Lumiotecが出展した有機EL照明。パネルの厚さは2.3mm

照明のエネルギー効率を改善すべく、白熱球や蛍光灯に代わる光源の研究開発が進められている。最近では高輝度LED(発光ダイオード)などが候補のひとつとして有力視されており、実際に応用製品も出回るようになってきたが、それを追う形で、有機ELを用いた照明も商品化が見え始めている。

三菱重工業、ロームらが出資して今年5月に設立されたLumiotec(ルミオテック)は、照明用有機ELパネルの事業化を目指しており、CEATEC JAPAN 2008のロームブースで試作品の展示を行った。6月、札幌で開催された「北海道洞爺湖サミット記念 環境総合展2008」などへの出展に続いて、同社製品の一般公開はこれが3回目となる。

三菱重工の開発した高効率の真空蒸着技術を利用してパネルを製造することで、早期の商品化を目指しているのが特徴で、来年にもパネルのサンプル出荷を開始したいとしている。LED照明は発光素子の場所が点のように発光するので、光を何らかの方法で拡散させる必要があるのに対して、有機ELはパネル自体が面として発光するので、広く均一な明かりを得られるというメリットがある。非常に薄型なので、壁や天井などにパネルを張り付けることで部屋の一面そのものを照明にすることが可能で、将来的にプラスチック基板のパネルが実現すれば曲面に張り付けることもできる。

また、LED照明では発光素子自体の青色光と、青色光が蛍光体に当たることで得られる黄色系の光によって白色光を作っているが、有機ELパネルは赤、緑、青の発光層を積層することで白色光を作っている。これにより自然でやわらかい色合いで、かつ紫外線も含まない目にやさしい光を得られるという。各色の層厚を変えることで色温度の異なるパネルを製造することもできる。技術的には、各層に加える電圧を個別に制御することで動的に色を変化させることも可能だが、構造が複雑になりコスト増につながるなどの理由から、現時点ではそのような機能を加えることは予定していない。

課題となるのは消費電力あたりの発光効率で、現在はまだ「白熱灯よりは高効率」(同社)という段階。LEDは蛍光灯の効率を上回ってきたが、その域に達するには「あと3-4年かかるだろう」(同)という。また、量産段階では液晶ディスプレイパネルなどと同じく、基板の大型化が要求される。

CEATEC会場ではシーメンスグループの照明メーカー・ドイツOSRAMも有機EL照明を出展(出展企業は子会社のOSRAM Opto Semiconductors)てしており、この分野では国内外の数社が開発を競っている。各社ともここ数年中の商品化を目指しており、量産開始まではスピードの勝負となりつつある。