就職・転職のためのリサーチサイト「ヴォーカーズ」は、「残業と株価の相関関係」を発表した。同社は、実際に企業で働く社員から情報を集め、それを“クチコミ”というカタチで情報公開している。

対象データは、ヴォーカーズへのクチコミレポートがある上場企業2,341社で、2007年12月末と2016年6月末の株価終値を比較。残業時間はヴォーカーズに投稿されている「平均残業時間(月間)」を用いている。

これによると、株価が10%以上上がっている企業では月間60時間以上の残業が発生しており、逆に残業が月間20時間以内の企業の株価はマイナス10%ほどという結果になった。

日本調剤が入居するグラントウキョウノースタワー

安倍政権は、経済政策の一環として「働き方改革宣言」を掲げている。これは、企業での長時間労働の是正や有給休暇取得促進などに取り組むことを推進する施策で、経団連や経済同友会などが宣言を採択したばかり。このヴォーカーズの調査は、「残業時間が長いほど株価上昇率高」という、皮肉な結果となった。

また、残業30時間以下の企業の株価上昇率ランキングも公開している。それによると平均月間残業時間が21.5時間で、株価上昇率450%となる日本調剤が第1位。平均月間残業時間18.1時間で、株価上昇率が293.12%となったオリエンタルランドが第2位という結果になった。以下は下表のとおり。

順位 企業名 株価上昇率(%) 平均月間残業時間
1 日本調剤 450.00 21.5
2 オリエンタルランド 293.12 18.1
3 良品計画 268.59 22.3
4 参天製薬 191.44 27.2
5 コーセー 181.74 22.6
6 ユナイテッドアローズ 185.03 26.9
7 塩野義製薬 181.92 21.5
8 ニフティ 133.49 29.4
9 TOTO 128.86 28.4
10 アコム 115.32 29.1

残業に対するビジネスパーソンの感覚

さて、ヴォーカーズのレポートでは、「頑張って残業した結果業績が良くなり、株価 が上昇した」のか、「業績好調で株価 が上昇する中で仕事が多くなり、残業が増えた」のか、その因果関係を判断できないと記している。

そこで、大手町を歩いていた3人のビジネスパーソンに「残業するから業績が上がるのか」「業績が上がっているから残業が発生するのか」をたずねてみたところ、全員が後者だと答えた。サンプル数が少ないのでなんともいえないが、業績が上がったからこそ業務が増えるというほうが、ビジネスパーソンの感覚に近いといえそうだ。

今回の調査では皮肉な結果となってしまったが、労働時間を減少させても業績が上げられるのか……それが今後の課題といえるだろう。