その先のシミュレーションベースの3Dグラフィックスへ~Visual Computing

ファン氏は、今回の基調講演を、Visual Computing, Parallel Computing, Web Computingの3つのセクションに分けて行うと前振りし、まずはVisual Computingについて話し始める。

GPUの演算能力の向上は、3Dゲームのフレームレートを上げるだけではなく、新しいCGの映像表現を可能にする。

ファン氏は1999年のGeForce 256時代の消防車デモの映像を出し、この時代は10万ポリゴンにキューブ環境マップで移り込みを表現することが最高の表現だった、と振り返る。そして2003年、GeForce FX時代には16万ポリゴンのビンテージカーの車体の、任意の経年数の劣化をプログラマブルシェーダで表現するデモを提示、表現のリアル度が増した様をアピールした。

「GPUの進化、高性能化はリアルタイム3Dグラフィックスの進化を促すだけでなく、オフラインレンダリングをインタラクティブなものに昇華することもできる。」(ファン氏)

ファン氏は200万ポリゴンのブガッティを250万フォトンのレイトレーシングでレンダリングする様を見せ、これを2-3秒でレンダリングできることを指摘した。

現在のプログラマブルシェーダで実現するリアルタイム3Dグラフィックスは、突き詰めて言うと、ある意味、現実の物理現象、光学現象を簡略モデル化してプロシージャル的な手法でレンダリングしているものだ。より、GPUが高性能化することで、その先のより正確なシミュレーションベースの3Dグラフィックスレンダリングのリアルタイム化も見え始めている……ということなのだ。

また、その時点ではリアルタイムでなくとも、数時間かかっていたレンダリングを数秒以内にすることでインタラクティブ性が生まれ、そうした映像の生産効率が向上し、さらに追加の、より高度なシミュレーションや表現をも盛り込むことが出来るようになる。

GPUの進化は、まだまだ続くし、続けなければならない。NVIDIAという会社の今後の存在意義をここで示した格好だ。

環境マップの適用から、プログラマブルシェーダへ。そしてリアルタイムレイトレーシングへ(写真がぶれているのは、投影されている映像が立体視用のため。以下同)

この他、このパートでは、富士フイルムの世界初の高画質3Dデジタルカメラ「FUJIFILM FinePix REAL 3D W1」の撮影写真の立体視に、NVIDIAのリアルタイム立体視システム「NVIDIA 3D Vision」が対応したことが告げられた。

また、NVIDIAのコンテンツ技術開発チームがパーティクルベースおよびグリッドベースのリアルタイム物理シミュレーションのエンジンをCUDAベースで開発し、これがいくつかの3Dゲームに採用されることを報告。ちなみに、このエンジンのうち、グリッドベースの煙シミュレーションは、米カプコンの3Dアクションゲーム「DARK VOID」のPC版に採用されることがすでに発表されている。

富士フイルムの世界初の高画質3Dデジタルカメラ「FUJIFILM FinePix REAL 3D W1」を掲げるファン氏

パーティクルベースの物理シミュレーションで正確な液体の動きを再現したデモ。凹凸だけの波ではなく、波から飛散する水滴までが正確に表現される