都内で11月27日、携帯電話を中心としたモバイル関連ビジネスの総合セミナー「MCF モバイル コンファレンス 2007(mobidec2007)」が開催された(主催:モバイル・コンテンツ・フォーラム、翔泳社)。冒頭のセッションでは、NTTドコモ コンテンツ&カスタマ部でコンテンツ担当部長を務める原田由佳氏、KDDI コンテンツ・メディア本部でコンテンツ・ECビジネス部長を務める雨宮俊武氏が相次いで登壇し、両社のコンテンツ事業の現状を概説した。

ライト層にも携帯ゲームが拡大、『逆転裁判』が好例 - ドコモ

NTTドコモでコンテンツ担当部長を務める原田由佳氏

ドコモの原田氏は、個人による携帯電話の新規需要が飽和に近づきつつある中、iモード契約数自体の伸びは鈍化しほぼ横ばいとなったが、にもかかわらず情報量収入は右肩上がりが続いているというデータを紹介。コンテンツの単価や、1利用者あたりの登録有料サイト数は増加していると分析する。また、全FOMA加入者に対するパケット通信定額サービス「パケ・ホーダイ」契約率はおよそ30%に達しており、定額加入者の増加が背景となってコンテンツが充実し、コンテンツが充実したおかげで定額加入者がますます増えるという好循環を生んでいると話した。

ここ2~3年の間で特に目立った成長を遂げたのがゲームで、この分野で同社の市場規模は月あたり40億円に達するという。大容量の携帯アプリが提供できるようになったことで大きく伸びてきたのはロールプレイングゲームなどで、20代・30代の男性ゲームファンを中心に好まれる本格的なタイトルが中心だったが、最近ではニンテンドーDSなどがライト層を開拓したことで、よりカジュアルに遊べる内容のものが増えてきたという。

iモード加入者自体は飽和に近づいているが、コンテンツの売上は伸びている

これまで携帯ゲームの主力だったRPGの伸びが止まり、代わりにアドベンチャーゲームなどが増加傾向にある

その分、1タイトルあたりの単価は下がる傾向にあり、1ユーザー当たりの登録サイト数は増加しているにもかかわらず、売上金額で見るとほぼ横ばいで、この点は今後の課題となっている。ライトユーザーにも好まれ、しかも売上につながっている例としては、カプコンのアドベンチャーゲーム『逆転裁判』が挙げられた。テキスト主体で気軽に楽しめるうえに、追加シナリオの販売で従量課金による収入も多く得られているという。

その他のトピックとしては、携帯電話をカスタマイズするためのコンテンツとして、各種表示やメニュー画面などのデザインをまとめて変更できる「きせかえツール」が、従来の待ち受け画面に変わる人気コンテンツになりつつあることや、かかってきた電話に出るまで発信側に音楽を聞かせられる「メロディコール」が20代・30代女性に人気で継続利用意向も高いことなどが紹介された。

また、新分野のコンテンツで人気を博しているものとしては、賃貸住宅などの不動産情報、アルバイト・転職などの就職情報、旅行情報などが挙げられた。従来、携帯電話の画面は表現力が限られていたが、高速・定額のFOMAが普及したことで、画像などを駆使してさまざまな角度から情報を伝えることが可能になった。これによって、従来はPCサイトのみ、あるいは携帯サイトはPCサイトの補完でしかなかったサービスも、携帯サイトをメインとして提供できるようになってきたと原田氏は説明した。

携帯コミックはもはや暇つぶしでない - KDDI

KDDIでコンテンツ・ECビジネス部長を務める雨宮俊武氏

続いてauのコンテンツサービスについて説明したKDDIの雨宮氏は、同社のCDMA 1X WIN契約者のうちパケット定額制の契約率は76%に上り、auユーザーはデジタルコンテンツへの関心・利用が非常に高いとアピール。コンテンツ全体の中ではゲーム、着うたフル、電子書籍が大きな割合を占め、中でもゲームは売上の伸びが大きく「音楽のauというイメージがあるが、金額ベースでは既に音楽よりゲームの売上が上」(雨宮氏)になっているという。

電子書籍も、「EZブック」の利用額がこの1年で約3倍となるなど好調。内訳を見ると、小説や写真集などの購入がそれほど変わっていないのに対し、コミックの売上が大幅増となっており、auの電子書籍市場拡大イコール携帯コミック市場拡大と見ることができる。特に利用が多いのは20代・30代の女性で、しかも同社の調査によると、外出先で空いた時間の暇つぶしというよりも、自宅に帰ってから利用されることが多いといい、漫画を読むためのメディアとして携帯電話を積極的に使いたいという意向が読み取れる。

また、商品の購入代金を月々の携帯電話料金とあわせて支払える通信販売サイト「auショッピングモール」も、2006年2月の開始以降順調な推移を見せており、流通額はオープンから1年で約3倍、店舗数は同約6倍となった。今後は、モールの形態をとっていることを利用し、個々のテナントでは行えないような大規模な広告展開などを行い、需要を掘り起こしたいとしている。

コミックの伸びがそのまま電子書籍の伸びとなっている

auショッピングモールがオープン以来好調

また、auショッピングモールの好調は、物販に限らずあらゆるサービス提供の場が、これまでの電話やPCサイトといったメディアから、携帯サイトへと移り変わりつつあることを示している、と見ることもできる。ただKDDIでは、インターネットやデジタルコンテンツの利用形態は「携帯かPCか」の二択でなく、「携帯もPCも」併用するのが主流になると見ている。この秋に開設した携帯・PC統合ポータルサイト「au one」や、FMBC(移動体通信・固定通信・放送の融合)サービスを強化し、機器や形態を問わずいつでもどこでもauの世界を利用してほしいとしている。