三菱電機は2月13日、次世代の住環境を提案する「三菱電機スマートホーム」コンセプトを発表した。家電や住宅設備を最適に制御するだけでなく、家族全員の"ココロとカラダ"の状態を把握して生活をサポートする。具体的な製品化については未定だが、家電製品群への展開を目指して今後も研究開発を進めていく。
【左】帰宅時にドアに近づくと家族を認証して解錠するドア。ドアハンドルに触れると体温・脈拍などの生体情報を取得する【中】取得した生体情報を玄関内部の壁に表示し、健康状態をチェックできる【右】家族のスケジュールや体調の情報も表示して確認できる。映画『ベイマックス』を彷彿させる世界観だ |
家族の体調を考えて献立を提案してくれる冷蔵庫
今回発表されたのは、家電・IT業界で昨今のトレンドになっている"IoT"(Internet of Things、モノのインターネット化)の概念を、住宅を基盤に展開していく指針だ。
住宅メーカーが中心となって進めているスマートハウスの概念は、家電や住宅設備をネットワークで接続し、"HEMS(Home Energey Management System)"と呼ばれる機器をハブにして、「エネルギーの見える化」を目指したものが主流となる。
しかし、三菱電機の提案するコンセプトはエネルギーの見える化を実現するだけではない。発表会でコンセプトを説明した三菱電機 デザイン研究所 ホームシステムデザイン部の河村玲永子氏は「三菱電機では"心理的なストレスを感じない、快適で気持ちのいい生活"をキーワードにした新たな価値を提供していきたい」と話し、新コンセプトの立案に至る経緯を解説。家族の"ココロとカラダ"の状態変化に着目した家電製品の開発を目指すという。今回の説明会では3つの事例が参考展示とともに紹介された。
1つめが玄関ドア。人が玄関のドアに近づくと、カメラが家族を認証して解錠を行う。その後、ドアのハンドルから体温や脈拍などの生体情報を取得し、体調のセンシングを実行する。さらにその結果や家族の予定などを玄関内部の壁面に表示する、というものだ。
2つめが冷蔵庫。冷蔵庫に入っている食材の情報と、他の機器を通じて集積された家族の体調などの生体情報を参照し、オススメの献立メニューを冷蔵庫の扉に表示する。
そして3つめがシステムキッチン。先述の冷蔵庫が選んだメニューの調理手順やポイント、進行に合わせた時間の調整などを調理台に投影して、最適な調理フローをアシストする。また、キッチンカウンターの一部に設けた非接触給電エリアでは、フードプロセッサーや炊飯器など調理家電をケーブルレスで使える。そのほか、調味料用のミニ冷蔵庫を備えるなど、これまでにはない新しい発想のシステムキッチンを提案した。
【左】最新のIT技術と家電技術を集約して考案されたシステムキッチンのコンセプトモデル【中】調理手順などが投影された調理台。IBMの"シェフ・ワトソン"(独創的なレシピを提案してくれる人工知能)を思い起こさせる実用化の一例だ【右】IHクッキングヒーターがスライドして移動できる仕掛けも。位置を左右に自由に動かせるので、家族が同時にキッチンに立つ際の調理分担にも便利だ |
【左】非接触給電エリアを備え、フードプロセッサーやミキサーなどの調理器具もケーブルレスで使える【右】シンク側には引き出し式のミニ冷蔵庫と冷凍庫を備える。調理に必要な氷や調味料などを手元から出せて、作業効率アップにつながる。そのうえ、通常の冷蔵庫を無駄に開閉せずに済むので、省エネにもなる |
気になる製品化について
記者説明会には、三菱電機 デザイン研究所長の杉浦博明氏も出席。社内における同研究所の立ち位置や理念、製品開発のプロセス、取り組みなどを紹介した。記者からの質疑応答において、杉浦氏は今回の発表はあくまで"コンセプト"であることを強調。具体的な実用化のめどやロードマップについては「例えば無線給電についても、技術仕様の標準化や電波法などの法整備の問題があって、これからクリアしていかなければならない課題が多い」とし、現段階では製品化について明言できないと説明。しかしその一方で「今後は住宅メーカーやキッチンメーカーなどとの提携も視野に入れている」と、他業界と協力して横軸で展開していく考えも明らかにした。