Apple製品の使い方を無料で学べるプログラム「Today at Apple」の新しいセッションの提供が始まった。オンラインワークショップや本からでは得られない学びの体験、人と人が触れ合えるリアルなストアならではのワークショップという基本は変わっていないが、スキルレベルに応じて学び進めていけるようにセッションをリニューアルした。

60近い新セッションは、初心者にも適した「スキル」、散歩しながら実践的にテクニックを学べる「ウォーク」、知識やテクニックを深められる「ラボ」という3つの形式にまとめられている。それぞれ体験してきたので、新セッションの様子をレポートする。

ビデオラボ:小さなスクリーンで魔法を起こそう

映像作家のZach King氏との共同開発したビデオラボ・セッション。昨年10月のキーノートで、Today at Appleの新しいセッションの一部が紹介された時からこのセッションはぜひとも受けたいと思っていた。なぜなら、私はZach King氏のYouTubeチャンネルを登録しているフォロワーの1人だからだ。

セッションは、3人1グループになってジャンプカットを使ったトリック動画のプロジェクトを時間内に1つ作る。ジャンプカットは同じ被写体やシーンのクリップをつなぎ合わせる編集手法で、「瞬間移動」したり、または「消える」、「入れ替わる」というようなトリックを作れる。言葉で説明するより、Zach King氏のビデオを見てもらった方が早いだろう。

最初にジャンプカットの説明、トリックの効果を上げる編集や演出などの説明があり、そしてグループに分かれて製作に挑む。使用するのはiPhoneと「Clips」アプリ (三脚は貸してくれる)。監督、カメラマン、役者が必要であり、3人でシーンに応じて役割を回しながら進めていく。最後に各グループの作品を大スクリーンに上映する。最初から最後までとても楽しかった。

  • セッションで作成したトリックビデオを最後に披露、自分のビデオを巨大スクリーンで再生できるのも良い体験だった

強いて難を言うなら、複数のテクニックを盛り込んだ作品を作り上げようと思ったら1時間半はいささか短い。ラボはテクニックや理論を深めるセッションなので、トリックのアイディアについてあらかじめ考えて臨むと演出や編集に充分な時間を割り当てられる。

ミュージックスキル:GarageBandでドラムパターンを作ろう

iPadでGarageBandのビートシーケンサーを使ってドラムパターンを作成するセッションだ。というような説明だと、GarageBandに触ったことがない人は「難しそう…」と思うかもしれない。「スキル」に分類されるッションはツールの楽しさを伝える内容になっていて、音楽関連のスキル・セッションなら、GarageBandが初めて使う人でも、またはこれから音楽を始めてみようという人でも楽しめる。もちろん普段GarageBandを使っている人でも"創作"という点で刺激を受けるはずだ。

ビートシーケンサーには豊富なサンプルデモとドラムキットが用意されていて、それらを選ぶだけで様々なドラムパターンを鳴らせ、ビートや打楽器の違いを把握できる。サンプルをベースにしたり、またはサンプルのビートを参考にノートを打ち込み、そこからベロシティ (音量)の調整、ループ、またはチャンスの値を変えて人が演奏しているようなバリエーションを加えるといったカスタマイズを行う。それだけででも、参加者それぞれ個性的なビートになるから面白い。

  • わずか30分の間にGarageBandの面白さを実感でき、終了後には別の機能も使いたくなる。GarageBandを使ったことがないけど、気になっているという人に特にオススメのセッションだ。

アートウォーク:街を歩いてあなたの色を見つけよう

ウォークは、ストアの外に出て写真を撮ったり、スケッチ、または街や自然の音をキャプチャするセッションだ。「あなたの色を見つけよう」は、iPadでドローイング・アプリ「Procreate」を使って、散歩しながら撮影した写真から色を選び、オリジナルのカラーパレットを作成して絵を描く。キレイに晴れた日だったら空のブルーや光に照らされた花の色など、明るい色がパレットに並ぶ。色の組み合わせに、集めた時のシーンやその時に考えていたことが反映され、後で見返して思い出せるのが面白い。あらゆるスキルレベル、子どもから大人まで、気軽に楽しめるセッションだ。「GarageBandでドラムパターンを作ろう」もそうだが、iPadやApple Pencilを持っていなくてもストアで貸してくれる。iPadで作成した作品は、AirDropでiPhoneに転送するなどして持ち帰れる。

  • iPadのカメラを使って風景の中から色を採取、自分のカラーパレットを作る

Today at Appleの最大の利点は、参加者同士で作品を気軽に見せ合えることだと思う。「作品を見せ合う」というと、それだけで気後れする人もいるかと思う。でも、できあがった作品の優劣を競うわけではないから、そんな心配は無用だ。セッションは、参加者が何かを作りたいというモチベーションを高められるようにデザインされている。同じことに興味を持った同士が、自己紹介からスタートし、小グループで参加者同士もコミュニケーションしながら学ぶ。だから、セッションを通じて、作っているものを自然に見せ合うようになる。

大人になって何かを始めると「もう少し上手くなってから…」となってしまって、なかなか作品を見せられない。でも、子どもの頃の手習いのように、どんなスキルレベルであっても作っているものを見せた方が楽しいし、見せた方が創作はどんどん上手くなる。Today at Appleのセッションは30分~90分。短い時間で学べることは限られるけど、継続していくための"モチベーション"という知識やテクニック以上の大きな収穫を得られる。

  • Today at Appleでは、子どもから大人、高齢の方まで様々な人が違和感なく、1つのグループになってお互いに刺激を与えながら学べる