インターネットイニシアティブ(IIJ)は、成長を続ける産業IoT分野において、デバイスからネットワーク、セキュリティ、アプリケーションまでをワンストップで提供する「IIJ産業IoTセキュアリモートマネジメント」の提供を開始した。産業機械や工場などにおけるIoTの試験導入から本格展開まで、必要に応じてスケーラブルに対応できる。

産業機械や工場設備をIoT化するサービスのパッケージ

「IIJ産業IoTセキュアリモートマネジメント」は、産業機械や工場設備をIoT化するための各種デバイスから、セキュアなネットワーク、クラウド、デバイス管理機能やデータを見える化するアプリケーションまでを包括的に提供するサービス。産業機械・計測器メーカー向けの「IIJ産業IoTセキュアリモートマネジメント/Machinery」と、工場設備・生産管理部門向けの「IIJ産業IoTセキュアリモートマネジメント/Factory」の2種類が用意される。

  • MachineryとFactoryでは組み合わせる機器やサービスが微妙に異なる。目的別にあらかじめ最適なものがセットになっている

IIJは2019年から、台湾のアドバンテック社と協業して、同社の産業IoT向けプラットフォーム「WISE-PaaS」とIIJのセキュアなネットワークとクラウドサービスを組み合わせた「WISE-PaaS IIJ Japan-East」を共同開発し、IIJのクラウド「IIJ GIOサービス」上で提供しているが、今回の「IIJ産業IoTセキュアリモートマネジメント」は、産業機械や工場設備の稼働情報を取得するための各種エッジデバイス(アドバンテック製ゲートウェイ機器、産業PC、センサーなど)と、稼働情報のクラウドへのアップロードや各種エッジデバイスへリモートアクセスするための閉域ネットワーク(IIJモバイルサービス、IIJ IoTサービス)、稼働情報を収集・蓄積して見える化を行う産業用クラウドおよびアプリケーション(WISE-PaaS)を組み合わせ、ワンストップで提供する。

  • アドバンテック社のデバイスとIIJのサービス/ソリューションの組み合わせでは、エッジデバイスや接続手段の豊富さも強みとなる

稼働状況を監視するためのエッジデバイスは1台からスタートできるため、低コスト・短納期でのスモールスタートにも対応する。これにより、IoTの導入を考えているものの、コストやノウハウ、IT人材の不足に悩んでいる製造業でも、無理なく導入が可能になる。具体的には、デバイス1台の場合、月額1万7,000円からスタートできるという。

産業用IoTは本格化フェイズに入る

発表会では、IIJの立久井正和常務執行役員が挨拶。産業用IoTの課題として、ネットワーク前提に作られていなかったり、環境的・地理的要因からネットワークそのものを作るのが難しい場合があるが、IIJでは前者について、産業用コンピュータでシェア世界一、また産業用IoT専用プラットフォーム「WISE PaaS」を擁する台湾のアドバンテック社と協業することでカバー。また後者は、MVNO事業者としてLTEを使ってネットワークを構築したり、農業分野では乾電池で1シーズン利用できるLoRaWANを利用するなどして解決しているという。特にMVNOについては、法人向け回線の過半数はIoT用が占めているとのこと。

  • 産業IoTとは、企業ネットワークやコンピュータ、スマートフォンなどの延長上にあるものであると指摘する立久井常務

そしてIIJが展開しているネットワーククラウドサービス「IIJ Omnibus」やシステムクラウド「IIJ GIO」、セキュリティサービス「wizSafe」、そして上述したMVNO事業と、IIJの事業の全てはIoTに繋がっていくと強調した。

続いてIIJ IoTビジネス事業部長の岡田晋介氏と副事業部長の齋藤透氏より、IIJのIoT事業の概要説明が行われた。岡田氏によれば、産業向けIoTのマーケットはこの1~2年で、すでに実証実験(PoC)から本格的な取り組みにシフトしているという。これは企業の活動が、製品やサービスを売ったきりで完結する従来のワンストップな事業モデルから、サービスや商品とICTを組み合わせて継続的に提供し、価値向上をはかるサブスクリプションモデルへと変化している。さらに昨今の新型コロナウイルスの流行により、客先を訪問したり、出張することも難しくなっていることから、リモートでの検査・データ収集の需要が高まり、IoTの採用が本格化されているという。実際、IIJのIoT関連事業に関しても、売り上げは2018年比で49%増、案件数も2倍以上と急激な成長を遂げている。

IIJが提供しているサービスをIoTマーケットに適した形で提供するものと、センサーやネットワーク、クラウド、アプリケーションをパッケージ化し、特定分野向けのソリューションとして販売していく、2つの軸があると紹介。前者が「IIJ IoTサービス」であり、後者が今回発表された「IIJ 産業IoTセキュアリモートマネジメント」となる。

また、IIJが現在注力している分野として産業、農業、ホーム・見守り、エネルギーの4分野を紹介。いずれの分野でも着実に導入事例や実証事例を増やしているが、その中で産業分野における新たな取り組みが「IIJ 産業IoTセキュアリモートマネジメント」となる。

  • 農業と産業については7~8月にかけて別途大きな発表があったばかり。ホーム・見守りについても4月から産学共同で新しい実証実験がスタートしている

IIJ産業IoTセキュアリモートマネジメントについては、IIJからの直販に加え、特定分野にフォーカスしたシステムインテグレーター(DFSI)の協業パートナーも募集していくという。IIJの注力する分野以外への展開も期待される。