米クアルコムとしては初めてとなる、ゲーミングデバイス向けの5G対応SoC「Snapdragon G3x Gen 1 Gaming Platform」が発表されました。ゲーミングPCやゲーミングアクセサリーの人気ブランドであるRazerと共同で、ポータブルゲーム機のリファレンスキットも作り、12月上旬から開発者向けに提供します。
モバイルSoCで培ったノウハウをゲーミング分野に拡大
クアルコムは近年、Snapdragonを搭載するAndroidスマホで快適なゲーミング体験を実現するためのテクノロジーを、「Snapdragon Elite Gaming」としてパッケージにして提案してきました。
その過程で培ってきた技術をベースに、「さまざまな新しいコンシューマーデバイスにモバイル体験を拡大していくことがクアルコムの使命。XR・ARデバイスやコネクテッドカーに向けたSoCも幅広く展開してきたが、今後さらに大きな市場へと成長を遂げていくであろう、モバイルゲーミングのために設計を最適化したSoCがSnapdragon Gシリーズ」(クアルコムのプレジデント兼CEO、クリスティアーノ・アモン氏)と、クアルコムが12月2日に開催した技術セミナーで説明しました。
Snapdragon G3x Gen 1プラットフォームには、最大3GHzのKryo CPU、10bit階調のHDRグラフィック、および動画の場合は最大144fpsのフレームレートでスムーズに表示できるAdreno GPUを統合。触覚フィードバックセンサーや4Kテレビ出力、高速充電といった機能も組み込んでいます。
5G通信機能を持つポータブルゲーム機の開発が可能
ゲーミングデバイス単体で5G通信できるように、モデムとRFシステムもプラットフォームに組み込んでいます。5Gモデムはミリ波とSub-6の5G通信をサポート。Wi-Fi・Bluetoothの無線通信については、モバイル向けのSnapdragon 8 Gen 1と同じサブシステム「Qualcomm FastConnect 6900」を載せ、Wi-Fi 6・6Eによる安定した高速通信を可能にしています。
Bluetoothオーディオは、2021年3月に発表したSnapdragon Soundへの対応も可能。同じSnapdragon Soundに対応するワイヤレスヘッドセットをペアリングすれば、低遅延性能に優れるaptX Adaptiveコーデックによって、コントローラーからの入力信号にレスポンス良く反応するサウンドを楽しめます。
また、ディスプレイのタップ操作をコントロールボタンや十字キーによる操作にマッピングして、さまざまなゲームを操作できるインタフェースも実装しています。これはAKSys社との共同開発です。
ほかにも、Snapdragon G3x Gen 1チップを搭載するデバイスにXRビューアーをつないでマルチスクリーンゲーミングを楽しんだり、ゲームコンテンツを4Kテレビに表示しながら、ゲーム機をコントローラーのように使うプレイスタイルも実現できるそうです。
今回提供が始まるリファレンスキットは、Razerとの共同開発によるもの。クアルコムのProduct Management Sr.DirectorであるMicah Knapp氏は「モバイルゲーミングの深い見識を持つパートナーであるRazerとともに、Snapdragon Gシリーズを採用するゲーム機、対応するコンテンツを開発するデベロッパーに活用してほしい」と呼びかけています。
あくまで開発向けのキットとして提供されるデバイスですが、USB Type-CからHDMIへの変換ケーブルを使ってテレビに接続したり、XRビューアーとの接続機能を搭載できる仕様になっています。6.65インチの有機ELディスプレイは、Snapdragon Gシリーズのチップ上で走る最大120Hz表示のHDRグラフィックスを駆使したゲーミングコンテンツの開発をサポートします。今回の技術セミナーでは、Snapdragon Gシリーズの採用を決めたパートナーに関する発表はなかったものの、Razerあたりがコンシューマー向けのゲーム機も発売してくれることに期待です。