アユートはAcoustuneの有線イヤホン3機種を7月3日に発売しました。筆者は製品についてのメーカー発表リリースを読み進めるうちにすっかり気になってしまい、発売と同時に秋葉原のイヤホン専門店へ直行。試聴で音質に心を打たれ、60,000円台の「HS1657CU」を購入してしまいました。筆者の心を惹き付けたAcoustuneの新イヤホンを、1カ月使ってみた印象をお伝えします。

  • Acoustune「HS1657CU」レビュー!高解像感サウンドを楽しむ

    Acoustune「HS1657CU」

羽生結弦選手も使う、知る人ぞ知るイヤホンメーカー

Acoustuneは、アユートが国内正規代理店を務める香港のイヤホンメーカーです。イヤホンにただならぬこだわりがあると噂のフィギュアスケーター、羽生結弦選手も同社製品「HS1695TI」を装着して現れたことがあるようです。今回紹介するHS1657CUは同日発売された3製品のうち最も手ごろな価格の製品で、参考価格は税込71,980円。ネットでは66,000円を切るくらいで販売しているところも。「HS1697TI」「HS1677SS」「HS1657CU」の3機種はいずれもこれまで限定モデルだった製品やカラーバリエーションでラインアップを再構成し、ドライバーユニット素材の刷新やダンパー調整を行った製品となっています。

HS1657CUは、10mmの大口径ドライバーユニットに第4世代ミリンクスドライバーを搭載。振動板素材に人工皮膚や手術縫合糸に用いられるポリマーバイオマテリアル「Myrinx(ミリンクス)」を採用しています。ドライバーユニットを真鍮製音響チャンバーに収め、新形状のダンパーロッドを採用して調整を行うことで、深い低域表現と艶のあるボーカル帯域を実現したとのこと。周波数特性は10Hz~25kHzで、入力感度は110dB/1mW。音量はかなり取りやすく、スマートフォンでも十分に聴けると感じました。ちなみにHS1697TI(税込109,980円)はチタンを、HS1677SS(税込82,980円)はステンレススチールを音響チャンバー素材に使用しています。

  • 金色に輝く真鍮パーツと黒いハウジングが気に入っています

同梱ケーブル「ARC51」は、シルバーコートOFC線と極細OFC線を組み合わせた8芯仕様。個人的には柔らかくて取り回しが良く、とても快適だと思います。耳掛け型ですが、熱収縮チューブや形状記憶合金ワイヤーはありません。また、イヤホン側の端子には日本ディックスが新設計した「Pentaconn Ear(ペンタコンイヤー)」コネクターが採用されている点が特徴です。MMCXのようにパチっと留まるのではなくムニュリと刺さる感じで、抜き差しはとてもしやすく好感触。まだ対応製品は少ないものの、別売りのMMCX変換アダプタを用いれば手元のケーブルも活用でき、バランス接続も利用できそうです。

  • 柔らかく快適な8芯ケーブル

  • コネクタにPentaconn Earを採用

付属品としてケーブルタイやキャリーケースなどを同梱しており、全てアルミケースに収まっています。持ち運びの際は音楽プレイヤーとイヤホンをアルミケースに入れて持ち運ぶとよさそう。

  • アルミケースが付属するイヤホンは珍しいのではないでしょうか

潔いドライバー構成が音楽へ引き込む

プレイヤーに普段愛用しているソニーのウォークマン「NW-ZX507」を使って、3.5mmステレオミニ接続で音楽を聞いてみました。「ソースダイレクト」モードをONにし、ボリュームはハイゲインに設定。イヤホンから出た音を聴いてまず感じたのは、さまざまな音を聞き分けられる極めて高い解像感です。あれこれと聴いていくうちに「この曲にこんな音が聴こえたの??」という気付きから、「こんな音が出てたの?」という再発見もあり、1曲聴き切らないうちからどんどん次の曲が聴きたくなるほどです。

個人的に素晴らしく感じたのは、高い解像感を実現しつつ、幅広い帯域に渡って自然な響きを楽しめると感じた点です。ダイナミックドライバーを1つだけ搭載するという潔い設計を採用しているため、すべての帯域がシームレスに繋がっているように感じられます。たくさんの音が聴こえているのに、各帯域の聴こえ方がとても自然なのです。 LiSA「Catch the moment」を聴くと音が増えるシーンでも破綻せずしっかりと再生。久保田利伸「Bring me up!」ではしっかり低音を再生しつつ、ボーカルをくっきり聴かせてくれます。Maroon 5「Payphone」では音源の良さが際立つキレを楽しめます。

高い解像感と低音再生が両立されているので、何を聴いても楽しいですが、バンドサウンドが特に良く感じます。B'z「BE THERE」ではギターの弦の振動が目に浮かぶほど鮮やかで、ヒトリエ「モンタージュガール」の臨場感は抜群。サイレントサイレン「爽快ロック」を聴いてみると、爽やかなギターにクリアな女性ボーカルが組み合わさってとても素晴らしいです。

  • NW-ZX507で音楽を聴きました

豊富な付属イヤーピースで装着感をカスタマイズ

ところで、パッケージから取り出してさっそく耳に入れてみた最初の時は、あまりフィット感が高くなく感じました。もちろん個人差があるところで、ハウジング自体は小型で耳への収まりが良いのですが、密着性がやや足りません。

しかしこの製品にはイヤーピースがたくさん付属しており、装着感や音を自分に合わせて調整できます。Acoustuneはイヤホンだけでなく、音質や装着感にこだわったAET(Acoustune Ear-Tips)イヤーピースを単体でも販売しており、HS1657CUの付属イヤーピースはなかなか他メーカーにはない豪華さ。フォーム素材のAET02、傘が2つ付いているダブルフリンジ構造のAET06、開発のリファレンスとして用いられたAET07、短めのノズルを採用したAET08が付属しています。自分があれこれ使ってみたところでは、やはり開発のリファレンスに用いられたというベーシックなAET07が装着感、音質ともにバランス良く感じられたので、いつもこれを使っています。

  • 豊富なイヤーピースが付属

またアユートでは、ユニバーサルイヤホンとしては珍しく販売店純正オプションとして、Acoustuneのイヤホン向けにカスタムフィット化する税込39,800円の有料オーダーメイドオプション「ST1000」を用意しています。さらに追加料金を支払うと、内部配線をプラチナや純銅にアップグレードすることも可能。別途耳型の採取が必要で手間もお金もかかりますが、装着感の向上でもう一回り良い体験が目指せるとあれば、とても気になるオプションです。

金色に輝く真鍮製音響チャンバーに、ブラックカラーを組み合わせたハウジングは美しく所有感があって大満足。音質も気に入っていますが、ケーブルが柔らかくて取り回しやすいので気楽に使えて嬉しいです。オプションの「ST1000」も気になりますが、しばらくはありのままのサウンドを楽しんでいこうかなと思います。

  • こんなご時世なので、耳の上はマスクとメガネとケーブルで大渋滞です