ワコムは、同社が開催する「Wacom Creative Seminar」の1周年を記念して、3月3日と4日の2日間に渡って4名のクリエイターがセッションを展開する「Wacom Creative Seminar Special」を官山ヒルサイドテラス(東京・渋谷区)にて実施。本レポートでは、3日に行われた、イラストレーターのfeebee氏によるセッションを紹介する。

feebee氏の描画環境とは

feebee氏

feebee氏は、"和"のテイストを取り入れた美麗な女性像をなどを描き、国内外を問わず活躍するイラストレーター。描画ツールには、彼女独特のソリッド感がある切り絵のような作品を描くために「Adobe Illustrator」を使用している。また、描画後にポーズや配置などを決めていくスタイルを採っているため、腕や顔といったパーツが自由に再配置できることも、Illustratorを使う理由だという。

入力デバイスは、イラストを描き始めた頃からペンタブレットの必要性を感じていたが、「説明書を読まないタイプなので、最初にペンタブレットを買った時はマッピング設定をしなかったんですよ」とのことで、扱いにくさを感じてマウスのみで描画していた。その後、知人に設定方法を習ってからはペンタブレット「Intuos3」での描画に移行し、「Intuos4」を経て、現在は評価用に提供された最新機種「Intuos5」も使用している。

Intuos5に関しては「iPhoneやiPadみたいに、タッチ操作で拡大や縮小が行えるのも便利なんですが、絵を描く作業時以外でも、片手でWebブラウザの操作ができるところが新しいと思いましたね」とコメント。ワイヤレス対応については、描画以外の作業をする際にタブレット本体が片付けやすくなったことや、スケッチブックのように本体を斜めに置いて作業できるようになったことを紹介したほか、「モニタから離れて全体のバランスを確認しているときに、離れた位置からも手が加えられるようになったことも面白いですね」と評価している。

Illustratorを使った描画の手順を紹介

作品紹介と作業環境の説明が行われた後は、Illustratorを使った描画の手順が解説が始まった。feebee氏の前には、Intuos5が接続されたパソコンが置かれ、会場にはそのパソコンの画面が投影されるスクリーンを用意。また、Intuos5を使うfeebee氏の手元を撮影するビデオカメラと、その様子を映すモニタも用意されていた。

会場には、パソコン画面を映すスクリーンと、feebee氏の手元を映すモニターが設置されていた

描画手順は、ツールやデバイスの進化によって多少変わってきたが、現在は下書きなどを行わずに、Illustratorのペンツールや鉛筆ツールで直接描き始める手法を採っている。具体的な例として紹介された、作品の一部分である狐の顔の描画では、輪郭を描いた後に、目や耳、ヒゲなどのパーツを描き足して、"福笑い"や"ミルフィーユ"のように重ねていくという。

また、目の部分だけを見ても、色の異なる部分は各色がひとつのパーツでできており、色がはみ出てしまった所に関しては、上下関係の入れ替えやマスクを使って隠すなどの方法で対処する。こうすることで、後からパーツの変形や移動、重ね合わせの順番変更などによって、瞳の大きさや目が向いている方向などの微調整が行えるのだ。

細かなパーツを重ね合わせて狐の顔を描いていく様子を解説

そのようにして、顔や腕、胴体、しっぽなどもグループ化された個々のパーツとして作成するため、腕のポースや位置の変更を後から行ったり、しっぽをコピー&ペースとして増やしたりして、全体の構図を決めていくことができる。いろいろと試行錯誤していくうちに、最初の構図と全く違った構図で完成を迎えた作品も多いのだとか。なお、feebee氏はレイヤーをほとんど使用しないため、作品の全パーツはひとつに重なり合っている。

完成が近づいたら作品を左右反転して、反転した状態でもバランスが整っているのかをチェックしたり、Illustratorのオブジェクトを再配色する機能を利用して、色合いの異なるパターンを制作することもあるとのこと。最後に「Adobe Photoshop」に読み込んで、グラデーションの調整などを行えば完成となる。

オブジェクトを再配色する機能を使って色合いの異なるパターンを作成することも

以上が、ひとつの作品を完成させるまでの手順。そのほかにもセッションでは、パーツ(オブジェクト)をアウトライン化して変形させていたところを、Intuosシリーズと筆圧感知で線の太さが変化するIllustratorの「塗りブラシツール」の組み合わせを使い始めたことで、変形させるまでもなく一発で思い通りに描けて、作業効率が格段に向上した例などが紹介された。

最後に、参加者の質問タイムや、プレゼントが当たるじゃんけん大会が行われて、feebee氏のセッションは終了した。セッションの終了後も、feebee氏は参加者の個人的な質問に答える時間を作り、会場に併設されたIntuos5のタッチ&トライコーナーでは、参加者達が話に出ていたIntuos5やIllustratorの機能を試す姿も見られ、充実したセミナーとなったようだ。

最後にじゃんけん大会や個人的な質問に答える時間も設けられていた