Fly Deltaアプリ(Android版)。Traveling with Usのメニュー項目に同社Webサイト上のPrivacy Policyへのリンクが付与されている

米カリフォルニア州で米デルタ航空(Delta Air Lines)を相手にした民事訴訟が行われ話題になっている。同社がマイル会員ユーザー向けに提供している「Fly Delta」モバイルアプリにおいて、ユーザーの許可なく情報収集を行ったことが同州の法律に抵触しているとのこと。アプリのダウンロード即刻停止ならびに1件あたり2500ドルの損害賠償請求を行っているという。

同件はWall Street Journalなどが報じている。民事訴訟は12月6日に同州司法長官のKamala Harris氏によって起こされたもので、Fly Deltaアプリが2004年に制定された同州の個人情報保護法に違反しているのが理由という。実際、Fly Deltaアプリではプライバシーポリシーの掲示がなく、機能の少なさも含めて非常にシンプルな作りになっているのが特徴で、この点が問題になったとみられる。現在Fly DeltaアプリはAppleのApp StoreでiOS版がダウンロードできるほか、GoogleのPlay StoreでAndroid版が、そのほかBlackBerry App WorldやMicrosoft Windows Storeでのダウンロードが可能になっている。Harris氏は問題が解決するまでこれらすべてのストアでのダウンロードを停止したうえで、被害1件あたり2500ドルの賠償を行うよう求めている。

Deltaでは同訴訟を受け、翌7日にFly Deltaアプリの一斉アップデートを実施し、アプリから同社Webサイト上にあるプライバシーポリシーへのリンクを付与している。筆者が確認したところ、iOS版とAndroid版ではアップデートが確認できたものの、Windows Phone版では原稿執筆時点(7日)でアップデートはみられなかった。アップデート内容はこのリンク付与のみで、実質的に訴訟を受けての緊急措置とみられる。

App Storeに12月7日掲載されたFly DeltaアプリのiOSアップデート。新バージョンでの変更点は今回の訴訟を受けてのもの。なおAndroid版も同日にアップデートが行われていた一方、Windows Phone版ではアップデートは確認できなかった

個人情報保護は重要な要素だが、一方で今回の対応がプライバシーポリシーへのリンクを付与しただけで済むなど、実効性がどの程度あるのか不明な部分が大きい。Harris氏はプライバシーポリシーの掲示が重要だとその理由を説明しているが、法律遵守を盾に見せしめ的な印象の強い訴訟だと思われる。ほかにもプライバシーポリシー掲示で潜在的に問題を抱えているアプリは多いとみられ、その代表として訴訟の対象にされたという印象だ。

(記事提供: AndroWire編集部)