BlackBerryを開発しているResearch In Motion(RIM)は18日(現地時間)、米国サンフランシスコ市で、BlackBerryの開発者向けのイベントである「BlackBerry DevCon」を開催した。
最初に登場した、RIM社CEOであるMike Lazaridis氏は冒頭、先週に発生したBlackBerryの通信障害について述べ、100ドル相当のアプリケーションのダウンロードを無償にすることを明らかにした。その後、現状のビジネスを外観、最新のBlackBerry 7搭載端末などについて触れ、次世代OSである「BlackBerry BBX」を発表した。
BBXは、RIM社が2010年4月に買収したカナダのQNX Software Systems社のリアルタイムオペレーティングシステムであるQNXをベースにしたもの。QNXは、車載機器などに広く利用されている組み込み用オペレーティングシステムだ。現在RIM社が販売しているタブレットデバイスであるBlackBerry PlayBookは、すでにQNXベースになっており、これをもとにBBXを開発すると見られている。
BBXは、スマートフォン、タブレット用のみならず、組み込み用やクラウド用デバイスなどの広範囲なプラットフォームを対象とする。ユーザーインターフェースは、Cascadesと呼ばれるフレームワークが採用されているが、これは、2010年12月にRIM社が買収したThe Astonishing Tribeというスウェーデンの企業が開発したものがベースになっている。
QNXは、Posix準拠のオペレーティングシステムである。Posixは、さまざまな実装のあるUnixで共通アプリケーションを開発するためにIEEEが提唱したAPI仕様。つまり、システム機能を使うような部分は、Unixライクなやり方で行えるわけだ。ただし、表示やその他の部分については独自仕様であり、大まかな構成として、Marcカーネルを利用したiOSに似ている。
アプリケーションは、C++などを使ったネイティブコード開発と、HTML5+JavaScriptによる開発が可能だ。HTML5+JavaScriptで開発したアプリケーションは、ブラウザ内ではなく、BBXのアプリケーションとして動作できる。
BBXは、UIフレームワークやサードパーティライブラリ(ゲームエンジン)、システムライブラリなどがすべてネイティブコードで作られている |
アプリケーションはネイティブコードとHTML5+JavaScriptの2つの方法で開発が可能だという |
HTML5については、その記述力の高さから、Windows 8など他のプラットフォームでも標準アプリケーション開発用に採用されることが多い。BBXも同じようにHTML5とJavaScriptの組み合わせでアプリケーションを開発でき、レンダリングなどにはハードウェアアクセラレーションが利用されるという。また、Webページ上での3次元グラフィックスを可能にするWebGLにも対応予定だ。
なお、ネイティブコードのアプリケーションが利用可能なことから、Adobe Airなども対応予定だという。また、これまでのBlackBerryでは、Javaによるアプリケーション開発を標準としてきたが、これらもBBXで利用可能になるという。
搭載されるユーザーインターフェースフレームワークであるCascadesは、3D表示機能など扱うことができ、デモンストレーションではフォトギャラリーで画面をスクロールさせると、上から写真が落ちてくるようなアニメーション表示を行っていた。
また、他のプラットフォームからのアプリケーション移行に関しては、1つはPosixベースであるために、現在UnixやLinuxなどで動作しているアプリケーション自体の移植が容易であるとした。
さらに、Androidのアプリケーションを容易に移植するための機能を提供するという。これは、Android開発のためのEclipse環境から利用し、すでに完成しているAndroidアプリケーションをBBX用に「再パッケージング」するもの。これにより、Androidアプリケーションの開発者は、短時間でBBXアプリケーションを開発できるようになるという。
今回の基調講演では、あわせて、PlayBook OS 2.0の公開βテストについても発表されたが、これには、Androidアプリケーションを動作させるためのランタイムが組み込まれているようだ。
BlackBerryは、現時点ではRIM社のみが製造しており、独自のOSとサービス(Blackberry Internet ServiceやBlackberry Enterprise Serviceなど)を提供している。この点では、多数のメーカーが製造するAndroidやWindows Phone 7とは違い、むしろApple社のあり方に近い。
しかし、iPhone、iPadは事業者などが扱うこともあるが、Apple社自身がApple Storeで直販を行っており、あくまでもApple社の製品だ。これに対して、BlackBerryは、事業者による販売がメインであり、事業者の事情や要求に合わせた製品を提供する点では、Androidなどのスマートフォンメーカーの立場に近い。
こうしたポジションにいるRIM社は、先行スマートフォンメーカーとして米国内では大きなシェアを持っていた。しかし、最近では、iPhoneやAndroidの成長が著しく、シェアなどの面で追撃を受けている。汎用OSがベースではなかったこともあり、特にサードパーティアプリケーション分野での苦戦が伝えられていた。BBXは、こうした状況打開を狙い、少なくともアプリケーション開発や販売などの面で、これらに並ぼうとするものといえるだろう。