映できるといいですね。希望ロールが被って、誰かが仕方なく不得意なロールや、未経験のロールを担当することは、できるだけ避けたいところです。
――チーム参加と、個人参加でチームを斡旋してもらう人はどちらが多いのでしょうか。
藤澤:最初のころはチームでの参加も多かったんですけど、最近は個人での参加が多いですね。チームだと全員の予定を合わさないといけませんから、個人のほうが気軽に参加できるのでしょう。
中には、個人参加者どうしで仲良くなることもあります。斡旋で編成された個人参加者のチームが意気投合して、次の大会でチームとして参加してくれたこともあって、うれしかったですね。
――強化月間の課題と成果を教えてください。
高田:課題は、想定外のゲームのバグの発生や、大会ルールの明確化が足りなかったことによって、主催者の負担が大きかったこと。今後は、公式と主催者がもっと連携して、主催者の負担を減らしていきたいと思います。成果としては、大会に参加してくれた人数、ソーシャルメディアやYouTubeなどを含む高いエンゲージメント数です。
――賞金提供を含めた今後のコミュニティ大会支援の予定をお聞かせください。
高田:大会をスタートした以上は継続していきたいですね。どこかのタイミングで大会がなくなってしまうのだけは避けたい。1カ月集中して大会を開催する形式の強化月間は成功したので、2022年も似たようなことをやっていきたいと思います。定期的なイベントとして、毎週、隔週、定期的に大会を開催できるパートナーを探していきたいですね。
藤澤:Adictorとしては、このままの状態で1,000人を超える大会やると、運営が回らなくなります。人を増やすのではなく、システムで課題解決したいと考えています。先ほども言いましたが、『ワイリフ』の場合、ランク帯、ロールなどさまざまな条件をクリアして、チームを編成しなくてはなりませんが、最終的には、自動マッチングシステムですべて行えるようになればいいなと。キャンセル待ち、ドタキャンなどもすぐに対応できるようになれば、プレイヤーはより参加しやすくなるでしょう。
――最後に、コミュニティ大会ならではの魅力について教えてください。
高田:『ワイリフ』が好きなファンにとって、“共感できる場”が必要です。それがないと、いくら情熱があっても続けられません。やっぱり好きなものは語りたいんですよね。本来ならばオフラインの場も作りたいんですが、社会情勢上難しい。コミュニティ大会はその役割を大きく担ってくれたと感じています。もちろん、コロナ禍が収まれば、オフライン大会もやりたいですね。
また、『ワイリフ』は各国でローンチの時期が違ったので、2021年は足並みそろえて世界大会に向けたローカル大会が行うことができませんでした。ですが、準備期間はもう終わり。2022年は、シーズン1としてリーグ戦にも期待してください。
――ありがとうございました。