昔ながらのビジネスモデルや、廃れつつあるモノやコト――。少しだけ手を加えて“リブート”させると、それが途端、斬新なビジネスに生まれ変わることがあります。そこには多くのビジネスマンにとってのヒントがある、かも。そうしたビジネスモデルにスポットを当て「リブート! “再起業”の瞬間」としてシリーズでお届けします。第2回目は、日本酒の定期購入サイトにスポットを当てます。
酒とともに「愛で方」を売る
安倍首相が贈れば、各国元首によろこばれる日本酒「獺祭」(だっさい)。このことからわかるように、海外での和食の浸透と相まって、じわじわと日本酒が復活している――。なんとなく、そう感じている人は多いはずだ。
もっとも、数字だけをみるとまた違う景色がみえてくる。
国税庁統計年報によると、直近のデータとなる平成25年度の清酒消費量は581万キロリットルで、10年前と比べると約70%に減少。さらに20年前と比較すると実に約42%にまで減っている。業界や国をあげてのPRが目立っているが、そのわりには日本酒の消費量は、実はいまだ右肩下がりを続けているのが現状だ。
そんな中、名実ともに、じわじわと日本酒の売上を伸ばし、業界の注目を浴びているのが日本酒専門のECサイト「SAKELIFE」である。
「SAKELIFE」を立ち上げた高橋正典さん。1987年生まれ。大学卒業後、2年間経営を学び、その後、500年以上前から続く千葉県香取市の老舗酒店「油忠」を継ぐ。25代目店主。それにしても「500年以上前…」って室町時代ですよ |
ユニークなのは、同サイトが単なるお酒のネット通販ではなく、会員制の「定期購入サービス」であること。いまEC界隈では「毎月定額を払えば自分にあったコーディネートの洋服が届く」といった定期購入サービスに火がつき始めているが、「SAKELIFE」はこれを日本酒で実践しているわけだ。
具体的には月5,000円で全国の蔵元から選び抜いた銘柄の一升瓶が毎月届く「ぐい呑み」コースと、月3,000円で同じくセレクトした四合瓶が届く「ほろ酔い」コースの2つの定期購入サービスを提供している。
「日本酒に興味はあるけれども、選び方が分からないという方は多い。そういう方に、毎月いろいろ試していただけるわけです」と創業者の高橋正典さん(28歳)はいう。
この定期購入ならではの「楽しさ」が支持され、2013年にスタートした「SAKELIFE」は今では1,000名を超える会員を抱える。毎月1,000人が高橋さんのセレクトした銘柄を“くいっ”と楽しんでいるわけだ。
もっとも、高橋さんが定期購入のビジネスモデルを選んだ理由はマーケティング的メリットだけではない。
「約8割と原価率の高い日本酒販売はECには向かない商材だったんです。値下げでアピールするのが難しい。しかし、定期購入スタイルならば、価格だけで選ばれることがありませんからね」。
加えて理由はもうひとつあった。単に酒を送るだけではなく、毎月定期的に「日本酒の楽しみ方」を伝えるコミュニケーションを提供できることだ。
「この『楽しみ方の提供』こそが、日本酒を売るためには不可欠だと思った。実はそれは僕が店で親父の姿を見ていて感じたことでもあったんですよ……」。