BCNはこのほど、全国の大手家電販売店から収集した実売データを集計する「BCNランキング」のデータ分析にもとづき、2008年のデジタル家電製品販売動向を発表。薄型テレビ、デジタルカメラ、レコーダーというデジタル家電主要3製品について、BCNアナリストである道越一郎氏が景気後退の影響も色濃い市場を解説した。

薄型テレビ

薄型テレビ全体では、台数の伸び率(以下、全て前年同月比)が鈍化。金額も前年割れし、12月には台数が伸びた一方で金額伸び率は単価が下がった影響から-2.7%となった。

薄型テレビ全体の販売台数・金額伸び率(前年同月比)と平均単価(BCN調べ)

台数構成比で全体の91.6%(2008年12月現在)となり、薄型市場を牽引してきた液晶モデルも「前年並みを維持するのがやっとというところ」(同氏)という状態。プラズマに関しては、台数・金額ともに大きく前年割れし、12月は金額伸び率が約-20%となるなどかなり落ち込みが激しくなっている。同氏は「応答速度が速く、スポーツやアクション番組が楽しめるとされているプラズマだが、今後はさらなる用途提案が求められるだろう」としていた。

液晶テレビの販売台数・金額伸び率(前年同月比)と平均単価(BCN調べ)

また、年末商戦での売れ筋はほとんどが安価な型落ちモデル(半年以上前に販売されたモデル)に集中しており、新モデルの平均単価も下がる傾向にあった。サイズ別の売れ筋では、依然として30型台が好調となっており、40型台は2割弱という結果となっている。

プラズマテレビの販売台数・金額伸び率(前年同月比)と平均単価(BCN調べ)

同氏は、ひとつの目立った動きとして「録画機能搭載モデル」を挙げ、「付加価値イコール録画機能というわけではないが、各社が力を入れていくのではないか」としていた。メーカーシェアとしては、全体・液晶の双方でシャープが1位となり、「液晶のシャープは健在」を見せつける結果となった。なお、プラズマのシェア1位はパナソニックとなっている。

デジタルカメラ

コンパクト不調が響きデジタルカメラも2008年は勢いがなかった。金額・台数ともに前年割れとなっているコンパクトデジカメは、「次の一手を模索している状態」(同氏)。同氏は、「『顔認識』や『手ブレ補正』のようにユーザーにわかりやすいアピールポイントを打ち出すことが重要といえる」としていた。

デジカメ全体の販売台数・金額伸び率(前年同月比)と平均単価(BCN調べ)

リコー「GR DIGITAL」シリーズをはじめとするコンパクトデジカメの高級モデルは、デジタル一眼レフカメラの低価格モデルに押され気味。同氏は「一眼レフタイプがコンパクトの価格領域に食いこんだことで、"ハイエンドコンパクト"の存在感が薄れてきている」とみている。

コンパクトデジカメの販売台数・金額伸び率(前年同月比)と平均単価(BCN調べ)

一方、デジタル一眼レフカメラ(一眼カメラ含む)の比率は、徐々に上がっており、デジタルカメラ台数構成比の一割を突破。しかし、台数の伸びは好調ながら単価は下落する傾向となっている。これは、年末商戦でモデルチェンジが近いエントリーモデルが安価で販売されたことも要因となっているようだ。

デジタル一眼レフカメラの販売台数・金額伸び率(前年同月比)と平均単価(BCN調べ)

気になるパナソニックのマイクロフォーサーズを採用したデジタル一眼カメラ「DMC-G1」の動向については「女性をターゲットとしたことで業界にも衝撃を与えた『DMC-G1』は、健闘しているといえる。"レンズが交換できる"というわかりやすいアピールポイントをもち、そこから類推できる高機能が訴求力となっている」(同氏)としていた。

オリンパスもマイクロフォーサーズ対応モデルの製品化を目指しており、同氏は「2社の動向を見て他のメーカーも次のキーワードをマイクロフォーサーズに求める可能性はある」とし、「デジカメの新しいニーズを開拓できると考えている」と話していた。

また、2008年に登場したニコン「D90」やキヤノン「EOS 5D Mark II」などの動画も撮れるデジタル一眼レフも注目を集めているが、同氏は「基本的にエントリーから中級モデルには搭載し、ハイエンドモデルには非搭載という可能性もあるが、1年から2年で動画機能も差別化の要素ではなくなるはずだ」としていた。

レコーダー

レコーダーはBDレコーダーが出る前は苦戦していたジャンルであり、同氏は「BDレコーダーが立ち上がり時期であることから、伸びが出てきた」と解説。年末商戦ではBD普及に拍車がかかり、台数構成比で全体の6割を超え、金額構成比でも8割目前となっており、「市場はほぼBDに切り替わったと言ってもいい」としていた。しかしながら、伸び率は8月をピークにして下降気味となっている。

レコーダー全体の販売台数・金額伸び率(前年同月比)と平均単価(BCN調べ)

BDレコーダーの傾向としては、10~12月にかけて8万円未満の機種が急増し、単価が下がってきているといえる。そんな中、"ハイビジョン=ブルーレイ"を強く打ち出しているソニーは比較的高いモデルを伸ばしており、メーカーごとの戦略の違いが見える。

また、BDレコーダーと旧レコーダーとの価格差が2~3万円前後に縮小したことで、同氏は「将来性なども考慮し、従来型のDVDレコーダーに2万円ちょっと足せばBDレコーダーが買えるとなると、これは大きな購入動機となってくるだろう」と分析していた。

全体を通して、2008年のデジタル製品販売動向は、景気後退の影響を受け、主要ジャンルでも前年割れが顕著となった。単価下落も大きく、台数の伸びが市場拡大に結びつかず模索状態にあるともいえる。