ニコン「Z fc」の発売開始から1カ月あまり。このAPS-Cフォーマットのミラーレスは老若男女を問わず大いに注目を集め、同時に数々のメディアに取り上げられるなど、同社のカメラとしては久々の盛り上がりを見せています。
マニュアルフォーカスのフィルム一眼レフ「FM2」をイメージしたというボディのトップカバーには、アナログ表示のメカニカルダイヤルが並び、ボディ自体も往年のフィルム一眼レフを彷彿させる大きさ、重さに仕上げています。操作性については、古いカメラをイメージしたからといって決して悪いものではなく、むしろ直感的で分かりやすいなど、クラスを超えた仕上がりとしています。
これに俄然色めき立ったのが、2013年に登場したフルサイズデジタル一眼レフ「Df」の熱心なユーザーたち。Dfユーザーが集まるFacebookのグループではZ fcの発表以来、Dfの後継モデルの話題で盛り上がっています。Z fcのヒットを受け、同じコンセプトのフルサイズモデルの登場も考えられます。そこで今回は、独自の見解による“フルサイズZ fc”、別の言い方をすれば“ミラーレスDf”の姿を大胆に予想してみたいと思います。
外観のモチーフは名機「F3」になるか
まずイメージとするモデルですが、Z fcの例を考えるというまでもなくフィルム一眼レフ「F」「F2」あるいは「F3」のいずれかとなるでしょう。「Df」は特定のモデルをイメージしたものではありませんでしたが、Z fcの成功を考慮すると、何らかのモデルを模範とする可能性は高いはず。
Z fcのスタイルから考えれば「F2」が有力と感じますが、カメラとしての完成度の高さや人気を考慮すると「F3」ではないかと考えられます。ブラックボディで控えめながらグリップを備え、赤い垂直ラインもきっとあるはず。もちろん、ペンタカバー周辺は同モデルを彷彿とさせるシェイプとなるでしょう。マウント周辺のエプロンはZ fcと同様にないか、わずかに凸部を設けるかもしれません。個人的には、エプロンがあるとよりシェイプがF3に近くなるように思っています。
操作部材のレイアウトについては、Z fcに準じたものとなるでしょう。トップカバー左側の巻き戻しレバーの部分は、ISO感度ダイヤルとそれと同軸に撮影モードレバー切り替えレバーを、右側のフィルムカウンターのところには露出補正ダイヤルが備わるはずです。なかでも露出補正ダイヤルについては、「Df」ではトップカバー左側にあるため操作性が悪く不評でしたので、必ず対応してくると思われます。フロントのサブコマンドダイヤルもZ fcと同様に備わるでしょう。ボディが大きくなることに合わせてダイヤルの側面もひとまわり厚みを増し、クリック感も含めて操作性は向上するものと思われます。
カメラ背面については、「Z 7II」や「Z 6II」と同様にフォーカスポイントが素早く選択できるサブセレクターと、AF-ONボタンは備えてほしいところです。メインコマンドダイヤルも、カメラ前面のサブコマンドダイヤルと同様に操作面の幅などひとまわり厚みが増し、操作しやすくなるはずです。
液晶モニターは、スマートなボディシェイプを保つために、ヒンジ部が出っ張るバリアングルタイプではなく、チルト式となるでしょう。このクラスになると自撮りをすることは少ないと思いますし、静止画メインの用途を考えればチルト式でも不足を感じることはないはずです。もちろん、液晶モニターのサイズは3インチ以上、解像度は200万ドット以上がクラスとしてふさわしく思えます。そのほか外観に関するものとしては、シャッターボタンにはレリーズ穴を、アクセサリーシューはF3のプロ仕様モデルであった「F3P」のようにペンタカバー上部に備えてくるはずです。
デバイスはZ 5ベースでも、EVFにはこだわってほしい
キーデバイスについては、ちょっと悩ましいところ。グレードを考えるとZ 6IIをベースにしてほしいですが、コストを考慮すると「Z 5」がベースとなるハズ。もちろん、Z 5でも有効2432万画素と不足のない解像度を誇り、最高シャッター速度は1/8000秒を実現、5軸対応のセンサーシフト方式の手ブレ補正機構も備えているので、文句はないでしょう。EVFは、Z 5では369万ドットとしていますが、思い切って500万ドットクラスの高精細なものにすれば、一眼レフのOVF(光学ファインダー)に迫る見え具合となり、Dfの後継モデルにふさしいものとなりそうです。
フィルムカメラをイメージするのであれば、絵づくりもそれに見合ったものが欲しくなります。ピクチャーコントロールには、富士フイルムのベルビアやコダックのコダクローム、あるいはモノクロフィルムのトライXなどをシミュレートした仕上がりの搭載を希望したいところです。もちろん、パラメーターを備えて仕上がりの度合いが調整できるほか、よりフィルムライクな効果の得られる粒状感や、画面の四隅を暗く落とす周辺減光、色あせたような仕上がりになる効果などを付加できると面白そうです。ちょっとした遊び心として、画像の天地に一定の間隔で開けられている穴(パーフォレーション)を持つフィルムライクなフレームや、スライドフィルムを入れるマウントをイメージしたフレームもあったら楽しいでしょう。
そのほかの部分では、カードスロットはSDのデュアルでお願いできればと思います。スロットの位置は、底部のバッテリースロットとの共有ではなくボディ横とすれば、カメラを三脚にセットしたときなどカード交換のためにいちいち三脚からカメラを外す手間は不要となるでしょう。防塵防滴構造のボディもマスト。見た目はフィルム一眼レフながら、撮影に関する部分は質実剛健なカメラに仕上げてほしく思えます。価格については、Z 5をベースとするなら、上位モデルのZ 6IIよりも安いと嬉しく思えます。
“フルサイズZ fc”はたまた“ミラーレスDf”について思いつくまま希望を書きましたが、熱心なDfユーザーをはじめ、多くの写真愛好家も同様の考えだろうと思います。果たしてどこまで予想どおりのものとなるか、そもそも登場するのかどうか大いに気になるところです。伝え聞くところによると、Dfに2世代目が登場しなかったのは、売り上げが関係したとのこと。メーカーとして利益が出ないと判断したものは、製造はおろか開発費の用意もできないということなのでしょう。
そのようななか、Z fcの人気は私たち写真愛好家にとって一抹の光と述べてよく、“フルサイズZ fc”の行方は大いに期待していいと思えます。私の個人的な話となりますが、仕事や趣味でよく持ち出すカメラを収納する防湿庫のなかで、現在唯一の一眼レフとなっているのがDfなのです。それがミラーレスに置き換わる日もそう遠くないのかもしれません。