ラーメン店「せたが屋」を買収した吉野家ホールディングス。うどんの「はなまる」や回転寿司の「京樽」をグループ内に抱える同社が、ついにラーメンで手を組む相手を決めた格好だ。新たな武器を手にした吉野家が勝負に出る場所とは。

ラーメン店「せたが屋」を買収した吉野家

「こだわりのラーメン」を手に入れた吉野家

せたが屋は東京、埼玉、米国などで19の飲食店を展開。ラーメン店「せたが屋」では、魚介ダシの効いた醤油豚骨スープのほか、塩味、みそ味、つけ麺など、同社代表取締役社長である前島司氏が独自の工夫で開発した「こだわりのラーメン」を提供している。吉野家はせたが屋の株式65.5%を取得し、同社を連結子会社とする。株式取得額は非公表となっている。

せたが屋の経営は引き続き前島氏が行う。吉野家に聞くと、今回の提携により、せたが屋の国内における出店を加速し、同社を全国チェーンのような形で運営するつもりはないとのこと。あくまで「こだわりのラーメン」を提供する店だというブランドイメージを大切にしていく方針だという。

牛丼、うどん、回転寿司などのメニューに、新たにラーメンが加わる

海外出店計画の実現に向け前進?

せたが屋を買収した吉野家の狙いはどこにあるのか。それはラーメンブームに沸く海外市場の開拓だ。吉野家は東南アジアや米国といった地域に進出しており、海外展開のノウハウや海外事業の人員を抱えている。こういったリソースを活用し、せたが屋のラーメンを海外に発信していく構えだ。海外で出店する場合は、せたが屋ブランドで店舗を運営するのか、それとも吉野家×せたが屋で海外向けの新たなブランドを立ち上げるのか。この辺りについては今後の検討課題になるという。両社による海外1号店の設立予定日も現時点で未定だ。

海外展開を加速する吉野家ホールディングスにラーメン店が加わった効果は高そう。同社は2016年2月末時点で675店のグループ海外店舗数を1年で780店まで伸ばす計画を掲げているが、このうちの何店舗かはラーメン店となるかもしれない。「こだわりのラーメン」というブランド価値を維持しつつ海外での出店を進めるうえでは、仕入れやオペレーションといった面で十分な注意を払う必要も出てくるだろう。海外で培ったノウハウを、新たな業態であるラーメン店に活用できるか。吉野家の海外事業の実力が試されそうだ。