米Intelは7月27日(現地時間)、「シリコン・フォトニクス(Silicon Photonics)」と呼ばれる半導体を使った光データ伝送に世界で初めて成功したと発表した。現在開発されている実験チップでの伝送速度は50Gbpsで、HD映画をまるごと1秒間に1本転送できるだけの能力があるという。現在銅配線によるデータ伝送が一般的な電子回路だが、これが光伝送へと置き換えられることでパフォーマンス上の大きなブレイクスルーとなる可能性がある。

今回の実験チップでは、同社が米カリフォルニア州立大学サンタバーバラ校(UCSB)と共同開発して2006年に発表した「Hybrid Silicon Laser」と呼ばれる半導体技術、そして翌年に発表された光高速モジュレータ、受信器にあたる「Photodetector」といった技術が応用されている。これらを組み合わせ、電気信号として出力されたデータは4つの光信号へと変換され、1本の光ファイバを通して伝送されて受信器内のチップで再び電気信号へと変換される。個々の光信号は12.5Gbpsの伝送速度を持っており、これを束ねることで50Gbpsの伝送速度を実現している。

そのメリットは大きく、例えば大量のデータ転送が可能になることで、今後さらに転送容量の増加が見込まれる3DやHDを超えた高解像度映像のコンテンツ転送にも対応できるほか、現在コンピュータやデータセンターなどで問題になっているデータ転送上のボトルネックの多くを解決できる。また銅配線では信号減衰による伝送距離の問題があり、これまでコンピュータ設計上の大きな足かせとなっていた。今回開発された技術が将来ローエンドにまで浸透することで、大規模なHPCだけでなく、PCレベルのマシンでもより柔軟性に富んだ設計が可能になる。このほか、大量伝送が可能な光ファイバを用いることで、データセンターにおける配線や電気使用量を減らし、維持・管理コストを低減できるというメリットもある。現在光伝送装置は非常に高価なデバイスとして知られているが、量産技術の確立で順次コスト低減が可能になるだろう。