インテルは12月17日に関係者に向けて開催した定期説明会で、2018年の業務実績と登場した新しい技術に関する概要のまとめを紹介した。

2018年の業務実績を振り返ったのは、11月の就任から1カ月半が過ぎた代表取締役社長の鈴木国正氏だ。鈴木氏は就任からいままで、多くの時間を費やし、顧客の経営陣と会って「インテルが何をできるのかを説明している」(鈴木氏)ほか、インテル社内に対しても自分自身のことや今後の話をしているという。

  • インテル代表取締役社長 鈴木国正氏

先週はサンタクララのIntel本社にて「以前から(前職のソニーではVAIOをはじめとするコンシューマデバイス全般を担当していた)つながりのあった人や新しくつながった人などと内容のある話し合いをしてきた」と鈴木氏。

入社から1か月半を過ぎたインテルについて鈴木氏は「常に新しいことが起きている。世界中で起きているデジタルトランスフォーメーションにおいて重要な位置にあるという意味でモチベーションが上がっている」と述べた。

続いて鈴木氏は、2018年に創業から50年がたったインテルが、次の50年を見据えて「世界最高クラスの技術革新の継続」「スマート&コネクテッドなデータ中心の世界を前進」「課題へのチャレンジ」を掲げ、それぞれで具体的に何をしてきたのかを説明した。

  • インテルが注力する3つの項目

「絶対的に継続する中心はこれ」と述べる技術革新では、2018年も新世代インテルアーキテクチャを投入し、ほかのアーキテクチャに対する優位性とパフォーマンス向上を継続したとしている。また、データ中心の世界の前進では、新世代通信規格5Gに自動運転技術、人工知能、そして、ゲーミング領域における貢献を挙げている。

「クラウド」「5G」「人工知能」にフォーカス

インテルは以前から「われわれはデータカンパニー」と訴求している。ただ、鈴木氏は「データセントリックな会社になっているが、それはまた道半ばである」とも述べる。

「インテルの調査では、世界中にあるデータの90%がこの2年間で生成されたというデータがある。データはただあればいいというものではない。それをどう活用するのか。これがデータトランスフォーメーションのむずかしいところでもある」(鈴木氏)。

  • 鈴木氏が挙げた2018年インテルの活動

未だ道半ばにあるデータカンパニーに向けて、膨大なデータが生み出されているデジタルトランスフォーメーションの状況において、インテルは、「クラウド」「5G」「人工知能」にフォーカスしていくという。「インテルはデータの“3つのエリア”といえる移動、保存、処理で強みを発揮できる。大きな意味ではインテルの歴史で最大のチャンス」(鈴木氏)。

以上を踏まえた上で、2018年におけるインテルの活動内容を振り返った。CPUに関しては特に「ゲーミング」「クリエーター」に言及し、ゲーミング領域では第9世代Coreシリーズの投入から日本における大規模e-Sportsイベントの開催などの成果を訴求した。

  • 特にゲーミングの領域で高い成長を達成したという

「ゲーミングPCとe-Sportsには大きな可能性がある。2018年はここで面白い仕掛けができたと思う。インテル社長就任後の1カ月半でe-Sportsを集中して調べたが、ビジネスモデルが確立しているわけではなくこれからの領域。そういう意味でインテルはいい投資をしてきた。ゲーミングPCの売り上げも30%と過去最高で、今後の期待に則した数値が出ている」(鈴木氏) 。

同様に、5Gの領域では、MWCにおいてエリクソンとトヨタ、NTTと協力して開発したコネクテッドカーを公開し、11月にはマルチモード5Gモデムを提供した他、開発をスピードアップするためのプラットフォーム提供を2018年における成果として紹介した。また、人工知能領域では、将来の変革を推進し社会の問題解決の基盤になると考えて投資しているという考えを示した。

インテルの強みは「より高速」「より多く」「あらゆるものを処理」

続いて、インテル執行役員常務で技術本部本部長の土岐英秋氏が、2018年の技術動向について振り返った。

土岐氏は、「基本的にプロセスの進化はコンピューティングパワーのコストを引き下げパフォーマンスを引き上げる」と述べて、プロセスの進化によってデータがたくさん扱えると切り口を示した。

  • インテル執行役員常務 技術本部本部長の土岐英秋氏

そして、エッジ側で最大のデータ収集(もしくは生成)装置となるのは「車」としたうえで、1日当たり4TBも生成するデータは、無線技術でクラウドにアップロードするしかなく、現状は4G、将来的には5Gを利用することになると説明する。

さらに、ネットワークを構築するデバイス、エッジ、コア、データセンターまたはクラウドにおいて、特にコアコンピューティングは汎用システムをSoftware Definedで状況に合わせでオンデマンドで使い分けるシステムをサポートできるようになるとした。

  • 2018年の技術動向をデータの切り口からみる

土岐氏は「2019年に5Gが登場した時点では、これを活用するキラーサービスはまだ登場していない」と4Gデータ通信のときの状況を引き合いに予想した一方で、「5Gが登場したちょっと後にそういうものが出てくるはず。それはきっと“いまは存在しないもの”のはずなので、非常に期待している」とも述べる。「おそらく様々なデータを大量に効率よく使うんじゃないかなと」(土岐氏)

また、IoTで接続しているデバイスの50%がネットワークの(帯域)制限を受けて、データを十分に遅れていない現状も5Gの登場によって変化するという。

データセンターの切り口では、インテルの強みとする「より高速な(データの)移動」「より多く(のデータ)を保存」「あらゆるもの(=データ)を処理」という3つの切り口からそれぞれに対する技術を紹介した。

  • データセンターで発揮できるインテルの強みは「より高速」「より多く」「あらゆるものを処理」

データセンター関連のデータトラフィックとして、「データセンターとユーザー」「データセンター同士」のデータトラフィックは横ばいなのに対して、「データセンター内部」のデータトラフィックが急増している。

  • データトラフィックが急増しているのはデータセンター内部のみ

これを解決するために、コネクティビティーを改善するチップの需要が高まっており、それに向けてインテルはOmni-Pathファブリック、イーサネットコントローラー、シリコン・フォトニクスを提供している。

  • それゆえにコネクティビティの改善が求められる

また、ストレージとして使用するメモリ、ストレージデバイスの階層を再定義し、HDDの上層には「3D NAND SSD」を、SSDの上層には「OPTANE DC SSD」を、さらにその上層には「OPTANE DC パーシステントメモリー」の階層を新たに設けている。容量や転送速度、コストを踏まえて最適なシステムを構築する。

「データを効率よく渡し、パフォーマンスを向上させるため、ストレージのレイヤーをメモリも含めてインテルは考えている」(土岐氏)。

  • ストレージ階層では「3D NAND SSD」「OPTANE DC SSD」「OPTANE DC パーシステントメモリー」を導入した再定義を進めている

このほか、Xeonスケーラブルプロセッサーによるパフォーマンス向上と構成の柔軟性、そして11月に発表した最新の「CASCADE LAKE ADVANCED PERFORMANCE」を訴求した。

特にXeonスケーラブルプロセッサーで、AI開発に最適化する「ディープラーニング・ブースト」も取り上げ、最新の推論加速の導入で推論スループットが最大11倍に達することやサポートするフレームワークとライブラリーが増えたことでより幅広い用途での活用が可能になったことも紹介した。

  • 新しい推論命令「VNNI」の導入で推論演算が11倍も向上する

  • 11月に発表した最新のXeonスケーラブルプロセッサー「CASCADE LAKE ADVANCED PERFORMANCE」

コンシューマ向けでは「第9世代Core」がトピック

クライアントPCにおける技術動向では、第9世代CoreシリーズプロセッサーとCore Xシリーズプロセッサーを紹介した他、両方で採用したインテグレーテッド・ヒート・スプレッダーとCPUダイをはんだで接合することで熱伝導率を高めた「サーマル・インターフェイス・マテリアル」とその冷却効果向上と、ゲーム、クリエイティブ作業におけるパフォーマンス向上を訴求した。

  • クライアントPCにおける技術動向では第9世代CoreシリーズとCore Xシリーズの両プロセッサーを取り上げた

  • 12月12日の「Intel Archtechture Day」で発表された内容

なお、12月12日に米国で開催した「Intel Archtechture Day」で発表された内容についても言及し、ロジックチップの3次元積層技術や新しいCPUアーキテクチャ「Sunny Cove」、第11世代となるグラフィックスコアなどについては概要をふれるにとどまった。