ローソンが銀行業参入の準備に入る。コンビニエンスストアを使う側からすると、店舗でATMは利用しても、銀行口座まで作ろうとはなかなか考えないが、なぜ同社は銀行業に進出するのだろうか。
利用客の利便性向上に向けて
ローソンはまず、銀行事業を検討する準備会社を設立し、その会社で詳細を詰める方針だ。準備会社の設立は11月の予定。資本金および資本準備金は10億円で、出資比率はローソン95%、三菱東京UFJ銀行5%となる。
ローソンが銀行業で目指すものとは何か。同社の発表によると、全国1万2,648店舗(2016年9月現在)の拠点を活用し、顧客の利便性につながり、コンビニと銀行のシナジー効果を発揮できるような新サービスを検討していきたいという。
顧客の利便性につながるサービスとは、コンビニで口座を作ったり、資金決済機能(現金を使わずに振込や口座振替などができる機能)を利用できたりすることを指すようだ。コンビニと銀行のシナジーとしては、例えば口座を作った顧客に対し、ポイントやクーポンのような特典を付与することなどを検討していく模様。ATMを使うついでに買い物をする顧客は少なからず存在するものと思われるが、ローソンで利用できる金融サービスが増えれば、ATMの集客効果も高まるかもしれない。
ATM受入手数料で稼ぐビジネスモデルを志向?
コンビニが立ち上げた銀行といえば思い浮かぶのがセブン銀行だ。ローソンが銀行業に参入する狙いを探るためには、セブン銀行の現状を見ておくことも重要だろう。
セブン銀行の2015年度決算を見ると、経常収益は1,104億円で、経常利益は390億円となっている。注目すべきは収益の内訳で、1,104億円のうち1,022億円を「ATM受入手数料」で稼ぎ出している。つまりセブン銀行は、銀行でありながら融資やローンなどをメインの事業に据えていないというわけだ。
セブン銀行の収益の大部分を占めるATM受入手数料とは、同行の決算資料によれば「ATMの利用件数に応じた銀行等からの手数料」のこと。つまりセブン銀行は、ATMを実際に利用する顧客からの手数料ではなく、セブン銀行のATMを、自行のATMネットワークの一部として活用している他の金融機関からの手数料で稼いでいるのだ。2015年度末時点で2万2,472台のATMネットワークを抱えるセブン銀行は、他の金融機関にとってみれば“利用料”を払ってでも提携を結びたい相手なのだろう。
ローソンの銀行も、ATM受入手数料をメインに据えるビジネスモデルを採用するのだろうか。同社からは検討中との回答しか得られなかったが、同じコンビニ業界で成功例があるからには参考にしない手はないだろう。セブン銀行のATMは、セブンイレブンのみならず駅などでもよく見かける。ローソンの銀行が事業規模を拡大できるかどうかは、ATMの数をどれだけ増やせるかに掛かってきそうだ。