今月14日より販売が開始された「iPhone 4S」の目玉機能の1つが「Siri」と呼ばれるボイス・アシスタンス機能だ。残念ながら日本語にはまだ対応していないものの、発音練習を兼ねて機能を試す日本のユーザーも多く、"つかみはOK"といった印象だ。このSiriは残念ながらiPhone 4S専用の機能で、従来までのiPhone 4/3GSといった機種では利用できないのだが、これを旧モデルで利用できるようハッキングに成功した開発者がおり、話題になっている。

はじめにこの件を報じたのは9to5 Mac。iPhone 4上でSiriが動作する様子が動画でYouTubeにアップロードされている。

残念ながら音声入力までは再現されていないが、iPhone 4S発売日の14日時点ですでにSiriの呼び出しまで成功している。ただし全体に動作は緩慢で、Siriの動作メニューのスクロールの遅さやキーボードの反応の遅さから、まだハッキングの初歩的な段階にあることがうかがえる。

ところがEngadgetによれば、その後にこのSiriハッキングを行ったSteve Troughton-Smith氏(同氏のTwitterアカウント)が新しい動画をYouTube上にアップロードしており、前日にアップロードした最初のハッキング映像よりもはるかにスムーズに動くSiriインターフェイスが確認できる。だがSiriの核心部分である、AppleのSiriの各種処理(音声認識や文書解析処理だとみられる)を行うサーバへの接続は行えておらず、音声入力アシスタントとしては機能していない。Troughton-Smith氏によれば、このサーバ接続の部分さえクリアできれば、iPhoneだけでなく、Mac用のインターフェイスも開発可能だとしている。

これで1つわかるのは、SiriがiPhone 4S専用になっているのはハードウェア上の制約ではなく、ソフトウェア的にロックされている可能性が高いということだ。つまり、Siriを動作させるのにiPhone 4Sのハードウェア処理能力が必要というわけではなく、iPhone 4S用のプレミア機能としてiPhone 4などの機種では利用できないようにすることで、マーケティング的に差別していると思われるというわけ。Siriがどうしても使いたいというユーザーがいれば、それを目的に旧モデルから4Sへと乗り換える可能性があるからだ。

もう1つの理由としては、Siriの処理がAppleのサーバへの問い合わせで行われていることが原因で、iPhone 4S以外のユーザーに一気に機能を開放するとサーバや回線がパンクする可能性があるということが挙げられる。実際、発売2日後の16日になり、広範囲でSiriが利用できなくなる事例が米国で報告されている。現時点で販売されたiPhone 4Sは世界でまだ数百万台レベルだと想定されるが、今後クリスマスシーズンに向けてさらに販売台数が積み上がった場合、Siriが利用しづらくなるケースが増えるだろう。AppleではSiriを「あくまでベータ版の機能」としているが、こうした事情も背景にあるのかもしれない。