日本マイクロソフトは2017年8月1日、2017年7月1日から始まった新会計年度の経営方針に関する記者会見を開催した。昨年2016年は7月5日、2015年は7月2日と、通常は新会計年度が始まった直後に開催してきた経営方針説明会だが、8月1日開催の理由として「今年はグローバルレベルで戦略変更や組織再編といった大きな動きがあった」(日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏)と述べた。米国本社に関しては、AI(人工知能)やクラウドへの注力を理由に、セールス部門の再編などを各社が報じているが、同じように日本法人もモダナイズするための時間を要したのだろう。
最初に平野氏は、クラウドビジネスの活動状況を次のように報告した。「先週更新された米国本社の数字だが、全体の約900億ドルに対して2017年会計度(FY17)法人向けクラウド事業の売上高は189億ドル。目標に近い売り上げをクラウドビジネスで実現できた」という。Microsoftは2018年会計年度(FY18)のクラウド事業目標値を200億ドルと定めているが、この数値を見る限りは達成間近だ。内訳を見ると、Microsoft Azureは前年度比プラス97%、Office 365がプラス43%、Dynamics 365がプラス74%。好調の理由をMicrosoft Azureの認知度向上や、Office 365の売り上げがパッケージ版を上回るなど、クラウド化の波が広まっていることを挙げた。
平野氏はFY17に掲げた「デジタルトランスフォーメーション(変革)元年」をもとに、当時を「働き方改革の推進やAI/MR(複合現実)といった最新技術を活用するビジネス変革を目標に掲げ、全営業組織が達成。かなりデジタル変革を推進できた年」と振り返った。下半期は日本マイクロソフトが提唱し、AI技術を広く社会に役立てる「みんなのAI」の影響が大きいという。コグニティブサービスでは博報堂やトヨタ自動車、チャットボット分野は三井住友銀行、深層学習分野ではPreferred Networksとの協業などを並べ、「(AIが)ビジネスにつながった年」(平野氏)と、もう1つの側面を披露した。
そのMRデバイスであるMicrosoft HoloLensも、国内市場投入から半年足らずで米国に次ぐ第2位の出荷数を数えるという。現時点では、ユーザーレベルのコミュニティが活発で、多くの開発・検証プロジェクトが進んでいる。日本マイクロソフトでも法人体制を強化し、米国本社直下の日本専任スタッフを配置したり、今回再編されたコンシューマー&デバイス事業本部がMRパートナープログラムを今秋から開始したりする(年内の参画企業は5社程度を想定)。SIerなどへの協力体制を用意することを明らかにした。日米両輪で企業へのPoC(概念実証)を行っていく。
強い関心を抱くのが、2年前、平野社長の就任時に掲げた目標として、「革新的で、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する」というものがあった。その件はほぼ実現できたとして、今回は「革新的で安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジーを通じて、日本の社会変革に貢献する」を2020年までの目標とすることを明かした。
実際にビジネス目標の1つだったクラウド売上比率も、平野氏の社長就任時は7%に過ぎなかったが、FY17第4四半期は47%に達している。平野氏はFY17の新会計年度説明会でクラウド売り上げ50%を目標に掲げていたが、「これでよし」(平野氏)と、3%はオマケしてほしいと冗談を交えつつ、ほぼ目標を達したからこそ、米国本社の変革に合わせて日本マイクロソフトも目標調整を行ってきたのだろう。